今回は、ご両親が認知症になった時に注意すること、一般的な認知症の方への接し方との違いをお伝えします。

1. 身内だからこそ間違った接し方をしてしまう理由

1.昔の親との比較

子どもだからこそ、間違った接し方をしてしまうことがあります。なぜでしょう? 変化していく親の姿に戸惑いを隠せないからではないでしょうか? 今までしっかりしていた、ご自身のことができていた。しかし、少しずつ忘れることが出てきた、同じことを何回も聞いてくる、ごはんを食べていないと言う……。そのような今までと異なった親の姿に戸惑うのは当たり前だと思います。あんなにしっかりしていたのにまさか認知症? 昔と今のご両親を比べて、受け入れることが難しいのは当然のことです。

これまでの記事に書いたように、脳神経細胞の低下によって、誰しもに起こり得るのが認知症です。ゆっくりと理解をし、徐々に受け入れていくことが重要でしょう。決して認知症になったご両親が悪いわけではありません。

そして、認知症は徐々に進行していきます。少しずつできないことが増えてくることに、ご本人様も気づき不安や焦燥感を感じていることでしょう。
 
他人の親には優しく接することはできます。看護師や介護士によく見られることですが、患者様や利用者様には通常通り接することができるのに、ご自身の両親となると、ついつらくあたってしまったり、怒ってしまう場合があります。ご自身の両親だからこそ、昔のしっかりされていた、働いてくれていた、一緒に遊んでくれていたご両親と今を比べてしまい、その落差からショックが大きく、不安や焦りがより強いものになるのです。ですので、つらくあたってしまうご自身を責めず、ご両親に対しての想いが強いからこその気持ちであることを理解しましょう。
 
 
2.家族がしがちな逆効果な対応
 
2−1.失敗を指摘する
 
認知症の初期段階では、ご自身も何かができていない自分をわかっているということがあります。そして、それを知られたくないため、隠している人もいます。そのような方に、悪気がなくとも失敗(たとえば、燃えるゴミと燃えないゴミの分別を間違えたなど)を指摘すると、自尊心を傷つけるおそれがあります。
 
また、ご自身では正確にできているつもりの方もおられます。その方に間違っているからと指摘をすると、混乱を招く場合があります。指摘はせず、家族がフォローすることで混乱せずに済みます。
 
2−2.相手が好まない計算などをしてもらう
 
脳に刺激を与えようと、クイズや計算などを無理やりさせてしまう方がいます。少しでも脳に刺激を与え、認知症の進行を遅らせたい気持ちはわかりますが、ご本人様の興味がないことを無理やりさせるのは苦痛であり、逆効果です。信頼関係を壊すきっかけにもなりかねません。脳に刺激を与える方法はなるべくご本人様が今までの生活でされていた趣味や活動をしてもらう方が、効果的です。それが日常生活の中のお料理や読書などでも構いません。
 
2−3.自分を責める
 
これはご本人様に対する対処とは少し異なりますが、完璧な介護は存在しません。しかし、小言を言ってしまった、間違いを指摘してしまった、喧嘩をしてしまった、と後悔される方もおられます。しかし介護は長くなることもあります。ご自身を責めてはとてもつらくなってしまいます。親子なのだから、通常でも口喧嘩ぐらいするものだという心構えでいましょう。
 
私の場合は母が認知症ではなくがんでしたが、症状がコントロールできない時「ちゃんと対応しよう、つらいのは本人なのだから」と心に言い聞かせていましたが、仕事をしながらの介護であり、つい口喧嘩してしまい、その度に自己嫌悪を感じていました。しかし、喧嘩できるのも親が生きているからだ、親子喧嘩ぐらいどこの親子もしている、と意識するようになってから少しずつ気持ちが楽になりました。
 
2−4.認知症であることを周囲に隠す、家に閉じ込める
 
まず認知症は誰でも発症し得る病気であり、恥ずかしいものではないということを認識しましょう。また徘徊を心配して家から出られないようにする方もおられますが、その場合、窓から無理やり出ようとするなどけがのリスクにもつながりますので、適切なサポートを受ける必要があります。そのためには医療機関の受診やサポートをしてくれる行政に早い段階で相談することをお勧めします。
身内だからこそ間違った接し方をしてしまう理由

