ロコモとは、骨や関節、筋肉などの運動器が衰えて、立つ・歩くなどの機能が低下した状態のことを指します。主な原因は、「加齢や生活習慣による運動器の機能低下」と「運動器疾患(※1)の発症」です。ロコモによって歩くことが困難になると、介護が必要になったり、寝たきりになったりすることも。そこで、ロコモの名医として知られる渡會公治先生に、ロコモの予防や回復に役立つ体操を教えていただきます。手軽にできるものばかりなので、今日から日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?

 

※1変形性関節症、変形性腰椎症、骨粗鬆症、関節リウマチなどが挙げられます。

1. 上半身全体を使う!背骨ほぐし肘まる体操

「肘先で空中に円を描くように腕を動かす」体操です。ポイントは、動いている部分を意識しながら、上半身全体を使ってめいっぱい大きく動かすこと。継続して行うと、正しい姿勢が身につくだけでなく、肩こりや首の痛みの改善にも効果的です。

 

 

両脚を肩幅に広げて立ち、ひざは軽くゆるめます。右手で肩の中央の服(イラスト参照)をつかみ、左手は背骨の上にあてます。その際、服から手を離すと肘しか動かなくなるので注意しましょう。

なお、左手を背骨の上にあてながら行うと、全身運動であることが実感しやすくなります。また、背骨の動きを意識することも大事なポイントです。

 

まずは、後ろ回しから始めます。背骨を曲げて、できるだけ肘を突き出した姿勢をとってください。

 

腕を大きく回しながら、背骨を左に曲げ、肘を上に突き出します。

 

 

 

胸を張り、肘を後ろに突き出します。体ごと後ろを振り向くイメージで行いましょう。

 

背骨を右下に曲げ、肘を下に突き出します。

 

右側の後ろ回しをゆっくり4〜5回行ったら、次は左側を4〜5回。後ろ回しが終わったら、前回しも同様に行いましょう。1日3セットを目安に実践してみてください。

2. 背骨をほぐして心身をリラックス! スワイショウ

スワイショウ(甩手)」というのは、中国伝統の体操のこと。この言葉には「手を放り投げる」という意味があるそうです。立った姿勢で腕をブラブラと振るのがポイントですが、続けていくうちに背骨がほぐれ、体のきしみがとれていくのがわかるはず。無心で腕を振り続けることで、心身のリラックスにもつながります。


腕の振り方は、以下の3つのうち1種類だけでもOKです。少なくとも5分以上は続けてください。

 

 

最初のポジション

つま先を正面に向けたら、脚を腰幅に開き、ひざをゆるめます。目線は1〜2m先を見ます。

 

パターン1 
両手を一緒に前後に振ります。最初は小さく、徐々に後ろに力を入れて、水平になるまで振りましょう。しばらく振り続けたら、徐々に振りを小さくしていき、元の姿勢に戻ります。

 

 

 

パターン2 
左右の腕を交互に前後させて振ります。最初は小さく、徐々に後ろに力を入れて、水平になるまで振りましょう。しばらく振り続けたら、徐々に振りを小さくしていき、元の姿勢に戻ります。

 

パターン3 
腕を斜め上に上げ、体をひねりながら、斜め下へ振ります。最初は小さく、徐々に大きく振りましょう。しばらく振り続けたら、徐々に振りを小さくしていき、元の姿勢に戻ります。逆側も同様に行ってください。

3. 寝たまま行う! 背骨ほぐし体操+へそのぞき体操

ロコモ予防に大切なのが、「体のつなぎめがスムーズに動く柔軟な体」です。「体ほぐし体操」を2種類紹介します。簡単に背骨をほぐせる「背骨ほぐし体操」と、骨盤と背骨を動かすことで体幹(体の軸)を鍛え、腰痛予防・改善の効果もある「へそのぞき体操」です。

 

背骨ほぐし体操、へそのぞき体操ともに、寝たまま行えるのが大きなポイント。回数の制限はありませんが、起床時や就寝前など日常生活にこまめに取り入れて1日複数回行うのがおすすめです。柔軟性はロコモ予防に欠かせない要素なので、積極的に取り入れてください。

 

 

〈背骨ほぐし体操〉
あお向けに寝てひざを立てたら、両手を合わせて肘を伸ばし、腕を上げてください。腕を上下、左右に動かしたり、円を描くように動かしたりしましょう。それに連動させて背中も大きく動かします。

両手を床につけ、立てひざにした両脚を右へゆっくり倒します。倒しきったところで数秒静止。反対側も同様に行います。

体全体でやわらかく動くことを意識して、しっかり背骨をほぐしましょう。

 

〈へそのぞき体操〉
あお向けになって、ひざを軽く曲げてください。両手をおなかの上に置き、頭を持ち上げたら、腹筋に力が入っていることを確認しながらへそのあたりを見ましょう。

両手を腰の下に入れ、腰の反りがなくなっていることを確認します(腰を床に押しつけることで、腹筋・背筋に力が入りやすくなります)。呼吸を止めずに5秒間静止したら、ゆっくり頭をおろして元の姿勢に戻ります。慣れてきたら静止時間を長くしてみましょう。

 

負荷が少なく感じる人は、両脚を上げて行ってみてください。つま先を伸ばして行うと、さらに負荷がかかります。反動はつけず、腹筋を意識しながら頭を上げていくのがポイントです。



イラスト:末続あけみ
指導・監修:渡會公治

この記事の提供元
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著者:渡會公治(わたらい・こうじ)

一般社団法人美立健康協会代表理事、帝京科学大学医学教育センター特任教授。
スポーツ医学および身体運動科学の専門家。主にスポーツ整形外科医として、スポーツ障害や高齢者のロコモティブシンドローム予防と治療に取り組む。体力や筋力を適切に評価し、トレーニングや運動量の調整を提案することで、スポーツ選手や高齢者の健康を支えている。『長生き足腰のつくり方』(アスコム)、『いますぐできるロコモ体操』(家の光協会)など著書多数。

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