フレイル予防、そして介護予防には運動が重要ということは頭ではわかっていても、なかなか継続できないという方も多いかもしれません。そこで今回は、運動を習慣化させるための8つのコツを紹介します。ケアラーの皆さんはもちろん、フレイルが心配な親御さんにもぜひ、取り組めそうなものからチャレンジしてもらってみてください。
 

1. 運動習慣化のコツ その1:具体的な目標を設定する

スポーツ心理学の研究では数字など具体的な目標を立てることが選手のパフォーマンスに大きな影響を与えることがわかっています。このように、運動を行うなど新たな習慣を取り入れる際、具体的な目標を設定することは、一般の私たちにとってもスポーツ選手と同じようにとても大切なポイントになってきます。

例えば「介護を予防するために運動しよう!」と決めたときに「毎日ちゃんと運動するぞ!」といった漠然とした目標ではなく、「毎日6000歩を歩くようにしよう!」というように具体的な数字を入れた目標を設定することで、自分がやるべきことがわかりやすくなります。
 
このように、目標に数字を設定するだけで目標に対する意識と効果が大きく変わってきます。一方で、デメリットもあります。目標を達成しようという気持ちが強ければ強いほど、その目標が達成できなかった時の落ち込みも大きくなります。
 
「毎日6000歩を目標にしていたのに、今日は4000歩しか歩いていない・・・」というように、目標を達成していないことが気になりすぎることも良くありません。
 
目標を必ず達成しなければいけないという強い思い込みは捨てて、気軽に長く続けられる心構えで目標に臨むことも大切になってきます。
 

2. 習慣化のコツ その2:達成可能な目標を設定する

「目標は高ければ高いほど良い!?」というわけではありません。意気込みが強くなりすぎて、実現することが難しいほど高い目標を設定してしまうと、達成することが難しくなり逆効果になってしまうこともあります。
 
また、急に体に負荷をかけることで、筋肉や関節などに過度なストレスが加わってしまうことで怪我につながってしまう可能性もあります。
 
それでは、どれくらいのレベルの目標を設定すればよいのでしょうか? 一言で表現すると「少しだけ頑張って達成できる目標」です。「過度に優しすぎず、難しすぎず、できるかできないかというレベルが最適です。今の自分の状態が100%だとすると120%の努力で達成できそうな目標設定が良いとされています。
 
とはいえ、はじめの頃は自分に合ったちょうど良い目標を設定することは難しいと思いますので、低くても、達成することで自分に自信をつけながら運動を継続していくことをお勧めしています。まずは、自分が楽しく続けられることが大切です。

達成可能な目標を設定する際にもう一つ大切なポイントがあります。それは「いつまでに達成を目指すか?」を決めることです。達成の期限を設けることで、モチベーションの向上にもつながりますし、自分が継続して運動ができているという実感を持つこともできます。
 
達成期限を設ける際の注意点としては、1年以上などの長い間隔で設定するのではなく、1カ月など短い間隔で設定すると良いでしょう。
 
神奈川県では運動経験のない人でも運動習慣を身に着ける取り組みとして「3033(サンマルサンサン)運動という取り組みを行っています。
 
3033とは
■30(運動時間):1日30分(10分の運動を3回に分けてもOK)気軽に体を動かしましょう!

■3(運動頻度):週3回、できれば2日に1回ずつ運動を行いましょう

■3(運動継続期間):3カ月運動を継続しましょう! 運動の効果が表れてきて、運動習慣が身に付きます
 
目標設定が難しいという方は、ぜひこの「3033運動」を参考に目標の設定を行ってみるとよいでしょう。
習慣化のコツ その2:達成可能な目標を設定する

3. 習慣化のコツ その3:効果を求めない

運動の効果はすぐには表れません。
 
例えば、若者が筋力トレーニングを一生懸命に行っても数カ月の時間を経てようやく見た目の変化を生じさせることができます。そのため、日々の運動を少し増やしただけで、すぐに見た目に変化が生じたり、体が動かしやすくなったりすることは難しいと考えるべきものなのです。

頑張って運動を行っても効果がみられないと、「やっても無駄」と思いこみ、運動を続けることが嫌になってしまうことがあるかもしれません。
 
しかし、運動を始める段階で「体の変化はやってもすぐには見られるものではない」と心の準備をしておくことで、途中での挫折を防ぐことができます。目指す効果はあくまでも「フレイルを予防」、「介護を予防」することですので、今の生活を維持できていることそのものが効果と考えるようにしましょう。
習慣化のコツ その3:効果を求めない

4. 習慣化のコツ その4:一緒に運動する仲間をつくる

1人で運動を行うよりも、同じ目的を持った仲間と一緒に取り組むことで、運動を継続しやすくなります。
 
毎回の運動を仲間と一緒に行うことは難しいこと面もあるので、以下のように行ってみるだけでも楽しく体を動かすことができます。
 
■週に1回のウォーキングを友達とする。ウォーキングが終わった後はお食事などをして楽しい時間を共有する

スイミングスクールや体操教室に通い、新しい友達をつくる
 
■自分で取り組んだ運動をSNSで報告し合う

このように、1人ではなく誰かと一緒に運動に取り組むことで「自分1人だけで頑張っているのではないから頑張ろう」と思うことができます。さらに、運動をきっかけに、日常あったことを話し合ったりすることでも、心もリフレッシュされて楽しい気持ちも生まれてきます。
 
