認知症に対する理解を広げ、誰もが安心して暮らせる地域づくりをめざす――。そんな理念を元に設立され、45年という長い歴史をもつ 「認知症の人と家族の会」は、MySCUEがスタート時から全国各地のイオンモールなどで行ってきた啓発イベントに参加いただくなどの形で協力をいただいてきました。

MySCUEと協業してくださる団体や個人の方々の話を伺い、対話するシリーズ「MySCUEと描く『シニアケアの未来』」の第1回は、本団体とMySCUEとのかかわりの始まりや、商業施設での啓発活動が生む効果、そして変わりつつある認知症についての世間の意識などについて、代表のお二人(和田誠代表理事、川井元晴代表理事)にお聞きしました。

1. MySCUEとの関わりの経緯~ 流通業×啓発活動が秘める大きな可能性

Q.MySCUEとの関わりはどのように始まりましたか?

和田誠様(以下和田様)

「前の代表(鎌田松代様)の時に関わりが始まり、それを引き継ぐかたちでお付き合いをさせていただいています。具体的なきっかけは、イオンモールでのイベントへの参加になると思います。認知症というのは一般の方には特殊な病気だと思われていたり、しっかり伝わっていなかったりすることが課題であると我々も思っています。ですのでそこにどう対処していくかという意味で流通の場でのアピールは重要だと思っていまして、我々も積極的に関わっていきたいというスタンスです。広島、福岡、あと富山とか……今年度も7、8箇所でのイベントに参加しています。

我々は全国の47都道府県に支部がございまして、各支部が参加しています。支部の地元の(イオンモールなどの)店舗の店長と支部がつながりを持ってもらう、という役割もあると考えていまして、地域密着の取り組みができていると思っています」

Q.実際にイベントに参加された支部の方からはどのような反応がありますか?

和田様
「夏の富山でのイベント(2025年8月2~3日@イオンモールとなみ「ケア活」体験イベント ケア活をはじめよう!~未来のわたしと家族のために~』)に行きました。相談ブースを設けさせていただいていたんですが、家族が認知症であるとか、自分が認知症であるかどうかをどう判断すればいいのかなどの相談に来られる方がいて、認知症について切実に考えるきっかけになっていたと思います。また、こちらで作成したグッズを子どもさんなどに手渡すことで、啓発のための教育的な試みになっていたと思います。イベントに参加した世話人からは、イオンさんというブランドのあるところでああいったイベントに参加させてもらうことは有意義だし、効果もあるという意見を聞いています。

また、我々だけではなく、いろんな企業さんが出展して、体力測定やVR体験、日によっては認知症サポーター講座など、さまざまな取り組みを通じて認知症を身近に感じられる場だと思います。また、老若男女問わず大勢のお客様が来て下さっているのもとてもよいことだと思っています」


川井元晴様(以下川井様)
「直接イベントに参加されている方はもちろん、『認知症のことをやっているイベントみたい』といった感じで興味や認識をもって寄ってきていただくだけでもよいと思っています。深く知っていただくのはもちろん大事ですが、身近なものとして捉えていただくためには、こういったイベントは絶好の機会だと思っています」

 

2. 認知症を取り巻く社会の変化~言葉のもつ力と認知の変化

Q.御会は設立(1980年)から45年と長い年月が経っていらっしゃいます。認知症についての世間での認識というものも変わってきた、ということは感じられますか?

川井様

「45年前というと、設立当時は私はまだ高校生でこの会の存在すら知らなかったわけですが、入会してからは20年くらいになります。ちょうど介護保険が施行されたり、新薬が出たりしていた時期で、認知症と診断された後、介護の方法も治療の方法もない時代から、少し変化が出てきたという時期でもあったと思います。

最近はまた新薬が出てきていますし、認知症基本法も制定されて、大きな時代の転換点に立っているのかなという思いはあります。家族の会自体は当事者の会ですので、知る人ぞ知る存在ではあると思いますが、『認知症』という言葉についてはどこでも目に耳にするようになってきたと思います。これは以前に比べると大きな違いだと思います。また、知ろうとすれば、インターネットなどで認知症についての知識を得られるということも大きな違いです。

一方で、認知症と診断された方やその家族になってしまった方が、そのことを自分事として考えた時に、情報があふれている中でもどこに相談すればよいかわからないというようなことや、本当に欲しい情報が着実にその方のもとに届いていない、ということがあるのかなとも感じます。すごく変わってきたところとまだまだ旧態依然としたところがあるのではないでしょうか」


認知症の人と家族の会_和田代表、川井代表

和田誠代表理事(左)と川井元晴代表理事(右)


Q.認知症の呼び方が変わったのはいつ頃ですか?

和田様
「2004年くらいでしょうか(*)。それまではどう呼ばれていたか、ご存じですか? 痴呆症(ちほうしょう)などと呼ばれていたんです。人格を否定しているような言葉が使われていたんです」

川井様
「世界的にも(「認知症」の意味で使われている)dementiaという英語での呼称が差別的だと認識されて呼び方を変えようという動きになっていて、専門家の間では使わないように、という認識が広まってきていますが、その呼び方が定着しているので変えるのは大変なようです。日本で使われていた(痴呆という)2文字の漢字には侮蔑的な意味があったため、それを変更しようということになったわけです。

長く使われていると、余計に差別的、侮蔑的な意味合いが織り込まれてしまうため、変えるのは大変です。ですので、認知症自体のイメージを変えて、世間一般の方々がもつ認知症へのイメージが、『なっても心配ない』とならないとだめだと思います。今はまだ、『なると怖い』『なりたくない』『何も分からなくなってしまうのでは?』というイメージが先行していると思います。そうじゃないんだ、ということが周知されると、どんな言葉を使ってもバッドイメージが付かなくなるのでは、と思います」