2. 認知症の初期症状5つとその対処方法

1.物忘れがひどくなる

よく出る症状としては、同じものを購入してくる。「今日は何曜日? 水曜日?」「明日は何をする日だっけ?」などと何度も同じ質問をされます。物忘れは忘れていること自体を覚えていますが、認知症の場合は、忘れていること自体を忘れています。なので、同じものを購入する、質問したこと自体を忘れているため、何度も同じ質問をされます。

つい、「さっきも聞いてきたよ、答えたよ」と言ってしまいがちですが、ご本人様を責めるのは逆効果ですので、できるだけゆっくりと対応するようにしましょう。お食事がまだとおっしゃるなら、実際はしなくてよいのですが、「ご飯準備するね」と、まずは相手の発言を認めるようにしましょう。
 
 
2.時間や場所がわからなくなる

慣れた道を間違える、何度も遅刻をする、などのことが見られれば、認知症を疑いましょう。初期段階では時間がわからなくなるなどのことがありますが、症状が進むと徘徊をする、自宅に帰ってこられない、などの可能性を考えなければなりません。対処としては、洋服や下着に住所を書いた布を貼っておく、GPS機能のあるデバイスを持ってもらうなどが挙げられます。外出時は一緒に出かけることなども必要でしょう。ただ仕事や子育てをしながらでは、かなりの負担となってきますので、施設の利用なども考慮にいれてよいでしょう。
 
 
3.理解力や判断力が低下する
 
以前までできていたこと、たとえばお料理や車の運転、部屋の片付けなどができなくなってきます。初期の段階では、いきなりお料理の仕方を忘れるということは少ないので、お料理好きであれば、一緒に料理をする、スーパーにお買い物に行く、一緒に部屋の片付けを行うなど、ご本人様に残された能力をできるだけ維持できるような関わりをしていきましょう。
 
 
4.すぐに怒るなど性格が変わる
 
穏やかな人が急に怒りっぽくなる、失敗を人のせいにするなどは認知症の症状です。やる気がなくなる、鬱のような症状が見られる方もおられます。性格の変化は認知症によるものだと理解をし、できるだけ本人を否定しない関わりが重要です。
 

5.作業に集中できない
 
テレビを見なくなる、新聞を読まなくなる、などがあげられます。部屋が片付いていないなどのことも見られます。できるだけご本人が好きだったことや趣味を続けてもらい、脳に刺激を与えることが重要です。
認知症の初期症状5つとその対処方法

3. 身内にしかできないご本人を尊重した関わり

ここまでデメリットの部分にスポットをあてて説明してきましたが、大きなメリットもあります。まず身内だからこそ、小さな変化に気づくことができます。なんとなくいつもと違う、いつもそんなこと言わないのに……など、生活の中での小さな変化に気づけるのは身内だからこそです。同居されていない方もおられますが、それでもまったくの他人にはわからない小さな変化に気づけるのはやはり身内です。早く気づけると、受診やサポートも受けやすくなります。
 
認知症の方の行動理由はよくわからないことが多いものです。また、認知症だからと片付けられがちです。しかし、ご家族にしかわからない理由があります。たとえば、ある方はお弁当箱に固執され、常に持っていました。隠しても家中を探そうとしていました。しかし、それは娘さんにいつもお弁当を作ってあげたいという強い思いからでした。娘さんは、お母さんに「お弁当いつもありがとう」というと、お弁当箱に対する執着は少しずつ和らいでいったそうです。こういった対応はご家族様にしかできないことでしょう。

4. まとめ

今回は親が認知症になった時の接し方についてお伝えしました。前半はついやってしまいがちな対応、後半は身内だからこそできる対応についてまとめました。しかし認知症の平均介護期間といわれる10年と、長く症状が進行すると、介護者は心身ともに疲弊してきます。状況に合わせた社会的サポートシステムを活用することをお勧めします。次回は社会的サポートシステムについてお伝えします。
この記事の提供元
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著者:山川さちえ

<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くのがん患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺がんステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養のがん患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験からがん患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。

<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース

<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」

「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」

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