習慣化のコツ その4:一緒に運動する仲間をつくる

5. 習慣化のコツ その5:別の習慣と組み合わせた「ながら運動」を取り入れる

「ながら運動」は日常行っている動作に運動を加えて行うものです。わざわざ運動時間を確保しなくても、いつもの動きを工夫するだけで気軽にできるので、忙しい方などにもおすすめです。
 
例えばこのような「ながら運動」があります。

■座ってテレビを見ながらの「ひざ伸ばし」「手や足の指のグーパー運動」
 
■洗濯物をたたみながら、上半身をゆっくりねじってストレッチ
 
■湯船につかりながらのストレッチ
 
■背筋を伸ばして良い姿勢を意識して行う拭き掃除

このように日々の生活で必ず行うような動きに運動を合わせるだけで、さぼりがちな方でも無理なく運動を続けることができます。
 
私たちの1日の総エネルギーの約3割は日常生活の動作で消費するといわれています。今回紹介した「ながら運動」を取り入れるだけでも、消費エネルギーが増加して運動効果を期待することができます。
習慣化のコツ その5:別の習慣と組み合わせた「ながら運動」を取り入れる

6. 習慣化のコツ その7:行った運動を記録する

皆さんは子供の頃、夏休みなどにラジオ体操に参加した際、カードにスタンプを押してもらうことがうれしかった記憶はありませんか? 私たちは日々の頑張った運動の成果をノートやカレンダーなどに記録することで達成感を感じたり、「よし、明日はこの運動をやってみよう!」という気持ちを持つことができるようになります。
 
どのように記録をつければよいかというと、最も簡単な方法としては、運動ができた日にはカレンダーに〇をつける、ということだけでもOKです。

運動に取り組めている様子を自分の目で見れるので、「自分は頑張っている!」と肯定的に捉えることができます。これが習慣化してくると、〇をつけるために運動がしたくなってしまうものです。
 
最近ではさまざまな種類の便利なアプリなどもありますが、カレンダーを利用した〇つけは簡単で効果のある方法ですので、ぜひ試してみてください。
習慣化のコツ その7:行った運動を記録する

7. 習慣化のコツ その8:まずは3週間!を頭に入れる

ロンドン大学のフィリパ・ラリー(Phillippa Lally)博士は習慣化にどれくらいの日数が必要かの研究を行い、「習慣化には18~254日(平均66日)が必要である」という結果を発表しています。18~254日と大きな開きがあるのは、その行動の種類や人によって差があるため、とのことです。
 
わかりやすい目安としては、行動が習慣化されるためには、最低でも3週間の期間を必要とする、と覚えておくとよいでしょう。
 
運動を始めたばかりの頃は、まずは3週間を目標として頑張り、3週間継続できたら3カ月を目標とすると良いでしょう。
習慣化のコツ その8:まずは3週間!を頭に入れる

8. おわりに

この記事では、運動を習慣化させるための8つのコツを紹介しました。全てのコツがどんな人にでも当てはまるというわけではありませんが、大切なのはまずは継続するということです。自分に合った方法を見つけて楽しく継続してみてください。気が付いたら、意外な効果が見られるかもしれません。




この記事の提供元
Author Image

著者:坂元大海(アークメディカルジャパン株式会社 代表取締役)

<プロフィール>
10年間整形外科に勤務後、アメリカ(UNLV)に留学し、ピラティスマスターのライセンスを取得。帰国後にアークメディカルジャパン株式会社を立ち上げ、医療・健康・スポーツ分野において事業を展開。延べ10万人以上の豊富な治療経験や多くのプロ選手、日本代表選手、俳優などへのケアやコンディショニングを行っている。教育、講演、育成においても精力的に活動し、全国での指導実績も豊富にある。
<所有資格>
・理学療法士
・鍼灸師
・柔道整復師
・国際PNF協会 Recognized course修了者
・(財)日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
・NASM-PES
<講師実績>
久留米大学、九州共立大学、福岡リゾートアンドスポーツ専門学校非常勤講師
<学術活動>
・「血流制限下でのレジスタンストレーニングが筋活動に及ぼす影響」PT学会、理学療法学
・「シンスプリントの発生要因に関する一考察」九州・山口スポーツ医学会など多数

関連記事

シニアの体型とライフスタイルに寄りそう、 2つの万能パンツ

2022年7月23日

排泄介助の負担を軽減!排尿のタイミングがわかるモニタリング機器とは?

2022年9月23日

暮らしから臭い漏れをシャットアウト! 革新的ダストボックス

2022年9月5日

Cancel Pop

会員登録はお済みですか?

新規登録(無料) をする