1. 空き家を放置していると、どのような問題が起こる?
総務省の「住宅・土地統計調査」(
平成 30 年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(総務省))によると、国内における空き家の数は約850万戸となっており、そのうち今後、賃貸や売却などに活用する予定のない空き家は40%以上を占めています。また、活用予定のない空き家の中では、木造の一戸建てが多くみられる点も特徴の一つです。空き家の数については20年前に比べると、1.5倍に増加しており、今後も増加していくことが予想されます。
実家を空き家のまま放置しておくことで、さまざまな問題が発生することが懸念されています。代表的な問題としては、以下のものが挙げられます。
●景観の悪化
家は住まないと傷むのが早いと言われるとおり、誰も住んでいない家は構造物が朽ちるススピードが早くなります。外壁や屋根など、風雨にさらされている箇所はもちろん、室内の床などももろくなってしまいます。
そうなると、ちょっとした地震などで崩壊してしまう可能性があるほか、自然劣化で突然、外壁などが崩れることも考えられます。一部が崩れるだけならいいのですが、崩れた場所から五月雨式に倒壊してしまうと、隣接した家を傷つけてしまう恐れもありますし、たまたま近くを通っていた人に危害を加える結果にもなりかねません。
家や人を傷つけてしまうと、場合によっては損害賠償の対象になりますし、個人賠償責任保険に加入していなかった場合、賠償額は実費負担になってしまう点にも気をつけておきましょう。さらに一部が朽ちたままの家を放置しておくと、街の景観を損ねることにもつながります。最近では、空き家に対する放火のリスクも高まっており、無視できない問題となっています。
●衛生面の悪化
空き家を放置しておくことによる、衛生面の悪化も問題視されています。虫が発生しやすくなるほか、野良猫などが住みつく可能性も考えられます。
また、ゴミを不法に投棄する人が増え、それを片付ける人もいないことから、ゴミ屋敷となってしまう可能性も否定できません。ゴミは悪臭を放つ原因になるため、近隣の住民の方に迷惑をかける結果になります。
近隣の人に迷惑をかけるだけに留まらず、最終的に行政指導が行われることになれば、自分で問題解決に向け、家の掃除や今後の再発防止策について対処しなければなりません。
●犯罪の誘発
誰も住んでいないことが明らかな家は、犯罪に利用されるケースも懸念されます。長く空き家になっている家ほど犯罪の巣窟になりやすく、重大な事件に発展する可能性も考えられます。
犯罪に発展しないまでも、不法侵入を誘引するなど、治安の悪化を招きかねません。治安の悪化はその地域のイメージを損なうことにもつながるため、絶対に避けなければならない問題だと意識しておきましょう。
2. 行政が空き家問題に関与する「空家等対策の推進に関する特別措置法」とは?
空き家の増加については政府も問題視しており、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されることになりました。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」とは、以下の状態に該当する空き家について、「特定空家等」に指定し、特定空家等に指定された場合、行政側が持ち主に対して除却や修繕などの措置を執るように指導や勧告が可能になるというものです。
・倒壊など著しく保安上危険となる恐れのある状態
・著しく衛生上からみて有害となる恐れのある状態
・持ち主による適切な管理委が行われていないことによって著しく景観を損ねている状態
・そのほか周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態
特定空家等に指定されると、まず助言または指導が行われます。従わなかった場合には勧告を受けることになり、固定資産税等の住宅用地特例除外になってしまいます。固定資産税等の住宅用地特例が受けられないと、住宅の固定資産税が最大6倍にもなってしまうため、指導が入った際にはできるだけ早く対応するようにしましょう。
さらに、勧告に従わなかった場合には命令が下り、50万円以下の過料の対象になります。最終的には、行政による代執行が行われ、その際にかかった解体費用などは持ち主が負担しなければなりません。
3. 貸す、売る……さまざまな実家の活用法
実家を空き家にしておくことによる問題点が多くあることについては理解しているものの、実際どうすればいいのか悩んでおられる方も多いのではないでしょうか。ここからは、空き家となっている実家の対策方法について紹介します。
●賃貸に出す
定期的に修繕を行っているなど、簡単にリフォームを行うことで快適に住める状態なら、第三者に賃貸に出すという方法もあります。
賃貸に出すことで家賃収入が得られるため、固定資産税を払っても利益が出るでしょう。ただし、賃貸物件の管理は物件の所有者にあるため、付属物の修繕などの対応は行わなければなりません。もちろん定期的な修繕も必要です。
また、賃貸に出す以上、入居者を募集するなどの手間がかかります。そのため、賃貸を考えるなら、入居者募集や入居者審査をはじめ、物件の管理なども行ってくれる賃貸管理会社と契約を結び、管理業務全般を任せるとよいでしょう。
建物が古い場合は建物を壊して更地にし、土地を活用することもできます。周辺環境に応じて、コインパーキングやトランクルームなどへの活用を考えてみましょう。
●売却する
最終的に住むつもりがなければ、程度のいい状態のうちに売却する方法もあります。不動産の売却についても、購入希望者を募る必要があるため、不動産会社に依頼したほうがよいでしょう。
ただ、時期や立地によっては思ったとおりの価格で売却できないケースもあります。また、売却する際には、事前に相続登記を済ませておくことを忘れないようにしましょう。
4. 売り手と買い手を仲介してくれる自治体運営の空き家バンクを活用してみよう!
自治体では、空き家の活用のために「空き家バンク」を運営しています。空き家バンクでは、空き家を売りたい人と買いたい人を結びつける仕組みで、不動産会社に依頼するよりも早く買い手が見つかる可能性があります。
1や2で説明したように、空き家を所有していると、住んでいないにもかかわらず固定資産税や修繕費用が発生し、家計を圧迫することにもつながりかねません。
5. まとめ
誰も住んでいない実家を、そのまま空き家にしておくことのデメリット、そして空き家の活用法をお伝えしました。実家の近隣の人たちに迷惑をかけないためにも、どのような活用方法がよいのかを早めに考え、行動に移すようにしましょう。
6. 監修者プロフィール
新井智美(あらい・ともみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
福岡大学法学部法律学科卒業。 2006年11月、世界共通水準のFP資格であるCFP®認定を受けると同時に、国家資格である1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。 2017年10月に独立し、コンサルタントとしての個人向け相談や、資産運用などにまつわるセミナー講師のほか、大手金融メディアへの執筆および監修に携わる。