特別養護老人ホームと介護付き有料老人ホームは、ともに高齢者向けの入所施設ですが、利用料金や入居基準などに違いがあります。

今回は、それぞれの施設の特徴と違いについて解説します。

1. それぞれの施設の特徴

■特別養護老人ホームとは
身体的または精神的な理由により、常に介護を必要とする高齢者に食事や入浴、排せつなどの介護サービスを提供する入所施設です。

介護保険が適用される公的施設で「介護老人福祉施設」とも呼ばれており、主に社会福祉法人や自治体が運営しています。

■介護付き有料老人ホームとは
有料老人ホームは「老人福祉法 第29条」で規定された高齢者向けの生活施設です。介護保険を利用でき、入居者の心身の状態に応じた介護サービスを提供します。

老人福祉施設には該当せず、主に民間企業が運営しています。

2. 費用の違い

■特別養護老人ホームの費用目安
入居一時金などの初期費用は不要で、月額費用のみ必要です。

月額費用は、以下の項目の合計金額となります。

・居住費
・食費
・施設サービス費(介護サービス加算)
・日常生活費

このうち、居住費と食費には国が定める減額制度があり、入居者および配偶者の所得に応じて負担額が4段階に分かれているのが大きな特徴です。

1ヶ月あたりの利用料金は施設や居室の種類により異なりますが、8〜14万円ほどとなっています。

■介護付き有料老人ホームの費用目安
初期費用(入居一時金)と月額費用が必要となり、その金額は施設によって大きく異なります。

・初期費用(入居一時金)・・・0~数億円
・月額費用・・・12~40万円

初期費用が不要の施設は、月額費用を高めに設定しているケースもあるため、費用の詳細をよく確認したうえで施設を選ぶことが大切です。

月額費用は、以下の項目の合計金額です。

・家賃
・管理費
・施設介護サービス費
・自費サービス費
・追加サービス費
・医療費
・食費 など

施設によっては入居金の償却や、費用負担の軽減を受けられる場合もあります。クーリング・オフ制度を利用できることも頭に入れておくと良いでしょう。

3. 入居基準の違い

■特別養護老人ホームの入居基準
・65歳以上かつ要介護3以上の人
・40~64歳で特定疾病のある要介護3以上の人

ただし、要介護1・2であってもやむを得ない事情があると認められた場合、特例で入居できるケースもあります。

■介護付き有料老人ホームの入居基準
基本的には「65歳以上かつ要介護1〜5の人」を入居対象としていますが、施設によっては、60歳以上の方や要支援の方も入居可能です。

看取りや認知症、高度な医療的ケアなどへの対応も施設により異なるため、入居希望の施設が自分の望む条件を満たしているか確認した上で、入居を申し込みましょう。

4. サービス内容の違い

■特別養護老人ホームのサービス内容
身体介護
・生活支援
・レクリエーション
・機能訓練
・健康管理
・療養上必要な世話

入居者は、24時間体制で食事や入浴などの必要な介護サービスを受けられます。また、多くの施設が看取りに対応しているため「終の棲家」として特養を希望する人も少なくありません。

■介護付き有料老人ホームのサービス内容
介護付き有料老人ホームでも、24時間体制で身体介護や生活支援などの介護サービスを受けられます。そのほか、以下のような独自の特色を打ち出している施設もあります。

・高級ホテルのような内装にしている
・食事にこだわっている
・リハビリに力を入れている
・基準以上の介護職員を配置している

施設がどのようなサービスに力を入れているかにより利用料金も変わってくるため、自分の予算や重視するサービスと照らし合わせて検討しましょう。

5. それぞれの施設のメリット・デメリット


■特別養護老人ホーム
●メリット
・入居一時金がなく月額費用も安い
・国が定めた減免制度がある
・多くの施設で看取りに対応している

●デメリット
・原則要介護3未満の人は入居できない
・入居希望者が多く、すぐに入居できない可能性が高い

■介護付き有料老人ホーム
●メリット
・サービスや価格帯が多種多様で、利用者のライフスタイルに合った施設を選びやすい
・介護度の低い人も入居できる施設がある
・入居待機者が少なく、入居しやすい

●デメリット
・特養と比較して費用が高額
・介護度の高い人や高度な医療的ケアが必要な人は、さらに費用がかさむ場合もある

改めて両者を比較すると、利用料金や入居要件、入りやすさに大きな違いがあることがわかります。

早く介護施設に入居したい場合、特別養護老人ホームに空きが出るまでの「つなぎ」として介護付き有料老人ホームを利用することもひとつの方法です。

6. 特別養護老人ホームと介護付き有料老人ホームの違いのまとめ


■特別養護老人ホーム
費用目安:
月額8~14万円(入居一時金なし)
入居基準:
・65歳以上かつ要介護3以上の人
・40~64歳で特定疾病のある要介護3以上の人
・特例により入居が認められた要介護1・2の人
サービス内容:
利用者の状態に応じた身体介護・生活支援。
看取り:
多くの施設で可能。
入りやすさ:
入居希望者が多く、年単位で待機期間が生じる場合もある。

■介護付き有料老人ホーム
費用目安:
施設により大きく異なる。
・初期費用(入居一時金)・・・0~数億円
・月額費用・・・12~40万円
入居基準:
・主に65歳以上かつ要介護1~5
の人
・施設によっては60歳以上や要支援の人でも入居できる場合あり
サービス内容:
身体介護・生活支援のほか、独自のサービスを実施する施設も多い。
看取り:
施設により異なる。
入りやすさ:
入所しやすい。


 監修者:中谷ミホ

イラスト:著作者:macrovector/出典:Freepik

 

 

この記事の提供元
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著者:小原 宏美

大学で音楽療法を学び、卒業後は児童養護施設、高齢者通所介護施設にて勤務。生活支援と並行して、音楽療法による利用者のQOL向上に取り組む。
現在はフリーライターとして、介護や音楽などに関する記事を執筆している。保有資格:保育士・介護福祉士・日本音楽療法学会認定音楽療法士(補)

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