新着情報

管理者: 鈴木康峻#X00018 Badge

介護経験:

2025年4月26日 10:26 PM

雑草が人を動かす瞬間 訪問リハビリで見た「本当の動機づけ」

訪問リハビリの現場では、ふとした瞬間に利用者さんの隠れた力が引き出される場面に立ち会うことがあります。

 

「今日は天気がいいですね。少し外を歩いてみませんか?」

 

そんな軽いやりとりから、庭へ出ることに。いつものように、屋外歩行練習の一環として、砂利道の駐車場を一周する。ただそれだけのつもりでした。

 

ところが帰り際、利用者さんの足がぴたりと止まる。

 

なんと目の前の雑草に手を伸ばし、黙って草むしりを始めたのです。

 

普段、この方は屋外歩行に不安があり、常に支えが必要な状態です。慎重な足取りで、ちょっとした段差にも注意を払います。

 

それがこのときは、まるで別人のようでした。

足を大きく開き、腰を落としてしっかりと地面を踏みしめる。全身の重心を安定させながら、手を伸ばして草を抜く。

 

そこには、普段のリハビリでは見られない、機能的で自然な動きがあったのです。

 

この光景を目の当たりにして、「目的のある行動」は人を動かすのだなと、強く確信しました。

 

リハビリでは、筋力トレーニングやバランス練習、立ち座り動作の練習など、いわゆる“機能訓練”に重点を置いてしまうことがあります。もちろん、それ自体に意義がないわけではありません。

 

しかし、ときにそれらは目的を見失い、単なる“訓練”に終わることがあります。

けれどこの草むしりは違いました。

 

歩くことが目的ではなく、「草をむしる」という明確な目的があった。

だからこそ、その目的に合わせて身体が自然と動き、結果的に安定した姿勢とスムーズな動作が引き出されたのです。

 

そこには「やらされている」「訓練だからやる」といった義務感はありません。

ただ目の前の雑草をむしるという、“生活行為”がありました。

 

そして思い出されたのは、数日前にご親戚がこぼした一言でした。

 

「もうね、雑草がすごいから除草剤でも撒こうかな」

 

それを聞いたとき、私は「それも無理はない」と思っていました。手間もかかるし、腰にも負担がかかる。合理的な判断です。

 

でも今は、はっきりと思えます。

 

 

「除草剤、撒かなくてよかった」と。

 

 

雑草は、ただの“邪魔なもの”ではありませんでした。

利用者さんにとっては、自ら立ち上がり、身体を動かすきっかけになってくれたから。

 

 

生活の中の「目的や意味のある行為」が、人の中に眠っている力を引き出す。

これこそが、訪問リハビリの醍醐味であり、本質ではないでしょうか。

 

訓練のための訓練ではなく、生活の中で必要とされる動作を見出すこと。

それに寄り添う関わり方が、私たちセラピストに求められているのだと、あらためて実感できました。

 

利用者さんの中には、今回のようなふとした瞬間に「動きたい」という気持ちを見せてくださる方がたくさんいらっしゃいます。

 

もしご家庭でそんな場面に出会ったら、無理のない範囲で、そっと応援してあげてください。

もちろん、毎日の介護は本当に大変で、すべてに付き合うなんて現実的じゃないこともたくさんあると思います。

でも、その方が自分から動こうとした瞬間って、すごく大きな意味があります。

 

頑張りすぎなくて大丈夫なので、ほんの少しでも「おっ、なんかやる気になってそうだ!それいいね!」って姿が見られたら、訪問リハビリのスタッフにもぜひ相談してみてください!

Cancel Pop

会員登録はお済みですか?

新規登録(無料) をする