新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行して以来、マスクをつけずに過ごす機会がふえました。素顔でいられる開放感をうれしく思う半面、マスクをはずした自分の顔に「ハッ!」とした人も少なくないかもしれません。そこで、マスク生活でできてしまった口のまわりのたるみやシワ、マスク着用中に気づいた口臭など、口もとのトラブルを改善する方法を紹介します。未だにマスク着用機会の多い高齢者にとっても有用な情報となるため、母娘で参考にしていただければと思います。

1. マスク生活で加速した“マスク老け”とは?

マスクをつけると、顔の下半分が隠されます。隠されている部分というのは人から見えないため、緊張がゆるみ、動きも最小限にとどまりやすくなります。「コロナ禍のマスク生活で、そうした状況が続いて現れた老化現象を、私は“マスク老け”と呼んでいます」と、石井さとこ先生は話します。
 
「具体的には、口のまわりやあごの下のたるみ、ほうれい線やマリオネットラインと呼ばれる口もとのシワ、口臭などで『マスクをとったら、前より老けた気がする……』とマスク老けに悩む人が、私のクリニックにも多く訪れています」(石井先生)
 
マスク老けとは耳の痛い言葉ですが、知らぬ間に、忍び寄ってきた老化現象を撃退するために、トラブルごとの原因と解決策を、これからチェックしていきましょう。
マスク生活で加速した“マスク老け”とは?

2. (マスク老け現象1)口もとのたるみ&シワを解消

マスクをつける機会が減り、気になりはじめた口もとのたるみやシワの主な原因は「口もとの筋肉の運動不足」です。顔には、大小30以上もの筋肉があり、その7割が口のまわりに集中しています。顔の表情は、これらの筋肉が密接に関わり合って動くことでつくられます。
 
「マスクをつけて顔の下半分が見えなくなると、表情をつくることに意識が向きにくくなります。また、マスクがずれるのが嫌で、口を大きく開 けて思い切り笑う、というようなことも少なくなったのではないでしょうか。口のまわりの筋肉の運動量が少なくなると、血液やリンパ液の流れが滞って顔がむくみ、筋肉も衰えやすくなります。そのため、口角が下がったり、あごの下やフェイスラインのたるみが目立つようになるのです」(石井先生)
 
加えて、マスクをつけて会話をすると、マスクの中に呼気がこもり、不快に感じられて会話も控えめになりがちに。
 
「舌も筋肉のひとつです。会話が少なくなると、口もとの筋肉と同時に舌の動きが少なくなり、舌の筋力が低下します。すると本来、上あごに収められているはずの舌が落ちてきて舌先が歯に当 たり、歯に舌先を押しつけることに。それが、口のまわりの筋肉に悪影響を及ぼし、口もとのたるみやシワを招くことにつながります」(石井先生)
 
マスク生活で衰えた口もとの筋力を取り戻すには、口のまわりと舌の筋トレ(顔トレ)が効果的。その方法を紹介します。
 
●口のまわりの筋肉を鍛える「口輪筋トレーニング」
「口輪筋」は、唇のまわりをぐるりと囲むように位置する筋肉で、口を開ける、閉じる、唇を突き出す、などの動きで使われます。口輪筋が鍛えられると口角がキュッと上がり、口もとのハリが回復してたるみを改善。フェイスラインもすっきりと引き締まります。また、顔の筋肉の多くが口輪筋から放射状に伸びているため、口輪筋が鍛えられてしっかり動くようになると、自然と表情も豊かになります。唇を閉じる筋力が強くなり、口呼吸 予防にもなります。
 
①頰を内側に思い切り引き絞り 、唇をすぼめる。唇で小鳥のくちばしをつくるイメージで、小鳥が「ピヨピヨ」とさえずるように、唇を上下に4回、開け閉めする。
②唇をすぼませたまま、鼻から大きく息を吸い、両頰を「ぷー」と勢いよくふくらませる。①、②を3回くり返す。
 
 
●舌の筋力アップ!「舌エクササイズ」 
舌の筋力を高める「舌エクササイズ」を行い、衰えて垂れ下がった舌を、本来あるべき位置に戻しましょう。このエクササズでは「口輪筋」を刺激してほぐすこともでき、さらに口輪筋と連動して口角を上げる「頰筋(きょうきん)」のトレーニングにもなります。これらが強化されることで口角が上がり、頰の位置が高くなって、深く刻まれたほうれい線が薄くなります。落ちベロ予防に口呼吸予防、唾液の分泌力もアップします。
 
①片方の口角の裏側に舌を当て、上の歯ぐきをなぞるように前歯→反対側の口角、さらに下の歯ぐきをなぞるように下の前歯→出発点の口角へ、舌をぐるりと1周、10秒かけてゆっくり回す。
(マスク老け現象1)口もとのたるみ&シワを解消

3. (マスク老け現象2)口臭をケアして爽やかな息に

マスクをつけて感じる口臭は、口の中の乾燥と歯周病が、主な原因といえます。「マスク生活中、マスクを外すのが面倒で、積極的に水分をとらなくなったという人もいるのではないでしょうか。水分をとる量がへり、口の中が乾いた状態が続くと、臭いの元となる『嫌気性菌』が発生しやすくなり、口臭につながります。口内の乾燥を感じたら、水分補給を心がけたり、ガムなどをかんだりして、唾液の分泌を促しましょう」(石井先生)
 
