物価高騰が家計を圧迫する今、日々の生活費を見直すことがとても重要です。中でも水道代は、電気代やガス代と同様に毎月かかる固定費の一つですが、工夫次第で無理なく節約することができます。この記事では、家庭で実践できる水道代の節約テクニックを、お風呂・トイレ・キッチン・洗濯の場面ごとに、「節約は、無理をしないで楽しく!」をモットーに快適な生活と節約を両立する節約アドバイザーの和田由貴さんが、スマートで賢い節約生活を提案します。

1. まず知っておきたい!水道代が多くかかる場所

バスルーム界隈

水道代を効率的に節約するためには、まず家庭で水が最も多く使われる場所を把握することが重要です。東京都水道局の調査によると、家庭での水道使用量のうち約4割を「お風呂」が占めています。湯船にお湯をためたり、シャワーを使ったりすることから、その水量の多さは納得がいくでしょう。特にシニアの1人暮らしなどで、炊事や洗濯を頻繁にしない場合などは、炊事や洗濯の割合が減り、さらにお風呂による使用量の割合が増加する傾向にあります。

2番目に水の消費が多いのは「トイレ」です。トイレの洗浄レバー「大」を1回流すと、平均8L(古いタイプの場合は10L以上)もの水が使われます。1日に数回トイレを利用することを考えると、想像以上に多くの水を使っている可能性があります。日常生活の中で水を使う機会は多岐にわたりますが、これらの使用量が多い場面を知ることで、節約のポイントが見えてきます。

2. 節約の基本は「小まめに水を止める」「お湯の使い過ぎに注意」

食器洗い

水道代を節約する上で最も基本的な鉄則は、水を使わない時は小まめに止めることです。蛇口を最大まで開いたままにすると、1分間で約12Lもの水が流れてしまいます。歯磨き中、お皿洗い中、髪を洗っている間などに水を出しっ放しにすることは、かなりの無駄遣いにつながるため、水を小まめに止める習慣を付けるだけでも大きな節約になります。

また、「お湯の使い過ぎ」に注意することも非常に重要です。実はお湯の価格は水に比べて約3倍高いといわれています。これは、お湯を沸かすためにガス代がかかるためです。水の使用量を気にしていても、その水がお湯として使われている場合、「水道代」だけでなく「ガス代」にも影響が出てしまいます。節約を目的とするならば、お湯の使用量を減らす「節湯(せつゆ)」を意識することがポイントになります。

キッチンや洗面所などに多い混合水栓(レバーの向きで水とお湯が切り替わるタイプの蛇口)は、真ん中にしていてもぬるいお湯が出ている場合があり、意図せずコストの高いお湯を使っている可能性があるため注意が必要です。

3. 【実践編】お風呂での節約ポイント

風呂場のシャワー

ご家庭で最も水の使用量が多いお風呂での節水は、水道光熱費全体の節約に直結します。

・シャワーの使用時間を短くする
シャワーを毎日1分間短縮するだけで、年間約1,140円の水道代と約2,070円のガス代、合計で年間約3,210円もの節約につながります。洗い流さない間はシャワーを出しっ放しにせず、小まめに止める習慣を付けましょう。

・「節水シャワーヘッド」への交換
スーパーやホームセンター、ネット通販で手軽に購入できる節水シャワーヘッドは、水圧を保ちつつ水量を減らせるため効果的です。特に、ヘッドの近くに止水ボタンがあるタイプを選ぶと、小まめに水を止めやすくなりおすすめです。2,000円程度のシャワーヘッドでも、水量を1/3にカットできるものもあります。

・「浴槽」と「シャワー」の正しい使い分け
シャワーを最大の水量で16分程度流し続けると、一般的な浴槽1杯分(200L)のお湯が流れます。1人暮らしで16分より短い時間しかシャワーを使わず、湯船に漬からない場合はシャワーのみの方が節約になる可能性があります。一方、家族がいてシャワーを使う時間の合計が16分を上回るようであれば、浴槽にお湯をためて、髪を洗う時はシャワー、体を洗う時は浴槽のお湯といったように使い分ける方が節約につながります。

