ここ数年、賃貸アパートでの高齢者の孤独死が問題になっています。
家賃が滞りなく支払われていて、身寄りもなければ、死後何年も発見されないということも。
本記事はその事件の概要をまとめたものです。
 

1. ひとり暮らしの高齢女性

平成22年に東京都足立区の民家で生存していれば111歳の男性が、実は30年前に死亡していたという事件がありました。
 
報道によれば、亡くなった男性のご家族が生存をよそおい、30年間でおよそ950万円の遺族共済年金を受け取っていたということで、後日、年金の不正受給をはたらいた長女と孫が逮捕されました。
 
この報道により、全国で高齢者の所在不明問題や年金の不正受給問題がはじめてクローズアップされ、医療保険の利用実績がない76歳以上の男女、約34万人の年金受給者のを対象にした調査がはじまりました。
 
調べてみると、なかには半世紀以上にわたり両親の年金を不正受給し続け、その額が5000万円以上になった女性もいました。死亡届の出ていない最高齢は、なんと200歳だったということも驚きでした。
 
報道が過熱する中、もしかしたら賃貸物件に住んでいる人の中にも、所在不明の高齢者がいるかもしれない…。司法書士としてこれまで様々な不動産トラブルみてきた私はそう考え、お付き合いのある賃貸管理会社に、管理している物件に住む入居者の年齢を一度調べてもらいました。
 
 すると94歳で、ひとり暮らしをしているという女性がいることが分かりました。家賃は毎月、自動引き落としで支払われています。そのため管理会社側も、調べてみるまでこの入居者のことは完全にノーマークでした。家賃の滞納でもあればコンタクトを取ったのでしょうが、今まで何のトラブルもなかったため存在にすら気づいていませんでした。
 
ただ94歳と言えば、相当な高齢です。ひとりでお住まいの方もいらっしゃるでしょうが、そういった方は少ないのが現実です。実際、まだ現地にお住まいなのでしょうか。不安になったので、見に行ってもらいました

2. 人の気配がまったくない

入居者の方に会いに行った担当者は、該当する部屋に人が住んでいる気配がないと感じたそうです。ライフラインは止まっていないものの、部屋からの生気が感じられないと言うのです。ドアポストを指で押してみると、見えるところには大量の、電気代等の領収書が溜まったままでした。
 
じつは、賃貸に住む高齢者でよくあるのが、家主側が知らぬ間に体調不良になって入院してしまった、あるいは施設に入所してしまったというケースです。
 
この場合、行政や地域包括支援センターの方が、入居者のご自宅に訪問した際に、賃貸や退去についても、気を利かせて何らかの声をかけてくれればよいのですが、実際は入院や入所の手続きはするものの、残された賃貸物件の解約や荷物の処分等まではしてくれません。気が付いたら入居者がどこに行ってしまったのか分からないということが多々あります。

ひとり住まいの高齢者はほとんどがご本人はどうしようもなくなって、最終的には福祉の手でレスキューされることが大半です。しかし福祉はあくまで介護や安否確認を担う機関であり、住まいの分野には手は出せないため、そうなると当然に、賃貸物件の部屋はそのままの状態になってしまいます。
 
ここで家賃が滞納されれば、すぐに気づくのですが、自動引き落としの場合には完全に居所が分かりません。入居者の方も、使っていない部屋の家賃が延々と引き落とされると、資産が目減りしてしまいます。
 
解約手続きをして欲しいと関係者の方にお願いしても、個人情報の観点からできない、直接の仕事ではない、資産がなくなってしまえば生活保護を受給すればいい、と縦割り行政の弊害が生じているのが今の状態です。

3. 誰も異変に気づかなかった

さてこの94歳のおばあちゃん、連絡もつかないので、きっとどこかに入院か入所してしまったのでしょう。そうであるならば、なおさらこのままの状態にもしていけません。室内に何か転居先の手がかりが残っているかもしれないと、安否確認のために、警察に依頼して室内に立ち入ってもらうことになりました。
 
ところがです。警察官が中に入って確認すると、残念ながら既にお亡くなりになっており、部屋に敷かれた布団の中にミイラ化したおばあちゃんが横たわっていました。高齢のため体の水分も少なく、そのため腐敗せずにミイラ化してしまったようでした。
 
後から分かったことと言えば、おそらく4年くらい前にお亡くなりになっていたということ、福祉の手も入っていなかったということ。年金が入る口座から自動引き落としだったので、管理会社も異変に気が付かなかったということ。
 
もっとも悲しいことは、孤独死をしても4年もの間、誰にも気づいてもらえなかったという事実です。おそらく親族の方も高齢で、疎遠になっていたのかもしれません。
 
このケースのように、孤独死は高齢者の印象が強いのですが、一般財団法人少額短期保険協会の調査によると、実は65歳未満が全体の52%を占めています。つまり現役世代の方が、高齢者より多いのです。
 
さらには孤独死があった時、30%強の方々が発見まで2週間以上かかっているということも、日本の人間関係の希薄さを感じさせます。要は孤独死は、誰にでも起こりうることなんだと言うことなのです。


株式会社OAGライフサポート
この記事の提供元
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著者:太田垣章子

OAG司法書士法人、代表司法書士。株式会社OAGライフサポート代表取締役。賃貸トラブル解決のパイオニア的存在として、2500件以上の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託。『老後に住める家がない』など、高齢者の住まいに関する著書多数。家主様やおひとりさま向けのセミナー講師としても、好評を博している

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