1. 両立のために法律を知る
現在、仕事と介護を両立できず仕事を辞めてしまう介護離職者は、年間約10万人にものぼります(厚生労働省「雇用動向調査」)。ご家族の介護が始まった際に、どのように仕事と両立していけばいいのか不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
介護離職を防止するために、「育児・介護休業法」という法律があります。この法律は育児や介護を行う労働者の、仕事と家庭との両立を可能にするよう支援することを目的として制定されました。この育児・介護休業法において、介護をしている方が仕事を辞めることなく両立し続けられるように、介護休業等の制度が定められています。
この記事では主にご家族の介護のために利用できる制度についてご紹介します。
2. 「介護休業」とは
「育児休業」は知っていても、「介護休業」は聞いたことがないという方も多いのではないでしょうか。介護休業は上述の育児・介護休業法に基づく、要介護状態にある対象家族一人につき通算93日付与される休業制度です。この要介護状態とは、『2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態』を指します。介護休業は最大3回まで分割して取得することができます。有期契約労働者(契約社員)も一定の条件を満たした場合には利用が可能です。また、一定の条件を満たしている場合には、雇用保険から休業日数に応じて平均日額の67%相当の介護給付金が支給されます。
◎「介護休業」はなぜ93日?
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2021)」によると介護にかかる平均期間は5年1ヶ月となっています。中には5年以上かかったという声もあり、一般に長期化する傾向があります。にもかかわらず、介護休業で休める日数はわずか93日。育児休業が1年間であることを考えると短く感じられますよね。なぜだと思われますか?
この問いの答えを考えるためには、介護休業の位置づけについて確認する必要があります。育児休業が「復職できる状態が整うまで育児をするための休み」である一方、介護休業は「介護そのものをするための休みではない」のです。介護休業の主の目的は「介護の体制を整えること」にあります。
先の予想が立ちやすい育児と比べ、介護はこの先の見通しを立てることが難しいのが大きな特徴です。そのため10年介護を続けてもなお終わりが見えない、という方もいらっしゃいます。つまり、「介護のために休みを取り、落ち着くまで待ってから仕事を再開しよう…」と考えていると、いつまでたっても復職できないという可能性があるのです。そうなれば収入が途絶えるだけでなく、今まで積み上げてきたキャリアを中断してしまうことにも繋がりかねません。
仕事と介護を同時に続けていくためには、「長期間の両立に耐えうる態勢作り」が不可欠です。93日間の介護休業は、その土台作りのために使ういわば「準備期間」と考え、必要なタイミングで上手に活用していきましょう。
3. 「介護休暇」は「日常的な介護のニーズに対応するため」に使う
育児・介護休業法に定められている休みには「介護休暇」というものもあります。こちらは、要介護状態にある対象家族1人につき年5日(対象家族が2人以上の場合には年10日)付与されます。
大きな特徴は、介護休業と異なり1日~時間単位で利用できる休暇だということです。「長期の休業は不要だけど、1日だけ・あるいは数時間だけ休みが欲しい!」というときにぴったりな制度です。具体的には、ケアマネジャーとの打ち合わせや通院の同行などの際にご利用いただくと良いでしょう。こちらも介護そのものをするためではなく、日常的な介護のニーズに対応するために活用していくことが両立のためのポイントです。
また、その他会社ごとにオリジナルの制度をご用意しているケースもあります。急な介護の際にもすぐに活用できるように自分の会社の制度内容を理解し、申請先を知っておくと安心です。
これらの制度をうまく組み合わせて、無理なく仕事と介護を両立していきましょう。
※この記事は2023年4月時点の情報をもとに作成されており、制度内容等は変わる場合があります。