健康寿命の延伸や、世代を超えた社会交流が注目される現代、誰もが安全に熱中できる生涯スポーツの選択は非常に重要です。今回ご紹介するのは、シニアに人気が高まっている新しいスタイルの卓球、「ラージボール」です。一見ふつうの卓球の様ですが、実はより安全に、長くラリーを楽しめるよう工夫された、魅力あふれるスポーツなのです。

ラージボールは、1988(昭和63)年に日本卓球協会が考案したスポーツです。「卓球発展計画プロジェクト」から生まれたもので、誰もが楽しめるよう、ルールや使用用具が工夫されています。通常の卓球とは3つの大きな違いがあり、これがシニア世代にとっての大きな魅力となっています。
1.大きく、軽く、見やすいボール
ラージボールで使用されるのは、通常の硬式ボール(直径40mm、重さ2.7g)よりも少し大きくて軽い、オレンジ色のボールです。直径は44mm、重さは2.2~2.4gとなっています。ボールが大きく軽いためスピードが抑えられ、ラリーが続きやすくなります。また、オレンジ色で視認性が高く、動体視力が低下しやすいシニア層でもボールを追いやすいのが特徴です。
2.回転の影響を受けにくいラバーを使用
ラージボールでは、「表ソフトラバー」を貼ったラケットを使用します。つぶつぶしたこのラバーは、ボールに強い回転をかけにくく、また相手の回転の影響も受けにくいという特性があります。通常の卓球では、強烈な回転への対応が難しく、初心者やシニアにとってラリーが続きにくい場面も少なくありません。その点、ラージボールは回転量が抑えられるため、無理なくラリーを楽しめるのが大きな魅力です。
3.弧線が高くなる少し高いネットを使用
基本的なルールは卓球と同じですが、ラージボールではネットの高さを通常より2cm高くして使用します。この工夫によりボールの弧線が高くなり、コントロールしやすくなるため、ラリーが途切れにくくなります。
これら3つの違いによって、ラージボールはスピードが緩やかで、相手の技術に左右されにくく、体への負担も少ない「新しい卓球」として、生涯スポーツにふさわしい魅力を備えています。

ラージボールは楽しいだけでなく、シニア世代の健康増進や介護予防にも高い効果が期待されています。
●認知症予防と脳の活性化
ラージボールは、ボールの動きを予測し、タイミングよく体を動かす必要があるため、身体と頭脳を同時に使うスポーツです。こうした動きは脳の血流を促し、認知症予防にもつながると考えられています。楽しみながら、自然と健康寿命の延伸を目指せる点も大きな魅力です。
●リハビリから健康改善へ! 実体験が示す効果
安全性の高いラージボールは、リハビリ目的で始める人も少なくありません。75歳の女性は、68歳のときに両手両足を骨折し、そのリハビリとしてラージボールを始めました。その結果、「今では手足だけでなく、血圧や血糖値の数値も良くなりました」と話しています。無理なく継続できる運動でありながら、全身を使うため、健康改善につながる好例といえるでしょう。「足腰が丈夫なうちはずっと続けたい」と語る68歳のプレーヤーもおり、自分のペースで取り組める点が支持されています。
●何歳からでも上達できる安心感
「今から新しいスポーツを始めても大丈夫だろうか」と不安に感じる人もいるかもしれません。しかしラージボールは、何歳からでも上達を実感しやすいスポーツです。ラリーが続きやすいため、始めてすぐに楽しさを感じられ、それが継続のモチベーションになります。53歳で健康のために始めた人も、「初心者や高齢者にこそおすすめ」とその魅力を語っています。

ラージボールは、運動効果だけでなく、社会参加やコミュニティーづくりの面でも大きな役割を果たしています。
1.高齢者の参加が非常に活発
ラージボールの大会では、シニア世代がいきいきとプレーしています。選手兼コーチとして活躍する山下滋さんは、「75歳の私はまだ若いほうで、90歳の方も元気にプレーしています」と話します。実際、昨年の全日本ラージボール卓球選手権大会では、80代・90代の出場者が20名以上表彰されました。年齢を重ねても競技に挑戦し続けられる点は、ラージボールならではの魅力です。
2.大会を通じて深まる仲間との絆
仲間と一緒に活動できることもラージボールの大きな魅力です。山下さんは「仲間と旅行気分で、気軽に大会に参加できるのも楽しみのひとつ」と語ります。試合では真剣勝負を楽しみつつ、試合前後には自然な交流が生まれます。卓球歴20年以上の70歳のプレーヤーも、「たくさんの仲間ができました」と、その社交的な価値を実感しています。
3.定年後のコミュニティーという“財産”
ラージボールは、世代を超えて一緒に楽しめるスポーツです。近年は40代・50代の参加者も増え、幅広い世代が交流しています。山下さんは、「仕事以外のコミュニティーができることが、定年後の大きな財産になります」と話します。新たな居場所や役割を求めるシニアにとって、ラージボールは孤立を防ぎ、人生を豊かにする手段といえるでしょう。

ラージボールは、セカンドライフにぴったりの生涯続けられるスポーツです。
●必要な用具と準備
特別な準備は不要ですが、専用の用具を使用します。
・ラケット:表ソフトラバーが貼られたもの
・ボール:直径44mmのオレンジ色のラージボール
いずれも卓球用品店やスポーツ用品店で購入できます。
●始め方
地域の卓球場やスポーツセンターで開催されている、ラージボール教室やサークルに参加するのがおすすめです。全国各地で大会や普及活動も行われています。
T.T Labo卓球場(東京都江戸川区)では、レベルに合わせたさまざまなレッスンを行っており、ラージボールも無料で体験できます。

ラージボールは、1988年に日本卓球協会が考案した、大きくて軽いボールと特殊なラバーを用いた「新しい卓球」です。スピードや回転が抑えられ、初心者や高齢者でもラリーを楽しみやすい工夫が施されています。
身体への負担を抑えながら、認知症予防や健康増進に役立ちます。さらに、90代のプレーヤーも活躍する全国大会や、世代を超えた交流を通じて、定年後の大切なコミュニティーという“財産”を築くことができます。
何歳からでも始められるラージボールを、生涯スポーツとして取り入れ、楽しく健康的なセカンドライフを実現してみませんか。
監修:T.T Labo卓球場
T.T Labo卓球場…代表取締役 宇田川貴文。江戸川・葛西の地に地域密着型の卓球専用スペース「T.T Labo」を設立。2024年5月に10周年を迎え、2025年5月現在の会員数は268名(メンバー・ビジター合算)を数える。江戸川区卓球連盟の事務局としての側面も持ち、地域の卓球振興において中核的な役割を担っている。指導体制は、オリンピックや世界選手権など国際大会での実績を持つアドバイザー6名をはじめ、計15名の精鋭コーチ陣を擁する。初心者からジュニア、全国大会レベルの選手までを対象とした多角的なレッスンプログラムを構築。1クール1時間の高密度なコーチングには定評があり、ヒアリングに基づいた緻密な技術アドバイスによって、数多くの大会入賞者を輩出している。
構成:研友企画出版
著者:MySCUE編集部
MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。