・浴槽のお湯は「人が入ってちょうどいい量」に調整する
人が入った時にあふれるほどお湯をためるのはもったいないです。意外に見落としがちですが、人が入っていない状態では「少ない」と感じる程度のお湯の量でも十分な場合が多いものです。入る人数によって湯量を調整したり、設定湯量を減らしたりすることも節約につながります。40℃の湯量を20L減らすだけでも、年間約5,000円の節約になるといわれています(ガス代含む)。

・追いだきはできるだけ控える
お風呂が冷めたからといって毎日追いだきをしていると、年間約6,190円かかる場合があります。浴槽のふたをしっかり閉めたり、アルミシートなどを利用して保温効果を高めたりすると良いでしょう。できる限り間隔を空けずに続けて入浴し、お湯が温かいうちに済ませるようにしましょう。

4. 【実践編】トイレでの節約ポイント

トイレのタンク

 

トイレはお湯を使わないため、ガス代の心配はありませんが、水道代の節約ポイントはあります。

・洗浄レバーの「大」「小」を“正しく”使い分ける
洗浄レバーの「大」と「小」は、流れる水の量が異なります。節水のためには「小」を使うのが望ましいですが、判断基準は「液体以外を流すかどうか」です。つまり、トイレットペーパーを流す際は、詰まりのリスクを避けるためにも基本的に「大」を使用する必要があります。節約を意識し過ぎるあまり、詰まりによる修理代が発生しては本末転倒です。

・「節水タイプ」トイレの導入を検討する
もし、家を建て替えたり、住み替えたりするなどの大きな機会があれば、節水タイプのトイレを選ぶことを検討しましょう。古いトイレは1回で10L以上もの水を流しますが、最新の節水型は4L程度の水量で済むものもあります。トイレ自体の性能によって、日常的に節約できるようになります。

 

5. 【実践編】キッチンでの節約ポイント

皿洗い

キッチンで消費される水のほとんどは、食器洗いに使われています。特に油汚れのひどい食器にはお湯を使いがちですが、ここで節水とお湯の使用量を意識すると大きな節約につながります。

・「すすぎ」を意識して使う水を最小限に
食器洗いでは「すすぎ」に最も水を使うため、洗剤の使用量を減らし、少ない洗剤でサッと洗うことが節水につながります。食器を洗う時は、蛇口の設定を“ストレート”より“シャワー”にした方が、広範囲に水が当たり洗いやすくなるだけでなく、出てくる水の量が少なくなるので節水につながります。

・食器の重ね方に注意する
食事で使ったお皿を重ねないよう意識しましょう。例えば、油汚れの付いたハンバーグ皿に茶わんを重ねてしまうと、茶わんの底(裏)に油汚れが移り、洗剤や水の量が増えてしまうことがあります。油汚れのひどい器と水を飲んだだけのコップなどをまとめて洗うと、たくさん洗剤を使って、すすぐ水の量も増えてしまうため、汚れの少ないものから順に洗うと節約になります。

・ゆで汁を再利用する
うどんやパスタのゆで汁には溶け出したでんぷん質が油汚れを吸着する作用があります。ゆで汁を取っておいて油汚れのひどい食器を漬けておくと、ある程度の汚れを落とすことができ、その後のすすぎに使う水を減らせます。

・「食器洗い乾燥機」の導入を検討する
家族が多い家庭で洗い物の量が多い場合は、食器洗い乾燥機の導入もおすすめです。人の手で洗うと、つい水を出しっ放しにしたり、すすぎに時間がかかったりして水道代がかかりやすいですが、食洗機なら使う水の量は一定で、水を流しっ放しにすることがないからです。手洗いと比較して、食洗機は年間で約6,470円の水道・ガス代節約につながるというデータがあります。食洗機自体は3万円程度で購入できるものもあり、4~5年ほどで元が取れる計算になります。食洗機は少ない湯量で効率よく水を循環させて洗浄するため、手洗いよりもお得と言えます。

