わが家では認知症介護をラクにするために、道具を積極的に活用しています。その中でもデジタル日めくりカレンダーは、認知症の人の自立を支えるためのマストアイテムだと思っています。その理由と活用方法とは?
わたしがデジタル日めくりカレンダーを使い始めたのは、認知症の母からの質問攻めがきっかけでした。
母:「ねぇ、今日は何曜日?」
わたし:「日曜日でしょ」
最初は母の質問に答えていたのですが、何度も同じ質問を繰り返すので、回答するのが面倒になり、次第にストレスがたまっていきました。
実家の居間の壁には大きな1ヶ月カレンダーが掛かっていて、母がいつも座る席の前にあります。介護が始まってすぐの頃は、目の前にカレンダーがあるのに、なんで曜日の質問をするのだろうと思っていました。
1ヶ月カレンダーには、デイサービスに行く日など母の予定が書いてあったのですが、今日の日付を理解していない母は、どの予定が今日のものかわからないために、何度もわたしに曜日の確認をしていたことに気づいたのです。
たまたま実家の近くにあるホームセンターに行ったら、デジタル日めくりカレンダーが売っていました。これを1ヶ月カレンダーの近くに置いたら、母は今日が何日かわかるようになって、予定もわかるようになるかもしれないと思い、購入して1ヶ月カレンダーのすぐ下に設置したのです。
デジタル日めくりカレンダーを設置する前の母は、今日の日付を新聞で認識していました。
新聞の日付を見れば今日が何日で何曜日かがわかるので、母は1ヶ月カレンダーの自分の予定と見比べていたのですが、デイサービスの予定がないのに、荷物の準備をするなどの間違いが増えていきました。
その理由は、母が読んでいた新聞が昨日のものだったからです。認知症が進行した母は、昨日読んだ新聞の内容を覚えていないので、次の日に同じ内容を読んでいることに気づきません。
新聞の日付で今日が何日かを正しく認識するためには、昨日の新聞をきちんと片づけて今日の新聞を居間に置いておかなければなりません。母はその作業を忘れるようになり、昨日の新聞と今日の新聞が混在するようになりました。
新しく購入したデジタル日めくりカレンダーは、今日の日付、曜日、時間が表示されますし、電波時計の機能がついていれば、常に正確な日時が表示され続けます。
またアナログの時計だと、認知症の進行とともに時計の針が読めなくなる場合があるのですが、デジタルなら針を読む必要がないので、時間を理解しやくなります。
母は、最期まで住み慣れた自宅で生活したいと思っています。その願いの実現のためには、認知症が進行しても、ある程度は自立した生活をしてもらわないといけませんし、予定を正しく把握することも大切です。
デジタル日めくりカレンダーを設置したおかげで、母はわたしが帰省する日やヘルパーさんが来る日など、1ヶ月カレンダーに書いてある予定を自分で把握できるようになりました。
デジタル日めくりカレンダーを使い始めて9年が経った頃、母がこんなことを言いました。
母:「5、50、30って、何なの?」
母が言った数字は時間で、午後5時50分30秒が読めなかったのです。わが家で使っていたデジタル日めくりカレンダーは日付や曜日だけでなく、時間、温度、湿度の表示もありました。
認知症の進行とともに、母はデジタル日めくりカレンダーに表示されているたくさんの数字の意味が理解できなくなっていったので、日付と曜日、時間だけが表示されるシンプルな機種に買い替えました。
しかし時間もわからなくなってしまったので、デジタル日めくりカレンダーの時間の部分にビニールテープを貼って隠し、母が混乱しないよう対策をしたのです。
そうしているうちに、わが家の困りごとを把握しているかのような新しいデジタル日めくりカレンダーが発売されました。下の写真のように日付と曜日だけを表示し、時間は表示するかしないかを選べるタイプのカレンダーでした。
このカレンダーは、曜日が大きく表示されているのも特徴です。母の予定は曜日で決まっていて、例えば月曜日がデイサービス、水曜日は訪問リハビリのように、日付よりもむしろ曜日を把握するほうが大切です。
のちにデジタル日めくりカレンダーを開発したメーカーの担当者と話す機会があってわかったことですが、担当者のおばあさまがデイサービスに通う際に曜日でスケジュールを管理していたことから、曜日の文字を大きくした、という背景があったようです。
介護保険サービスを利用しているご家族なら、曜日で介護のスケジュールが決まっている感覚はわかってもらえると思います。
友達との予定をすっぽかすことが増えた、燃えるゴミの日を間違えたなど、家族のもの忘れが心配な方は、このデジタル日めくりカレンダーを設置すると、今日の日付を把握できるようになって、予定の間違いが減るかもしれません。
また高齢のご家族に元気で自立した生活を送って欲しいと思っている方にも、役立つ商品だと思います。
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著者:工藤 広伸
介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。2012年より岩手で暮らす認知症の母を、東京から通いで遠距離在宅介護を続けている。途中、認知症の祖母や悪性リンパ腫の父も介護し看取る。介護に関する書籍の執筆や、企業や全国自治体での講演活動も行っている。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。著書に『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』(翔泳社)、『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)ほか
介護ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/
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