1. 少しずつ変化し始めている、“60歳からの生き方プラン”
定年退職を迎えた後の選択として、再び働きに出たいという声が増えています。かつては定年退職を迎えたなら、そのあとは老後をゆっくり過ごすもの、というのが一般的でした。しかし、そういう価値観そのものが、時代とともに徐々に変化しているようです。
第一線は退いたけれど、体はまだまだ元気。そんな60代以上がもはや珍しくありません。こうした背景が、仕事のあり方を少しずつ変えているのかもしれません。仕事内容の選択肢が広く、就業時間もフレキシブルに選べるというシニア向けの職業案内が、多くの方の自立をサポートしています。
2. 前向きな気持ちを後押し! 千葉市が行う2つのサポート
今回はモデルケースとして、千葉県千葉市の取り組みを取材しました。仕事探しの最初の足がかりとなるのが、就労サポートの相談窓口。千葉市では、市内のショッピングセンターなどで仕事探しの相談会を定期的に開催しています。会場には、2つの窓口が。
「シルバー人材センター」と「千葉市生涯現役応援センター」の案内板があり、それぞれに担当者が待っています。
ひとつめの「シルバー人材センター」は、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づいて事業を行う公益社団法人です。都道府県知事の指定を受けており、原則として市区町村単位に置かれています。そして、こちらは会員制。雇用契約を結ぶ就労とは異なり、請負・委任という形で、月10日程度、週20時間以内の高齢者のライフスタイルを考慮した短期の作業をメインに紹介してもらえます。
担当の梅﨑和典さんは、特色についてこう教えてくださいました。
「シルバー人材センターには60歳から入会できますが、90歳でご活躍の方もいらっしゃいます。ご紹介している仕事は、週2日2時間程度の内容が多く、月1日のケースもありますが、現役時代に培った経験を活かすことのできる学習教室やパソコン教室の講師といった仕事から、朝のゴミ出しや花の水やり、買い物の手伝いといったワンコインサービスと呼んでいる軽作業まで内容はいろいろです。
シルバー人材センターが目的とするのは『生きがいを得るための就業』です。
利用者の『手伝ってほしい』という要望と、『誰かの役に立ちたい』と考えている高年齢者の意欲から成り立っています。
また、社会に出て働くことで、仕事をした後の達成感や、人とのつながりもでき、心身ともに健康で過ごせる。そんな場を提供するところです。
働く意欲のある高齢者に、シルバー人材センターの魅力を知ってもらい、選んでもらうことが重要だと思っています」
もう一方の「千葉市生涯現役応援センター」は、千葉市が独自に運営しているサービスです。
こちらは、就労だけでなく、ボランティアをしたい、学びたい、起業したいなど、シニアの社会参加全般にわたる相談ができるのが特長です。
就労サポートで言えば、無料職業紹介として相談者にふさわしい仕事の紹介を行っているほか、シニアの就労先の開拓や、100名を超える大規模な就職相談会の実施、相談者にふさわしい、他の就労支援機関への橋渡しなども行っているとのことです。
3. 自分を生かしながら社会に参加する、ポジティブな喜びを毎日に
昭和生まれのシニア世代、特に男性は、人生を仕事一筋で駆け抜けてきた方が大多数。定年退職をした後の暮らしを前にして、何から始めたらいいのかわからない、自分が何をしたいかもわからない。そういった戸惑いや不安を抱くというのは、自然なことだといえるでしょう。
さきほど紹介した千葉市生涯現役応援センターを発足したのは、2017年の夏のことだと、センター長の関隆芳さんが教えてくださいました。
「メインのお仕事や子育てが終わって、セカンドライフを始めるシニア世代の相談先が市中にないということで発足したんです。
自分がどうしたいのか、将来のライフプランが明確になっている方は少数派です。何かしたいけれど、自分が本当にやりたいことが浮かばない。自分に何ができるかわからない、という方こそ気軽に相談にお越しいただきたい。当所はゆっくり相談できるところなので相談が1時間を超えることは普通です。じっくりお話しすることで必ず『やりたいこと』『できること』が明確になってきます」と関さん。
生涯現役応援センターでは、社会参加に関するさまざまな相談に乗ってくれるところですが、一番多い相談は「元気なうちは働きたい」だそうです。
「自分ができる範囲でやってみたい」「地域に少しでも貢献したい」といった就業意欲もさることながら、仕事を通じて人や社会とつながりを持つことができるのも、働くことが人生にもたらすメリットだといえるでしょう。もし、ご自身やご家族が「仕事を続けたい」「働いてみたい」と思っているならば、こうしたサービスに目を向けてみてはいかがでしょうか。
まずは気軽に相談を!
4. 取材を終えて…
この取材で驚いたのが、90歳でも元気に働く時間を持っている方のお話でした。
そして、印象的だったのが、関さんの言葉。
「シニア世代というと、『怒りっぽい』『運転ミスをしやすい』など、ネガティブなイメージで捉えられることも多いですが、お元気で社会で活躍されている方はたくさんいらっしゃいます」
印象的だったのは、70歳から新たに保育所の延長保育の仕事に就いた方、80歳を超えてから看護士として復帰された方、未経験で介護支援の仕事についた方など、枚挙にいとまがないことです。
シニアが社会で溌剌と活躍する社会になれば、若者にとってもシニアの見方が変わり、将来への希望にもつながるのではないでしょうか。
シニア世代のそばにある私たちも、何気ない世間のイメージにとらわれているのだなと気づかされました。シルバー人材センターのワンコインサービスのような仕事形態も然り。「自分のペースで、できることから始められる」という世の中の動きは、すでに始まっているのですね。