第4回:ケア美容と認知症予防の深い関係
2025年6月9日 1:42 PM
こんにちは。国際介護士の上地(ウエチ)です。
この連載では、整容・美容ケアが人生に与える力を、ケアの現場からお伝えしています。
第4回は、「認知症」をテーマにお話しします。
ケアとしてだけでなく、“予防”としても、ケア美容が持つ力をお伝えできればと思います。
◆“できない”が増えていく不安
認知症は、脳の働きが徐々に低下していく病気です。
少しずつ物忘れが増え、日常生活に支障が出てくると、本人もその変化に気づき始めます。
「なんかおかしい…でも誰にも言えない」
「迷惑かけたくないから、できるふりをしてしまう」
「どうしてこんなことに…という悔しさ」
そんな不安や自己否定の感情が、自信を奪い、
心を閉ざしてしまう方が少なくありません。
◆失われるのは「能力」だけじゃない
できないことが増えると、「自分らしさ」も失ってしまったような気持ちになる方が多くいます。
「もうオシャレなんて関係ない」
「こんな自分が恥ずかしい」
「誰も気にしていないし…」
認知症の進行を加速させる原因のひとつが、こうした自己肯定感の低下や社会的孤立です。
◆ケア美容は、“まだできる”を思い出させてくれる
そんな中で、整容・美容ケアは
「できないこと」ではなく「まだできること」に目を向けるケアです。
・好きなネイルの色を選ぶ
・自分で鏡を手に取る
・手に触れて「気持ちいい」と笑う
これらは、認知機能にやさしい刺激を与えるだけでなく、“自分らしさ”を取り戻す小さなきっかけになります。
◆なぜケア美容が“認知症予防”に良いのか?
ケア美容が予防として注目される理由は、主に3つあります。
①【感覚刺激による脳の活性化】
肌に触れたり、香りを感じたり、好きな色を見たり、五感をフルに使う美容ケアは、脳に直接働きかけます。
触覚・視覚・嗅覚への刺激が、記憶や感情に関わる脳の領域を活性化するとされています。
②【人とのふれあいによる社会参加】
誰かにやさしく触れてもらう体験は、安心感や幸福感を生み、孤立を防ぎます。
会話や笑顔のやりとりが、前頭葉の働きをサポートします。
③【自己肯定感の維持】
「キレイになったね」と言われるだけで、人は自分を大切に思い出せます。
「自分なんて…」と思っていた方が、「また外に出てみようかな」と感じるようになることも。
◆今日からできる!自分や家族にできるケア美容
【自分でできること】
・朝、鏡の前で「好きな自分」を1つ見つける
・爪や手にクリームを塗る習慣をつける
・季節の香りのハンドクリームを使ってみる
・週に1回、“好きな色”の服やアクセサリーを取り入れる
→「自分を意識する時間」が、脳と心のスイッチを入れ直します。
【家族にできること】
・「どれが好き?」とネイルやリップの色を一緒に選ぶ
・ハンドケアをしながら、「昔好きだった服の話」を聞く
・「今日もいい笑顔やね」と伝える
・化粧をしたら、必ず褒める(言葉に出して!)
→小さな声かけやふれあいが、“あなたを大切に思ってる”というサインになります。
◆さいごに
認知症は、「すべてを失っていく病気」ではありません。
むしろ、「その人らしさをどう守るか」が大切なテーマです。
ケア美容は、忘れても残るぬくもり、失っても思い出せる“好きだった気持ち”を、そっと呼び起こします。
整えることは、自分に光をあてる行為です。
それができるのは、今日から、誰にでも。
次回予告:第5回「わたしのことなんて、誰も気にしない ケアされる人の心に寄り添う美容ケア」
心の奥に隠された思いを、そっと照らしていきます。
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