和田様
「言葉って大切ですよね。その人が対象に対してもつイメージを作ってしまうところがあるので。現在は『認知症』という呼び名が使われていますが、介護・医療の専門職の方でも不適切な言い方がされることがあるのが現状です。言葉のもつイメージというのは非常に大切なので。やはりそこはしっかり『認知症』あるいは『認知機能障害』という言葉を使うべきだと思います。

当会も、設立当初から約20年間は『呆け老人をかかえる家族の会』という名称でした。その頃は、当事者の家族も『認知症の人は何もできない』と思っていたんです。それが2000年になって介護保険ができて、本人でも世間に向けて発信をするという方も出てきました。認知症の人との向き合い方が、ともに何ができるのか、っていうふうに変わってきていて、現在ではそれをどう浸透させていくかというところが課題になっていると思います。

認知症の人に『何もできない』というレッテルを貼ってしまうということはナンセンスです。認知症と診断された日とその前では、何も変わったところがないんです。また、認知症というのはグラデーションのある病気で、認知症であってもできることはたくさんあるわけです。その方と家族が一緒に何ができるか、社会が何ができるか、というところは、我々はもちろん、MySCUEにおいても大きなテーマになってくるのではないかと思います」

川井様
「啓発や周知という意味では、視点を変えたアプローチの方が多くの人の心に届くのではないかと思っています。楽しいこと、いいことをやっていそうだと思うと、皆寄ってきていただけて、何かやってやろうかな、と思ってもらえると思うんです。そんなふうに、簡単なことでも、部分的にでも協力してくれる人が増えてくれたらいいなと思いますね」

*認知症の呼称の変更の経緯の詳細については、2004年(平成16年)に厚生労働省の「『痴呆』に替わる用語に関する検討会報告書」を参考のこと

3. 今後の展望、そしてMySCUEに期待すること

Q.今後取り組まれる予定のことがありましたら教えてください。また、MySCUEにどんなことを期待されるかについてもお聞かせください。

川井様

「SOMPO福祉財団から補助金を頂きながら、毎年各支部で交流会というか、研修をやっています。当初は認知症の家族の方など、日常の中で疲れ果てている方々が一泊二日でリフレッシュするための取り組みだったのですが、最近では人と人とのつながりを見つけるための事業に変わりつつあります。

また、地域で我々の活動を広めていく際、それぞれの現場で活動されている方々はたくさんいらっしゃるのですが、つながっていない方もまだいるんです。そういう方たちとつながっていこうという取り組みを、来年度から改めてやろうと思っています。そういう取り組みの場として、イオンさんやそこで働いている方と協力体制を築いていければ、と思っています。

地域で安心して暮らしていける環境を作る、ということが私たちの設立の理念にあるんですが、啓発イベントだけで終わってしまうのではなく、継続的なつながりというか、そういう関係性をつくっていければと思います。

MySCUEはとても確立されたプラットフォームになっていると思います。私たちも厚労省の援助もいただきながら、日本認知症国際交流プラットフォームというサイトの運営に関わっています。そこでは日本語と英語で記事を作って海外に発信したり、海外からの問い合わせに答えたりしているんですが、そこでMySCUEのリンクを張ったり、活動を紹介させていただけたら、と思っています」


認知症の人と家族の会_オレンジの樹

取材で事務局に伺った際に見せていただいたオレンジの樹は、認知症の人と家族の会が2025年の大阪・関西万博に出展した際に使用したもの。オリジナルスタンプを6種設置し、参加者が好きなスタンプを押したしおりにメッセージを書いてもらい、認知症啓発のシンボルカラーであるオレンジの実をつけるブラッドオレンジの木に飾ってもらったのだそう

和田様
「やはり、国などではなく民間企業が認知症の啓発についての活動を行っているというのは大きいと思います。しかも日本最大の流通業者であるイオンが、ここまで踏み込んで取り組んでいるというインパクトは、非常に大きいと、僕は思っています。今厚労省が取り組んでいる、認知症バリアフリーやオレンジイノベーションなどについてもイオンさんが積極的に取り組んでいただいていますし。イオンさんのようなトップランナーの企業が率先して取り組むことの意義というのはとにかく大きいと思っています。

というのも、イオンの取り組みによって他の企業や組織が影響を受けているということもあるんです。それだけ注目されていて、自社の認知症についての取り組みについて、ベンチマーク先としてイオンが意識されているということもあります。それは認知症の人たち周辺をマーケットとして見ているというだけではなく、社会全体での問題意識からのことだと我々は捉えていますし、非常に意義深いことだと思います。期待していることとしては、これを継続していってほしいということです。打ち上げ花火で終わらないように。太く短くというより、細く長く続けていってほしいと思っています。

我々は公益社団で、利益を追求してはいないのですが、公益性を保ちながら、社会の変化に対応しながら続けていけるのか……そのためにはいろんなことが必要だと思いますが、中でも産業界と関わりながら我々ができることをお手伝いしたり、また逆にお手伝いしていただくということもあると思います。そんなふうに持ちつ持たれつで、地域や社会を作っていくことが一番の使命であると思っています」

 


公益社団法人 認知症の人と家族の会…1980年に認知症の人を介護する家族と支援者が中心となり、京都で結成された組織で、全国の47都道府県に支部があり、9,000名を超える家族・本人・専門職が会員となり、「つどい」「会報」「電話相談」を3本柱とした活動を行っている。


公益社団法人 認知症の人と家族の会



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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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