毎年、冬になるとインフルエンザの流行による学級閉鎖や、予防方法に関する話題がニュースになります。そうした状況を考えれば、インフルエンザは「身近な病気」だといえるでしょう。しかし、インフルエンザの予防方法や感染したときの適切な対処方法を知っているかといわれると……。自信を持って「理解している」といえない人も多いのではないでしょうか。特に高齢者は重症化しやすいため、高齢者を介護している介護者は、ネット上のさまざまな情報に惑わされず、適切に対応するためにも、インフルエンザの特徴や感染経路、予防方法をきちんと理解しておきましょう。

1. インフルエンザの大きな特徴は、「突然の高熱」

インフルエンザはインフルエンザウイルスによって引き起こされる呼吸器感染症です。インフルエンザのウイルスは、A型、B型、C型という3つに大別されます。これらのウイルスのうち、A型とB型の感染力は強く、日本では毎シーズン、数百万人~1千数百万人が受診している状況です。
 
インフルエンザウイルスに感染すると、約1~3日の潜伏期間を経て発症し、突然38℃以上の高熱が出たり、関節痛や筋肉痛、全身倦怠感、食欲不振などの「強い全身症状」が現れたりします。また、こうした症状が比較的短時間でピークに達するのもインフルエンザの特徴です。そのため、「午前中は普段どおりだったのに、夕方には高熱が原因で何も手につかなくなった」といったケースもよくみられます。
 
インフルエンザは、かぜと間違われることもありますが、かぜという病気は、のどの痛みや鼻水、くしゃみ、せきなどの症状が中心で、全身症状があまりみられない軽めの状態につけられる病名です。従って、軽いインフルエンザと重めのかぜは区別がつきにくいことになります。
インフルエンザの大きな特徴は、「突然の高熱」

2. 今シーズンの流行予測は?

2020/2021年シーズン、2021/2022年シーズンは、季節性インフルエンザの患者数が非常に少ない状況で推移しました。2022/2023年シーズンは、大規模流行ではありませんでしたが、各地で小さな流行があり、さらに通常は流行が収束する初夏から夏にかけて、流行がだらだらと続きました。
 
大規模流行が抑えられていたのはとても喜ばしいことですが、見方を変えれば「インフルエンザの免疫を持つ人が減少している」と考えることもできます。今後インフルエンザが流行した場合は、免疫を持っていない、あるいは免疫に低い人たちの間で感染が拡大する可能性もあるため、注意が必要でしょう。
 
北半球における冬のインフルエンザの流行状況を推測する際は、南半球の冬(北半球では夏)の感染状況が目安となります。2023年、オーストラリアでは例年よりも早く子どもを中心に患者数が増加しはじめ、チリやパラグアイでも流行が見られました。加えて、海外との往来もコロナ前の状況に戻ってきているため、2023/2024年シーズンの日本では、ここ数年にはなかった流行が懸念されています。くれぐれもインフルエンザへの備えを怠らないようにしてください。

3. 感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」

インフルエンザウイルスの主な感染経路は飛沫感染で、接触感染もあり得ると考えられています。飛沫感染、接触感染から身を守ることを心がければ、インフルエンザに感染するリスクは大きく減少するでしょう。
 
●飛沫感染
感染している人のくしゃみやせきで出るしぶきを吸い込むことによる感染です。くしゃみやせきを浴びる距離(2m程度)にいる人は感染の危険性が高いとされているため、学校や満員電車など、人が多く集まる場所では注意が必要です。
 
●接触感染
感染している人のつばや鼻水が、ドアノブやスイッチ、つり革などを介して手などに付着することで生じる感染です。ただし、インフルエンザは、ウイルスが手に付着しただけで感染するようなものではありません。ウイルスが付着した手で口や鼻、目などに触れると、そこからウイルスが体内に入り込んで感染するので、こまめな手洗いを心がけるとよいでしょう。
感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」

4. 高齢者は特に注意を! インフルエンザを予防する5つのポイント

インフルエンザの予防にはワクチン接種が有効です。ワクチンには発症を防ぐ効果も一定程度、期待できますが、発症した場合に重症化を抑える効果のほうが大きく期待できるため、以下にあてはまる人は接種を検討するのがおすすめです。高齢者を介護している人も同じくワクチン接種を受けるとよいでしょう。
 
 
<接種が強くすすめられる人(インフルエンザ感染によってより具合が悪くなりやすい人)>
・65歳以上の高齢者
・60~64歳で次のような持病のある人(呼吸器・心臓の慢性の病気、糖尿病、代謝系の病気、腎臓の機能の低下 など)
・妊娠している人
・がんなどで免疫力が低下する治療を受けている人
 
