「身体がやせてきた」「疲れやすくなった」「つまずきやすくなった」
ご家族に見られるこのような変化は「サルコペニア」が原因かもしれません。
今回はサルコペニアの概要をお伝えし、原因や症状、チェック方法や予防のポイントを紹介します。
サルコペニアとは、筋肉が衰え、筋力や身体機能が低下している状態のことを指します。この状態になると、立つ、歩くといった日常生活に必要な基本的動作が難しくなり、転倒による骨折や病気にかかりやすくなるリスクが高まります。
また、サルコペニアを放置すると、要介護状態や寝たきり状態になる可能性があり、死亡リスクが高くなることもわかっています。
とくに、肥満の方がサルコペニアになると「サルコペニア肥満」と呼ばれ、より注意が必要です。高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まり、脳血管疾患や心筋梗塞などの病気につながる可能性があります。
サルコペニアの原因は「一次性サルコペニア」と「二次性サルコペニア」の2つに分けられます。
■一次性サルコペニア
加齢が原因で筋肉が衰える状態のことです。
人間の体内では、筋肉をつくる働き(合成)と壊す働き(分解)が起きています。若い頃は筋肉の合成が盛んですが、高齢になると分解されやすくなるため、徐々に筋肉がやせていきます。
■二次性サルコペニア
加齢以外の要因で筋肉が減少する状態を指します。主な原因は以下の3つです。
①活動量の低下
立ったり歩いたりする機会が少なく、座っている時間が長い人がなりやすいとされています。入院などで長期間の安静を強いられることも要因となります。
②けがや病気
けがや病気による身体への負担、感染症や手術後の影響などが関係します。がんや内臓の病気で食欲が低下して栄養不良になることも筋肉減少の原因となります。
③栄養不足
高齢になると食が細くなり、脂質の多い食事を避ける傾向があります。その結果、たんぱく質が不足しがちになり、筋肉量が減少しやすくなります。
サルコペニアの主な症状は以下の3つです。
■力が入りにくくなる
全身の筋肉が衰え、以下のような症状が表れます。
・つまずきや転倒が増える
・立ったり歩いたりすると、すぐに疲れる
・手すりなしでの階段の上り下りが難しい
・ペットボトルのふたが開けにくくなる
■歩くのが遅くなる
横断歩道を青信号のうちに渡りきれなくなったり、家族や友人との外出時に、周りのペースについていくのが難しくなります。歩くことに自信をなくし、外出を避けるようになる人もいます。
■病気にかかりやすくなる
免疫力や代謝が低下するため、かぜやそのほかの感染症にかかりやすくなります。
サルコペニアのセルフチェックには、道具や機器を使わずに簡便に行える「指輪っかテスト」があります。ふくらはぎの太さから筋肉のやせ具合を判断するチェック方法です。手順は以下の通りです。
①椅子に座り、ひざの角度を90度に曲げる。
②両手の親指と人差し指で輪っかをつくる。
③利き足と反対のふくらはぎの一番太いところを輪っかで囲む。
(※強く締め付けず、軽く添える程度で)
このとき、輪っかでふくらはぎをぴったり囲めたり、すき間ができたりする場合は、サルコペニアになる可能性が高いといわれています。
なお、より詳細にチェックしてもらいたい場合は、医療機関に受診して専門的に診てもらうことをおすすめします。
内科や整形外科には「サルコペニア外来」や「フレイル外来」などの専門外来を開設している場合がありますが、その名称は医療機関によって異なります。どの診療科に行けばよいかわからない場合は、かかりつけ医に相談して適切な診療科を紹介してもらいましょう。
写真:著作者:DC Studio/出典:Freepik
サルコペニアを予防するポイントは「運動」と「食事」の2つです。生活習慣病がある方は、病気の改善にも取り組みましょう。
■運動
筋力トレーニングと有酸素運動を行います。
【筋力トレーニング】
・スクワット
・もも上げ
・椅子からの立ち座り
・立って踵の上げ下げ
・腹筋
・腕立て伏せなど
10~15回できる程度の負荷で、1~4セットを週2〜3回行います。まずは無理のない範囲でできそうなものを1~2種目選んで始めると良いでしょう。
【有酸素運動】
・水泳
・ウォーキング
・サイクリングなど
1日30〜60分を目安に、2日に1回程度を目標に行いましょう。
運動強度は「かなり楽〜ややきつい」と感じる程度が目安ですが、まずはウォーキングから始めると良いでしょう。
筋肉が衰えると外出の機会が減り、人との交流も少なくなります。運動を続けることで家族や友人と接する機会をもち、社会とのつながりを保つことも重要です。
■食事
筋肉をつくるたんぱく質と、筋肉のやせを抑えるビタミンDを摂取しましょう。
・たんぱく質:1日に体重1kgあたり1.2~1.5g以上を摂取します(体重60kgで72~90g)。
・ビタミンD:1日8.5μgを目安に摂取します。
たんぱく質は卵や大豆、肉類などに含まれています。1日3回の食事で分けて摂取することが理想的です。
ビタミンDは鮭やいわしに多く含まれています。特に鮭は1切れで1日の必要量を摂取できるため、おすすめです。また、きのこや卵なども積極的に食べましょう。
写真:著作者:freepik
著者:鈴木康峻
2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。
得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど
保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級