1. 仕事も介護も「マネジメント」が重要
近い将来、仕事をしながら介護をしなければいけない可能性のある方は、両立に不安を感じることがあるかもしれません。また、今現在すでに介護をされている方の中には、今後の両立に関して不安を感じている方もいらっしゃるかと思います。そんな両立への不安を抱える皆様に、今回は両立のためのポイントをご紹介したいと思います。
仕事と介護の両立のためには、マネジメントの視点を持つことが重要です。
仕事においては日常的にPDCAサイクル(Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(確認)→ Action(改善))を考えて回していらっしゃることかと思います。実は、介護も同じ考え方をすることができるのです。
P (Plan)どういう介護をしたいか、されたいかなどをご家族間で話し合い計画を立てる。
D (Do)仕事と介護の両立を考えてどこまでが自分でできるのか考え、「できないところ」は無理せず社会資源を活用。
C(Check)介護される本人が安心して生活できているか。介護サービスは適切か?仕事と介護の両立はうまくいっているのか。負担が重くなっていないか、日々の生活を振り返り確認する。
A(Action) キーパーソンに相談しながら解決方法を検討し、調整する。
Actionにおけるキーパーソンとは介護や医療の専門家を指します。プロに任せられるところはプロに任せる。アウトソーシングは重要です。
介護そのものを自分ですべて行おうとすると負担が重くなり、継続が難しくなってしまいます。なにより、ご自身が倒れてしまっては元も子もありません。介護を自分で一手に引き受けるのではなく、自分は「介護をマネジメントする側」だという姿勢が大切です。
2. マイナスの感情は抑え込まない
介護は「感情労働」と言われています。その場面で求められている、あるいはその場面にふさわしい感情を示すために、自分自身の本当の感情を抑え込み、感情をコントロールする必要があるため、精神面に負担がかかります。
また、介護の特徴として、「先が見えない」「達成感が得にくい」「個別性が高い」ということが挙げられ、他者理解されにくいといったことも、心的負荷の増大に拍車をかけています。自分の親の介護となればなおさら、衰えていく姿やできないことが増えていく姿を受け入れることが難しく、時にはイライラしてしまうこともあるかと思います。これはごく当たり前の感情で、責められるものではありません。
ですから、自分のできる範囲で介護を行い、自分の生活も大切にしながら、がんばりすぎない、楽しむ、ガス抜きをする、話をきいてもらうということを意識して行うことが大切です。
マイナスの感情が出てもおかしいことではありませんので、無理に抑え込まず、客観視すると良いと言われています。イライラしてきたなと感じたら、自分を俯瞰してみてください。また普段から、ストレスを感じた際に何をしたらリフレッシュできるのかをリストアップしておいて、ストレスを感じていることを認識した時にそれをルーティンのように実施するという手法もあります。(コーピングといわれるストレス対処法です。)
ストレス対処法をたくさん持っておくと大きな武器になります。
3. 両立のための5つのポイント
最後に、仕事と介護の両立を継続するための5つのポイントをご紹介します。
①自分で直接介護をしすぎない
介護保険のサービスなどを率先して利用しましょう。自分で介護することが親孝行だ、という観念に囚われて無理をしていませんか。一番大切なのは、介護される本人にとっていかに安心できる環境を作ってあげられるかということです。そのためにどんなサービスを利用したらいいのか考えてあげることも立派な親孝行です。
自分ですべて介護しようと考えると、かえってイライラしてしまい、家族との関係性が悪くなってしまうこともあります。適度な距離感を取ることが大切です。
②専門職になんでも相談する
在宅介護の方であれば地域包括支援センターや担当のケアマネジャー、施設に入っているのであれば施設のケアマネジャーや職員に何でも相談していきましょう。知っているつもり、調べたつもりであっても、その道の専門家に聞いてみたら新たな視点からアドバイスをもらえることは多くあります。社会資源を有効に活用していきましょう。
③ご家族やごきょうだいとのコミュニケーション
いざという時のためにも、「日頃から介護される本人とのコミュニケーションを取っておくこと」が大切になります。明日、介護が始まるかもしれません。どんな生活が望ましいか、日常会話の中に取り入れながらご本人の価値観を知っていきましょう。
また、一緒に介護していくことになるであろう家族ともしっかりとコミュニケーションをとり、事前に目線合わせをしておけると、いざ介護が始まった際に協力体制が作りやすくなります。
④両立支援制度の活用
介護休暇や介護休業など介護のための制度は法律で定められているため、基本的にはどんな方でも利用が可能です。会社にどのような制度があるのか確認し、無理なく両立できるように活用していきましょう。
⑤自分の時間を大切にする
介護をする上で何よりも大事なのが「自分を大切にすること」です。介護と仕事でいっぱいいっぱいになってしまい自分に向き合う時間を取れなくなってしまうと心身ともに疲弊し両立を続けること難しくなってしまうかもしれません。長期化しやすい介護と上手に付き合っていくためには休息も必要です。
介護サービスは、介護を受ける本人のためだけでなく、自分の時間を作ることを目的として利用することもできます。
仕事と介護の両立を無理なく続けるために、自分自身を労わってあげましょう。
※この記事は2023年4月時点の情報をもとに作成されており、制度内容等は変わる場合があります。