介護保険のサービスは1〜3割の自己負担額を支払えば、無制限に使えるわけではありません。要介護度によって、月の限度額が決まっており、これを超えた分は全額自己負担となります。
今回は、介護保険サービスの区分支給限度基準額について解説します。
介護保険を使って介護サービスを受ける場合、利用者は所得に応じてサービス費用の1〜3割を自己負担します。
しかし、この自己負担額を払えば、受けたいサービスをいくらでも利用できるわけではありません。
要介護度別に、介護保険から給付される1ヶ月あたりの上限額(区分支給限度基準額)が決められており、その範囲内であれば1〜3割の自己負担でサービスが利用できます。
介護サービスを利用する際の1ヶ月あたりの区分支給限度基準額は以下の通りです。
1ヶ月の支給限度基準額 (居宅サービスなど)
※1単位=10円で計算
●1ヶ月の支給限度基準額
要介護度 区分支給限度基準額 負担限度額(1割)負担限度額(2割)負担限度額(3割)
・要支援1 5万320円(5,032単位) 5,032円 1万64円 1万5,096円
・要支援2 10万5310円(10,531単位)1万531円 2万1,062円 3万1,593円
・要介護3 27万480円(27,048単位) 2万7,048円 5万4,096円 8万1,144円
・要介護4 30万9380円(30,938単位)3万938円 6万1,876円 9万2,814円
・要介護5 36万2170円(36,217単位)3万6,217円 7万2,434円 10万8,651円
上記の表の通り、要介護度が高くなるほど、支給限度額も大きくなります。つまり、介護度が高い人ほど多くのサービスが利用できる仕組みになっています。ただし、介護度が高いほど利用料が高くなるサービスもあるため、サービスの利用が増えれば、その分自己負担額も増えることは覚えておきましょう。
なお、区分支給限度基準額は「単位」で定められており、1単位あたりの金額は利用するサービスの種類や地域によって差があります。
区分支給限度基準額を超えて介護サービスを利用した場合、超過した分は全額自己負担となります。1〜3割の自己負担で済むはずの費用が、全額自己負担となるため利用者にとっては大きな負担となります。
そのため、ケアプランを作成する際には、1ヶ月の支給限度額を把握し、それに基づいてケアプランを作成しましょう。ケアプランの作成を依頼するケアマネジャーに、予算の上限額を伝えておくことも大切です。
また、限度額を超える場合は、利用者の要介護度が現在の状況に合っていない可能性もあるため、ケアマネジャーに相談し、要介護度の変更(区分変更)を検討しましょう。再度認定を受けることで介護度が上がり、より多くのサービスを受けられる可能性があります。
なお、介護保険から給付される特定福祉用具購入費と住宅改修費は、区分支給限度基準額の枠外で利用可能です。要介護度にかかわらず、それぞれで上限額が決められており、特定福祉用具購入費は年額10万円、住宅改修費は20万円までとなっています。
区分支給限度基準額には、対象となるサービスと対象とならないサービスがあります。
◾️対象サービス
1. 訪問介護
2. 訪問入浴介護
3. 訪問看護
4. 訪問リハビリテーション
5. 通所介護
6. 通所リハビリテーション
7. 福祉用具貸与
8. 短期入所生活介護
9. 短期入所療養介護
10.特定施設入所者生活介護(短期利用に限る)
11.定期巡回・随時対応サービス
12.夜間対応型訪問介護
13.認知症対応型通所介護
14.小規模多機能型居宅介護
15.認知症対応型共同生活介護(短期利用に限る)
16.地域密着型特定施設入所者生活介護(短期利用に限る)
17.看護小規模多機能型居宅介護
◾️対象外のサービス
1. 居宅療養管理指導
2. 特定施設入所者生活介護(外部サービス利用型を除く)(短期利用を除く)
3. グループホーム(認知症対応型共同生活介護)(短期利用を除く)
4. 地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用を除く)
5. 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特別養護老人ホーム)
6. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
7. 介護老人保健施設
8. 介護医療院
9. 福祉用具購入費・住宅改修費
特別養護老人ホームなどの介護保険施設やグループホーム、特定施設入居者生活介護などのサービスは、1日単位で利用料が定められているので区分支給限度基準額は適用されません。
介護保険でサービスを利用する際の1ヶ月あたりの支給限度額は、要介護度によって決まっています。この限度額を超えてサービスを利用すると、超過分は全額自己負担となるため利用者にとっては大きな負担となります。
介護サービスを利用する際には、1ヶ月の支給限度額がいくらかを把握し、それに基づいて、ケアプランを作成しましょう。
画像著作者:Freepik ※トップ画面
著者:中谷 ミホ
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級