外出が難しくてなかなか髪をカットできない。美容院に行くたびに家族が付き添うのは大変……。今回は、そんな悩みを解決するサービス「訪問理美容」を紹介します。気持ちまで若返るというサービスの内容とは? 利用をサポートする助成制度も要チェックです。訪問理美容サービス「KamiBito 」を運営する、日本介護システム株式会社 代表取締役の大友俊雄さんに話を伺いました。
訪問理美容サービスは、高齢、病気、けが、障がい、出産前後などの理由で外出が困難になり、美容院、理容店に行けない人を対象にヘアカットなどを行います。美容師法、理容師法という法律の下で提供され、健常者や介護者は対象範囲に該当しません。訪問先は個人宅、介護施設、病院、障がい者施設などが対象となります。一般的な理美容院と同等のサービスを提供できますが、訪問先によっては設備面の都合で提供が難しいサービスもあります。
費用はサービスを提供する事業者によって異なりますが、「KamiBito」では5,000~6,000円で利用でき、別途出張費がかかります。カットに要する時間は20分程度で、片付けなども含めると40分程度が見込まれます。施術者は美容師、理容師の資格を 持ち、「KamiBito」では併せて介護職員初任者研修や認知症サポーター養成講座を修了しており、 介護・福祉の精神を持ち合わせていることを重視しています 。
地域包括ケアシステムという言葉を聞いたことはありますか? 住み慣れた地域で最後まで自分らしく暮らせるように、住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体的に提供される体制のことです。団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は介護需要の増加が見込まれ、地域包括ケアシステムの構築が急がれています。介護者や被介護者から、誰かの助けを借りるのは抵抗があるという言葉を度々耳にします。地域包括ケアシステムが目指すのは、必要なサービスを積極的に活用し、高齢者とその家族が自分らしく生き生きと暮らせる仕組み作りです。理美容は決してぜいたくなサービスではありません。外出が困難でも生き生きと健やかに暮らすために必要な選択肢として認識され、気兼ねなく利用してほしいと思います。
訪問理美容ではカット、パーマ、カラー&リタッチ、シャンプー、トリートメント、お顔の手入れ 、ウィッグメンテナンスなど幅広いサービスを提供しています。施術の流れは、一般的な理美容院と同じくカウンセリングで希望の髪型などを聞いてから施術を行い、片付け、会計に進みます。「KamiBito」では移動式シャンプー機を使用し、自宅や介護施設にいながら理美容院に行ったようなスッキリ感を味わえます。お顔のお手入れは炭酸パックや産毛をケアする顔そりを行い、施術後は肌がツヤツヤになり、目に見えて若返るそうです。
「KamiBitoではスタッフの指名が可能です。2、3カ月に一度の頻度で利用される方が多く、慣れてくるとお化粧をしてスタッフの到着を心待ちにしている利用者様がいらっしゃいます。髪や顔のケアはもちろん、ご家族以外の第三者とコミュニケーションを取ることも生活の彩りにつながっていると実感しています。また、利用者様には自宅療養している末期がんの方もいらっしゃいます。お見舞いに来る方にキレイな姿を見せたいと、ウィッグメンテナンスやカラーをオーダーされる方もいらっしゃることから、女性が美しくいたいという思いは最後まで変わらないのだと実感しています」(大友俊雄さん)
高齢者の身体状況は、気管切開をしてチューブを挿入していたり、椅子に真っ直ぐ座り続けるのが難しかったりとさまざまですが、多様なケースに対応できるそうです。施術者は「苦しくないですか」と声を掛け、表情を観察して快 ・不快を読み取りながら快適に施術を受けられるように配慮していると言います。
「トイレを我慢してしまう利用者様もいるので、『お手洗いは大丈夫ですか?』といった声掛けもしています。休憩を挟んで行うこともできるので、気になることを遠慮なく伝えてもらい 、快適な時間を過ごしていただきたいと思います」(大友俊雄さん)
訪問理美容は介護保険適用外のサービスですが、自治体によっては訪問理美容サービスを受ける際に、費用の一部を助成して経済的な負担の軽減を図っています。その地域に住民票があり在宅生活をしていること、要介護認定を受けていることなど、利用条件は自治体ごとに異なります。自治体に登録している事業者に依頼してサービスを受ける形が多いのですが、助成される金額や利用できる回数も自治体によってさまざまです。まずはお住まいの自治体のホームページで助成の有無を確認し、助成制度があり利用を希望する場合は、申請書を書いて自治体の窓口に提出してください。
生活が単調になり、人に会って話をする機会が減っている被介護者が訪問理美容を利用すると、どんな変化が生まれると思いますか? 髪がキレイになり、身だしなみが整うと不思議と気持ちが前向きになり、料理を作ってみよう、家にいながらできる趣味を始めてみようという意欲が高まり、人間らしい生活を送ることへの意欲の高まり が期待できます。
独居の高齢者は何日も人と話をしていないことがあり、施術者と定期的にコミュニケーションを取ることで社会とのつながりを自覚でき、「自分は取り残されていない」という安心感を持つことができます。
介護者側のメリットとしては、理美容院に付き添う時間と労力が軽減され、出掛けずに済む便利さが魅力的だという声が寄せられています。付き添いには半日近くを費やすこともあり、仕事をしながら介護をしている場合、こうした労力の積み重ねが介護離職を招きかねません。最近では介護離職の防止に、訪問理美容サービスの利用を福利厚生に組み込む企業もあるので、勤務先の福利厚生をチェックしてみましょう。
「家族間で問題を全て解決しようとせず、外部のサービスを利用するのは、諦めを減らし生きがいのある生活を維持する一つの選択肢になるはずです。要介護になる前からご自身の生活圏内にどのような高齢者向けサービスがあるのかリサーチしておくと、いざというときに役立つと思います」(大友俊雄さん)
外出が困難になったとき、街の理美容院と同等のサービスを自宅や介護施設で受けられる「訪問理美容サービス」。介護者の理美容院に付き添う負担を減らし、被介護者にとってはキレイになって心が弾み、生活意欲が高まるというメリットがあります。自治体の助成制度もチェックして、ぜひ利用してみてはいかがですか?
監修:大友 俊雄さん
大友俊雄(おおとも・としお ※写真下)
日本介護システム株式会社 代表取締役
1977年生まれ。父親が事業を営んでいた影響で幼少期から起業家になることを志す。専門学校を卒業後、家業の関連会社に従事した後、フランチャイズ専門の経営コンサルティング会社に就職。約10年程、経営に関する経験を身に付け、2012年7月に日本介護システム株式会社を開業。超高齢社会をハッピーに♪を理念におき、介護保険や医療保険では対応が出来ない高齢者や障がい者のお困りごと、いわゆる『生活支援サービス』を「介護保険外」(自費)で提供。食事や旅行、理美容や終活にいたるまで、あらゆるサービスを提供し、現在、日本全国に対応エリアを拡大中!
https://j-kaigo-system.jp/
著者:MySCUE編集部
MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい人への介護やサポートをする、ケアラーのためのプラットフォームです。 MySCUE(マイスキュー)は、高齢化先進国と言われる日本が、誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。