6. 【実践編】洗濯の節約ポイント

洗濯

洗濯は、基本的にお湯を使う場面が少ないため、過度に神経質になる必要はないといわれます。しかし、方法を間違えるとかえってコストがかかることもあるので注意が必要です。

・お風呂の残り湯の再利用は「洗い」のみにする
最近の洗濯機にはお風呂の残り湯をくみ取るポンプが付いていることが多く、手軽に再利用できます。残り湯の再利用は水道代の節約に効果がありますが、「洗い」でのみ使い、「すすぎ」ではきれいな水道水を使うようにしましょう。洗濯洗剤には汚れの再付着を防ぐ成分が含まれているため「洗い」では問題ありませんが、「すすぎ」で残り湯を使うと服に汚れが付着する可能性があるためです。前夜のうちに残り湯に少量の洗濯洗剤を入れておくと、翌朝には雑菌の繁殖を抑える裏技もあります。

・「小まめな洗濯」より「まとめ洗い」を意識する
節約の観点から、洗濯機は容量の「8割」くらいの洗濯物を入れるのが最も効率的です。洗濯物が少ないご家庭では、ある程度の量がたまってからまとめて洗濯する方が節約になります。

・洗濯機の「すすぎ回数」設定を見直す
最近の濃縮タイプの液体洗剤の多くは、すすぎ1回で十分です。洗濯機のおまかせモードの標準設定が「すすぎ2回」になっている場合、設定を1回に変更することで、1回分のすすぎの水を節約できます。

7. 水道代をさらに抑える!おすすめ節水グッズ

水道

日々の使い方を変えずに簡単に節水できる便利なグッズもあります。これらはホームセンターや100円ショップでも手軽に手に入ります。

・「泡沫アダプター」
蛇口に取り付けることで水に細かな泡が含まれ、水はねしにくくなるアダプターです。空気を含むことで出る水の量が減り、節水につながります。洗い心地が柔らかくなるだけでなく、水はねが少ないためシンク周りの掃除が楽になるというメリットもあります。数百円程度で購入でき、既存の蛇口に簡単に取り付けられるため、賃貸物件でも利用可能です。

・「キッチンスクレーパー」
シリコーンやプラスチック製のヘラのような形状で、食器や調理器具に付いた油汚れをあらかじめ軽く落とすためのキッチングッズです。これにより、その後のすすぎ時間を短縮できます。100円ショップでも手軽に購入できます。不要な布や紙で油汚れを拭き取る方法もありますが、スクレーパーならごみも出ないので、環境にも優しいグッズと言えます。

8. まとめ

水道代節約のイメージ

水道代の節約は、派手なテクニックで一気に大幅な効果を出すというよりは、日々の心がけを習慣化することで着実に成果を積み重ねていくものです。小まめに水を止めることなど、最初は意識的に行う必要があるかもしれません。しかし、毎日続けることで自然と習慣になり、無理なく節約を続けられるようになります。1日の節約額は少なくても、それが積み重なることで、年間を通して大きな節約につながるでしょう。ご紹介した節水術はすぐに実践できるものばかりですので、快適な生活を保ちながら賢く水道代を節約し、家計の負担を軽減するためにも、無理なくできることからぜひ取り組んでみてください。




構成:研友企画出版


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著者:和田由貴(わだ・ゆうき)

消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザー、食生活アドバイザーなど、幅広く暮らしや家事の専門家として多方面で活動。また、環境カウンセラーや省エネ・脱炭素エキスパートでもあり、2007年には環境大臣より「容器包装廃棄物排出抑制推進員(3R推進マイスター)」に委嘱されるなど、環境問題にも精通する。私生活では2人の子を持つ母で現役の節約主婦でもあり、日常生活に密着したアドバイスを得意とする。「節約は、無理をしないで楽しく!」がモットーで、耐える節約ではなく快適と節約を両立したスマートで賢い節約生活を提唱している。専門分野は食費・光熱費・交通費・レジャー費など生活全般の節約、エコライフ、買い物、100円ショップ、その他消費生活アドバイザーの立場から製品安全や消費者問題、環境教育などにも携わる。
https://wada-yuki.com/profile1/

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