一方、歯周病は、女性ホルモンとの関わりが深く、女性がかかりやすい病気といわれています。「女性ホルモンは、歯と歯肉の間から少しずつ分泌されています。歯周病菌の一種が、それをエサにして繁殖するようなのです。とくに、女性ホルモンが変動する思春期、妊娠期、閉経後は、歯周病菌の活動が活発になりやすく、口臭が強くなる傾向があります。また、閉経後は唾液の分泌量が減少して口の中が乾きやすく、口臭のリスクがより高まるため、オーラルケアが大切になります」(石井先生)
 
口臭を防ぐために、毎日の習慣にしたいオーラルケアが「舌磨き」です。
 
●1日1回の「舌磨き」で息をケア
舌には、想像以上に菌が存在しています。口の中を清潔に保ち、息をケアするには、 歯磨きに加え、1日1回、舌磨きを行うことが大切です。やり方は、水でぬらした綿棒を舌に当て、やさしくなでるように3〜4回こすります。舌は粘膜で傷つきやすいため、歯ブラシなどでゴシゴシ磨かないように気をつけましょう。
(マスク老け現象2)口臭をケアして爽やかな息に

4. 唾液の分泌を促し、若々しい口もとを保つ

「若々しく健康的な口もとを保つために、重要な役割を果たしているのが唾液です」と石井先生は話します。唾液にはどのような効果があるのでしょう?
 
(1)食べ物の消化を助ける
唾液に含まれる「アミラーゼ」という酵素が、食べ物に含まれる「でんぷん」を分解。胃で消化されやすい状態にします。
 
(2)むし歯 や歯周病を防ぐ
唾液に含まれる「リゾチーム」や「ペルオキシダーゼ」などの抗菌物質が、むし歯菌や歯周病菌の増殖を抑えます。また、唾液には、酸を中和して中性に戻す働きがあり、食後、むし歯菌が産出した酸によって酸性に傾いた口の中を中和し、むし歯を防ぎます。
 
(3)口の中を清潔にする
口の中に残った食べカスなどを洗い流すとともに、歯垢(しこう)をつきにくくし、口内を清潔に保ちます。
 
(4)歯の表面を修復する
歯の表面のエナメル質から溶け出した「リン」や「カルシウム」などの成分を再び取り込み、むし歯の初期段階を修復する働きがあります。
 
(5)健康な体を保つ
唾液に含まれる抗菌成分は、むし歯菌や歯周病菌に有効なだけでなく、体にとって有害なウイルスや細菌などの体内への侵入を防ぎ、健康な体を守ります。
 
歯や全身の健康のために重要な働きを担う唾液ですが、残念なことに、加齢とともに唾液の分泌量は減少します。「40代半ば以降は、毎日の生活の中で唾液をふやす工夫をすることが、若さを保つ秘訣ですね」(石井先生)。そこで、唾液をふやすためのおすすめの方法を教えてもらいました。
 
●かみごたえのある食材をとる
唾液は「かむ」ことでふえます。ガムをかんだり、ナッツ類を食べたり、朝食のヨーグルトに刻んだリンゴを入れるなど、かみごたえのある食材を積極的にとりいれて、唾液の分泌を促しましょう。
 
●スマホ操作を続けたら目線を上げる
うつむき加減の姿勢でスマホ画面を見続けていると、唾液を分泌する「唾液腺」が圧迫され、唾液が出にくくなります。スマホを10分見たら、背筋を伸ばして、床と平行になる高さまで目線を上げ、1分間深呼吸をしましょう。唾液腺が圧迫から解放され、唾液が出やすくなります。
 
●指圧で唾液線を刺激
両耳のつけ根の上部手前、骨の出っ張りのすぐ近くにある小さな窪みに両手の指の腹を当て、10秒押して離す。これを数回くり返すことで「唾液腺」が刺激され、唾液の分泌 を促進できます。簡単にできるので、作業の合間や移動中など、気づいたときに行うと効果的です。
唾液の分泌を促し、若々しい口もとを保つ

5. まとめ

顔の下半分を覆い隠すマスク生活は、想像以上に口もとに悪影響を及ぼしていたことがわかりました。新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行した今は、以前に比べてマスクをする機会が少なくなりましたが、インフルエンザや花粉症の予防なども含め、これからもマスクをつける機会はあります。
 
そういうときは、意識的に口を動かして、唾液の分泌を促す工夫したいものですね。今回、紹介した顔トレなどは、マスクの下でもできる簡単なものが多いので 、マスクをつけているときでも 積極的に行い、たるみがちな顔の筋肉を引き上げましょう!


監修:石井さとこ先生


石井さとこ ※写真下
歯科医師。口もと美容スペシャリスト。ホワイトホワイト恵比寿本店 院長。歯のホワイトニングを日本で広めた第一人者。歯と体を美しく保つための食事や、歯が美しく見える口もとメイクのアドバイスなどに定評がある。著書に『マスクしたまま30秒!!  マスク老け撃退顔トレ』(集英社 )や『美しい口もと』(ワニブックス)など。

 
 
 
 
 
まとめ
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい人への介護やサポートをする、ケアラーのためのプラットフォームです。 MySCUE(マイスキュー)は、高齢化先進国と言われる日本が、誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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