<接種したほうがよい人>
・保育所、学校、高齢者施設など、集団の中で過ごす人
・流行期に受験などの重要なイベントを予定している人
 
通常、インフルエンザの流行は年末から始まり、1~2月にピークとなるため、ワクチン接種はできるだけ11月、遅くとも12月中に受けることが望ましいとされています。
 
なお、インフルエンザは、人から人に感染する病気であるため、手洗いやマスク着用などによって感染ルートを断つことが可能です。以下では、ワクチン以外の、日常で行うことができるインフルエンザの予防方法を紹介します。
 
●人との身体的な距離の確保(人混みを避ける)
インフルエンザが流行してきたら、人混みや繁華街への外出を控えましょう。特に、基礎疾患のある人や妊婦、体調の悪い人、睡眠不足の人はご注意を! 
 
●こまめな手洗い
流水や石けんによる手洗いは、手指についたインフルエンザウイルスを物理的に除去するための有効な方法です。帰宅直後や調理の前後、食事の前、トイレの後などには石けんをよく泡立て、洗い残しがないように、20~30 秒を目安にていねいに洗いましょう。
 
●マスクの着用
人混みに行くような場合には、飛沫感染をある程度防げる不織布マスクを着用するのがおすすめです。インフルエンザに感染した人が、周囲にウイルスを拡散しないようにするためのマスクはさらに有効です。せきやくしゃみが出る場合は、インフルエンザに限らず、感染症の可能性を考えて、マスクをつけましょう。
 
●部屋のこまめな換気
換気の悪い場所ではウイルスが滞留し、感染リスクが高まることがわかっています。気温が低くても、空気が淀まないように定期的に換気をしましょう。
高齢者は特に注意を! インフルエンザを予防する5つのポイント

5. インフルエンザで受診するときはここに注意!

ここまで、インフルエンザの予防法について解説してきましたが、さまざまな対策をしていても、インフルエンザに感染することはあります。インフルエンザが疑われるときは早めに医療機関を受診しましょう。
 
インフルエンザで医療機関を受診するときは、次の3点に気をつけてください。
 
●いきなり受診せず、事前に相談を
インフルエンザの流行期には、ほかの病気で受診した人たちへの感染を防ぐために、感染防止対策をとる医療機関が少なくありません。発熱などの疑わしい症状が出ても、いきなり受診せず、まずは電話などで受診方法を問い合わせてください(医療機関によっては問い合わせを求めないところもあります)。受診の際は、医療機関の指示に従うとともに、マスクをするなどして周囲の人に配慮しましょう。
 
混み合ったクリニックへの受診がためらわれる場合は、スマホやパソコンのビデオ通話などを使ったオンライン診療を検討するのも1つの手です。近年は、オンライン服薬指導を行う薬局も増えており、自宅まで薬を配送してくれる薬局もあります。まずは、かかりつけ医や薬局の薬剤師に相談してみてください。
 
●発症後48時間以内に受診
インフルエンザであると確定診断されると多くの場合、年齢や持病の有無、生活の状況などに合わせて、インフルエンザウイルスの増殖を抑える抗インフルエンザウイルス薬が処方されます。抗インフルエンザウイルス薬は、発症後48時間以内に服用・吸入などすることでよりよい効果を発揮するため、療養期間を短縮したい場合は、発症してから「48時間以内」に医療機関を受診してください。
 
●症状が収まってもうつさないための配慮を
症状が収まってからも体内にはウイルスが残っており、周囲の人にうつす可能性があります。熱が下がったからといってすぐに出歩かず、少なくとも2日程度は家で安静にしましょう。

6. まとめ

日本では、例年1月から3月がインフルエンザ流行のピーク。正しい知識を身につけて、しっかりと予防したいですよね。
 
ちなみに、冬になって寒くなると、どうしても活動量が減ってしまいますが、それもインフルエンザにかかりやすくなる原因だともいわれています。特に高齢者は、家にこもりがちになり、運動量が減る傾向があります。
 
つまり、適度な運動や十分な睡眠、栄養バランスのよい食事を心がけることが、インフルエンザ対策にもつながります。ストレスや過労にも十分注意して、インフルエンザにかかりにくい生活を心がけましょう!
 
 
監修:岡部信彦先生


岡部信彦 ※写真下
川崎市健康安全研究所所長。1971年、東京慈恵会医科大学医学部卒業後、小児科医として臨床経験を積んだのち、78年に米国バンダービルト大学小児科感染症研究室に研究員として留学。帰国後、国立小児病院感染科などを経て、91年にWHO西太平洋地域事務局伝染性疾患予防対策課課長、95年に慈恵医大小児科助教授、そして97年に国立感染症研究所に移り、感染症情報センター室長、センター長を務めた後、2013年より現職。

まとめ
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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