介護はどのようにして始まるのか? 厚生労働省の調査で、その理由が明らかになっています。介護が始まる理由をランキング形式でご紹介しながら、わが家の介護が始まったきっかけも併せてご紹介します。

前回の話はこちらから

1. 介護が必要となる主な原因の上位4つとは?

厚生労働省の2019年国民生活基礎調査によると、介護が必要となる主な原因の1位は認知症、2位は脳卒中、3位は高齢による衰弱、4位は転倒・骨折となっています。
 
わたしの介護が始まったきっかけも母の認知症や父の脳梗塞なので、多くみられるケースといえます。それぞれの原因から、どのように介護は始まるのでしょう?

2. 第4位:転倒・骨折

家族が転倒や骨折をしただけで、介護が始まるの? と疑問に思うかもしれません。しかし実際に、転倒や骨折をしたあとの生活環境の変化によって、介護が必要になる高齢者が多くいます。
 
特に骨折の場合、部位によっては完治するまでに多くの時間を要します。ベッドの上での生活時間が増え、次第に活動量が落ちて筋力が低下したり、認知機能の低下によって、自立した生活が難しくなったりする方もいます。
 
祖母の介護が始まったきっかけは子宮頸がんでしたが、がんの療養中に病院のベッドから転落して大腿骨を骨折。骨を固定するためにボルトを入れる手術をして完治はしたのですが、重度の認知症だった祖母は骨折したことを忘れ、リハビリの意味も理解できませんでした。
 
次第にベッドで過ごす時間が長くなり、数か月後には寝たきりになってしまったのです。筋力の低下とともに食欲も低下した祖母は衰弱し、骨折から8か月後に亡くなってしまいました。骨折の怖さを思い知らされた出来事でした。

3. 3位:高齢による衰弱

高齢による衰弱は、フレイルと呼ばれます。加齢によって心身が衰え、具体的には体重が減少したり、歩行速度が遅くなったり、疲れやすくなったりするなどの変化が見られます。
 
転倒や骨折のように介護の始まりは急ではありませんが、日々の活動量が減ったり社会活動への参加が減ったりすることで、少しずつ認知機能が低下したり、筋力が低下したりします。
 
わが家ではフレイルが介護のきっかけにはなっていませんが、祖母が大腿骨を骨折したあとにベッドで衰弱していく姿を見て、常に体を動かし続けることの大切さを痛感しました。

4. 2位:脳卒中

脳卒中は脳内の血管が詰まったり、破れて出血してしまったりする病気で、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などが該当します。
 
片側の手や足が動かなくなったり、言葉が出なくなったり、呂律が回らなくなったりするなどの症状が出ると、介護が必要になります。リハビリで回復する方もいますが、長く後遺症として残ってしまう場合もあります。
 
父は65歳のとき、脳梗塞で入院しました。母と別居中だったため介護を頼めず、当時34歳だったわたしに介護が回ってきたのです。まさか30代で介護が始まるとは思っていなかったし、伯父が同じ脳梗塞で倒れて介護の大変さを知っていたので、自分の人生はここで終わったと思ったくらいでした。
 
幸いなことに父は症状が出たあとすぐに病院へ行き、懸命のリハビリによって回復しました。軽い後遺症は残りましたが、ひとりで生活できるまでになったので、わたしが介護する必要はなくなりました。

5. 1位:認知症

2016年の国民生活基礎調査から、認知症が1位になりました。
 
認知症になると約束を忘れてしまう、同じ話を何度も繰り返す、同じ物を何個も買ってしまう、迷子になって家に戻れなくなるなど、次第に自立した生活が難しくなっていきます。
 
わが家では祖母と母が認知症になりましたが、わたしが40歳のときに遠距離介護を始めるきっかけになったひとつが母の認知症でした。
 
当時69歳の母も同じ話を何度も繰り返すようになるなどの症状が出始め、ホームヘルパーなどの介護保険サービスを使って、介護のプロに頼らなければならなくなった出来事がありました。
 
実家の車庫の中にある保管スペースに、わたしの身長(173㎝)を超える高さまで燃えるゴミが積みあがっていたのです。母は燃えるゴミの収集日や町内のゴミ集積場の場所が分からなくなったため、捨てずにためていたのだと思います。
 
また下の写真のように、寝室のタンスの中からなぜか居間で使うテレビリモコンが見つかりました。母はリモコンの機能や使い方を思い出せなくなって、タンスに片づけたのかもしれません。
1位:認知症

6. 介護が始まるきっかけを知っておく意味

わたしは介護が始まる主な原因のランキングを、自分の講演会で必ず紹介するようにしています。介護は情報戦で、介護が始まる前から情報収集したほうがいいと言われます。その際、どういった情報を集めたらいいかの指針になるからです。
 
特に1位の認知症は、発症してしまったら何もできなくなる、介護施設に入ってもらしかないと考える方が多くいます。一方で母のように重度まで認知症が進行しても、デイサービスや訪問リハビリなどの介護保険サービスを利用しながら、自宅で元気に暮らせる場合もあります。
 
介護が始まるきっかけを知っておくことで効率よく情報を集められますし、仮に介護が始まったとしても、情報があると慌てず落ち着いて行動できるようになると思います。
この記事の提供元
Author Image

著者:工藤 広伸

介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。2012年より岩手で暮らす認知症の母を、東京から通いで遠距離在宅介護を続けている。途中、認知症の祖母や悪性リンパ腫の父も介護し看取る。介護に関する書籍の執筆や、企業や全国自治体での講演活動も行っている。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。著書に『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』(翔泳社)、『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)ほか
介護ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/

音声配信voicy『ちょっと気になる? 介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

関連記事

シニアの体型とライフスタイルに寄りそう、 2つの万能パンツ

2022年7月23日

排泄介助の負担を軽減!排尿のタイミングがわかるモニタリング機器とは?

2022年9月23日

暮らしから臭い漏れをシャットアウト! 革新的ダストボックス

2022年9月5日

Cancel Pop

会員登録はお済みですか?

新規登録(無料) をする