シニアケアにかかる費用負担を軽減するためには、公的な支援制度の活用が大切です。しかし、制度を知らなかったり、手続きを忘れたりして、利用されずに終わるケースも少なくありません。この記事では、介護費や医療費の自己負担を軽減する制度や税の控除、助成金など、知っておくと役立つ支援策を紹介します。
デイサービスや施設利用で支払う「介護費」の負担を軽くする制度です。
① 高額介護サービス費制度
月の介護サービス費(自己負担1〜3割の部分)が、所得に応じて決められた上限額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。
手続き:対象となる場合は、初回のみ市区町村から送られてくる支給申請書の提出が必要です。一度申請すれば、以降は該当した月に自動的に指定口座へ振り込まれます。
注意点:以下は支給対象外です。
・介護保険の利用限度額を超えてサービスを利用した際の超過分
・施設利用時の食費・居住費・日常生活費
・福祉用具購入費および住宅改修費の自己負担分
・医療保険を利用した時の自己負担分
▶︎詳しくはこちら:厚生労働省「高額サービス費の負担限度額」
② 高額医療・高額介護合算療養費制度
1年間(毎年8月〜翌年7月)の「医療費」と「介護費」の自己負担額を世帯で合算し、年間の限度額を超えた場合に払い戻しを受けられる制度です。
月々の「高額介護サービス費」や「高額療養費」の対象にならなくても、年間で合算すると払い戻しの対象になる場合があります。医療と介護の両方を利用しているご家庭は、ぜひチェックしておきたい制度です。
手続き:対象世帯には、市区町村から申請書が郵送されます。見落とさずに手続きを行いましょう。
▶︎詳しくはこちら:東京都保健医療局「高額介護合算療養費」
③ 特定入所者介護サービス費(補足給付)
介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院)やショートステイ利用時の「食費」と「居住費」の負担を軽減する制度です。
対象者:本人及び世帯全員が住民税非課税で、預貯金等が一定額以下の方
手続き:条件に該当する場合は、市区町村の介護保険担当窓口で「負担限度額認定証」の交付を受け、利用する施設に提示します。
注意点:「負担限度額認定証」を事前に提示しなければ減額を受けられません。施設を利用する前に手続きを済ませておきましょう。
▶︎詳しくはこちら:厚生労働省「介護保険施設等における居住費の負担限度額が令和6年8月1日から変わります」
入院や通院など「医療費」の負担を軽減する制度です。
④ 高額療養費制度
月の医療費(窓口負担)が上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。上限額は年齢や所得によって異なります。
特に75歳以上の方は、所得区分がさらに細かく分けられているため、負担割合が1割・2割の方は自己負担限度額が低く設定されています。
おすすめの手続き:事前に「限度額適用認定証」を加入している健康保険組合などに申請し、保険証と一緒に医療機関の窓口へ提示する方法です。これにより、窓口での支払いが自己負担限度額までで済みます。
なお、マイナ保険証で受診する場合は、「限度額適用認定証」の申請が不要となり、自動的に支払いが自己負担限度額までとなります。
▶︎詳しくはこちら:厚生労働省「高額療養費制度について」
⑤ 限度額適用・標準負担額減額認定制度
医療機関(外来・入院)での窓口支払いが自己負担限度額まで軽減される制度です。入院した際の食費も減額されます。
対象者:住民税非課税世帯の方
手続き:市区町村の窓口で申請が必要です。マイナ保険証を利用する場合は、この申請手続きが不要になります。

介護保険・医療保険以外にも、税金が還付される制度や、地域独自の支援制度があります。
⑥ 医療費控除
年間(1月〜12月)の医療費が10万円を超えた場合(または、総所得金額等が200万円未満の方で、支払った医療費が総所得金額の5%を超えた場合)に、確定申告で税金が還付される制度です。
ポイント:
・家族全員分を合算可能:生計を一つにしている家族全員分の医療費を合算できます。
・介護サービス費も対象:訪問看護や訪問リハビリなど、医療費控除の対象となる介護保険サービス費の自己負担分も対象になります。
・おむつ代も対象:医師が発行する「おむつ使用証明書」があれば、おむつ代も医療費として計上可能です。(※)
控除額が増えると、所得税や住民税が軽減されるだけでなく、健康保険料や介護保険料の算定にも影響するため、家計全体で見ると大きな節約効果が期待できます。
手続き:領収書を保管しておき、翌年に確定申告を行います。
※おむつ代が医療費控除の対象となるのは、傷病により6ヵ月以上寝たきり状態にあり、かつ医師から「治療のために必要」と認められている場合です。
▶︎詳しくはこちら:国税庁「医療費控除の対象となる医療費」
⑦ 障害者控除
障害者手帳をお持ちの方は、税法上の障害者として障害者控除を受けられる場合があります。また、障害者手帳がなくても、65歳以上で要介護認定を受けている方は、市区町村に申請して「障害者控除対象者認定書」の交付を受けることで、控除の対象となります。
▶︎詳しくはこちら:国税庁「障害者控除」
⑧ 市町村独自の助成制度
国の制度とは別に、市区町村が独自に行っている助成や減免もあります。ぜひ確認してみましょう。
支援策の例:
・紙おむつの現物支給、または購入費の助成
・住宅改修・福祉用具の助成拡大
・訪問理美容サービスの費用助成
・通院などに使えるタクシー利用券の配布
・配食サービスの費用助成など

著者:中谷 ミホ
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級