シニア世代にとって「趣味を持つこと」は、認知症予防や健康寿命の延伸につながることが、最新の大規模研究で明らかになっています。趣味によって脳や心身にさまざまな刺激がもたらされ、人との交流も広がり、より豊かで健康な毎日を送るための近道となるのです。趣味がもたらす認知症予防効果について、研究結果をもとにご紹介します。

1. 趣味は認知症リスクを低減する大きな力【多目的コホート研究より】

介助されるシニア

国立がん研究センターが実施する「多目的コホート研究」では、日本人の生活習慣と病気との関連が調査されています。この研究から、趣味を持つことが認知症の発症リスクを有意に低下させることが明らかになりました。

具体的には、趣味がない人と比べて、趣味がある人では認知症の発症リスクが18%、趣味が複数ある人では22%低いことが示されています。この効果は、中年期(40〜64歳)から高齢期(65〜69歳)まで、いずれの年齢層でも確認されました。

特に、過去に脳卒中になったことがないタイプの認知症(多くはアルツハイマー型認知症)では、趣味を持つことで、発症リスクが23%も低下していました。趣味の活動は知的・身体活動を促し、アルツハイマー型認知症の原因である脳内のアミロイドβの蓄積や炎症反応を抑制する可能性があります。また、高血圧や糖尿病、肥満といった認知症のリスク要因を軽減する効果も期待できます。

さらに、趣味を通じて「生きがい」を持つことも重要です。研究では、楽しい余暇活動と生きがいが関連しており、生きがいを持つ人ではアルツハイマー型認知症のリスクが低いことがわかりました。趣味は、認知症を防ぐために役立つ大切な要素の一つと考えられます。


2. 一人よりグループで趣味を楽しむと認知症リスクが19%低下【千葉大学の研究より】

歌を楽しむシニアたち

千葉大学が日本の高齢者約5万人を対象に行った追跡調査では、趣味を「一人で行う」場合と、「グループで行う」場合で、認知症リスクに違いがあるかを調べました。

その結果、趣味活動をしていない高齢者は認知症を発症する確率が高く、また「一人でのみ趣味を行う」人と比べて、「グループで趣味を楽しむ」人では認知症を発症する確率が19%低いことがわかりました。

なぜグループ活動がより効果的なのでしょうか。同じ趣味を持つ人々が集まることで交流が自然に生まれ、心理的ストレスの軽減や生活満足度の向上につながります。つまり、趣味そのものの効果に加えて、社会的つながりが認知症予防に大きな役割を果たしていると考えられます。

3. 認知症リスクが18%低下!ラジオ体操にも注目【帝京大学の研究より】

運動をするシニア

趣味と並んで、身体活動も認知症予防の重要な要素です。帝京大学が65歳以上の高齢者約1万1千人を平均5.3年間追跡した研究では、「体操」、特に「ラジオ体操」が認知症リスクを低下させる可能性が示されました。

体操をしていない人と比べると、ラジオ体操のみを行う人では認知症リスクが18%低下しました。その他の体操のみを行う人でも、要支援・要介護リスクが13%低下し、さらに要介護2以上のリスクが19%低下、認知症リスクが19%低下しました。

ラジオ体操の効果は、身体活動量の増加だけでなく、多様な動作や音楽との相乗効果、さらには仲間と一緒に取り組むことで得られる社会的効果も関与していると考えられます。ラジオ体操のように身近で続けやすい運動が、認知症予防や介護予防に役立つことが示されたのです。

 

4. 「生活を楽しんでいる意識」とストレスマネジメントも重要【順天堂大学の研究より】

背伸びするシニア女性

心理的な側面も認知症予防に欠かせません。順天堂大学と多目的コホート研究の共同研究では、中年期から高齢期の約3万9千人を約11年間追跡した結果、「生活を楽しんでいる意識」が高い人ほど認知症リスクが低いことが明らかになりました。

具体的には、「生活を楽しんでいる意識」が低い人と比べ、「ふつう」と感じる人は認知症リスクが25%低下、「高い」と感じる人は32%低下していました。

ただし、この効果には自覚的ストレスが影響します。ストレスが少ない、またはふつうの人では効果が明確でしたが、ストレスが多い人では「生活を楽しんでいる意識」が高くても、認知症リスクの低下はみられませんでした。したがって、ストレスを上手にコントロールしながら、日常生活を楽しむことが重要といえます。

5. まとめ 今日からできる認知症予防のヒント

談笑するシニア女性たち

研究から見えてきた、認知症予防と健康寿命の延伸のために大切なポイントは以下の通りです。

・趣味を持つこと:好きなことに取り組み、脳を刺激し、生きがいを感じる。

・グループで楽しむこと:友人や地域の人々と一緒に趣味活動を行い、社会的交流を促進する。

・身体活動を習慣にすること:ラジオ体操やウォーキング、ゴルフやテニスなど、楽しみながら体を動かす。

・生活を楽しむ意識を持つこと:日々の生活に喜びを見つけ、ポジティブに過ごす。

・ストレスを上手に管理すること:趣味や運動、交流を通じてストレスを軽減する。


シニア世代の皆さんがこれらを実生活に取り入れ、生き生きとした毎日を送りながら健康寿命を延ばせるよう応援しています。


(参考)
出典
●国立がん研究センター 多目的コホート研究「趣味と要介護認知症との関連について
●千葉大学 報道発表「趣味は一人でするのに比べてグループですると認知症になる確率が19%低い

●帝京大学 報道発表「ラジオ体操で認知症リスクが18%低下

●国立がん研究センター 多目的コホート研究「生活を楽しんでいる意識と要介護認知症との関連について

●順天堂大学 ニュース&イベント「『生活を楽しんでいる意識』が要介護認知症リスクを抑制する



構成:研友企画出版



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この記事の提供元
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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