物価の上昇が家計に重くのしかかり、日々の生活費のやりくりに悩む家庭が増えています。中でも食費は、毎日のことだからこそ、工夫次第で大きな差が生まれるものです。「少しでも家計の負担を軽くしたい」「節約しながら、我慢のない食生活を送りたい」と考えるケアラーやシニア世代の皆さまに向けて、食費を抑える具体的な工夫をご紹介します。特に重要なのは、安いものを買うこと以上に、「食品ロスをなくすこと」です。その理由と、今日から始められる対策について、節約アドバイザーの和田由貴さんが解説します。

1. 知っていますか?あなたの家の食品ロス、実は年間6万円!

冷蔵庫の野菜室

食費を節約したいと思ったとき、「いかに安く買い物をするか?」に意識が向きがちですが、本当に重要なのは買った食材をムダにしないことです。たとえ特売品で安く買っても、使い切れずに捨ててしまっては、お金を捨てているのと同じです。

ある調査によると、平均的な4人家族の家庭から出る食品ロスは、金額に換算するとなんと年間6万円にもなるそうです。これは、月々にすると約5,000円の損失です。毎月5,000円を節約するのは、安いスーパーをはしごしたり、ポイントをためたりするだけでは難しいかもしれません。しかし、食品ロスを極力ゼロに近づけることなら、日々の意識と工夫で十分に可能です。これが、食費節約の最も効果的な方法であり、一番の近道なのです。

特に、一般家庭で出る食品ロスのおよそ5割は野菜だといわれています。肉類は冷凍保存しやすい一方、野菜は賞味期限の表示がないため、野菜室で忘れられてしまうケースが多く見られます。つまり、野菜の買い過ぎや使い残しに気を付けることが、食品ロス削減、ひいては食費節約の大きな一歩となるのです。

2. ムダ買いを防ぐ!賢い買い物のための準備と実践テクニック

精肉売り場での様子

食品ロスをなくすためには、まず食材の「ムダ買い」をしないことが重要です。買い物に行く前に、冷蔵庫や冷凍庫の中身をチェックし、今何があるかを把握しましょう。特に使い残しの中途半端な食材は、目立つ場所に置いて意識することが大切です。

・買い回り順は「メイン食材」から
ムダ買いを防ぐためには、まず肉売り場や魚売り場へ行き、その日に安くなっている食材をメインに決めるのがおすすめです。例えば、「豚のロース肉が安いからとんかつにしよう」と決めたら豚肉をかごに入れ、その後に付け合わせのキャベツを野菜売り場で買う、という流れです。この順番なら、必要な物だけを買うことができます。最初に野菜売り場へ行くと、安い野菜に釣られて献立を決めずに買い過ぎてしまい、使い切れない原因になりがちです。

・「見切り品」は賢く選ぶ
見切り品は確かに安いのですが、当日中に使い切る必要があるものがほとんどです。安いからと買い過ぎて使い切れなければムダになります。見切り品を買う際は、「本当に必要か」「使い切れるか」をよく考えてから買いましょう。ただし、乳製品や豆腐などの「日配品」の開店後すぐに出る見切り品は、当日中に使い切れるなら節約につながりやすく、狙い目です。

・野菜高騰時は「カット野菜」「冷凍野菜」も選択肢に
天候不順などで特定の野菜が高騰している時は、無理に高いものを買う必要はありません。どうしても使いたい場合は、価格変動が少なく、日持ちする「カット野菜」や「冷凍野菜」も賢い選択肢です。特に冷凍野菜は、腐る心配が少ないので経済的です。

3. 買うお店の使い分けと支払い方法の工夫

スーパーのレジでの風景

食費を節約するためには、買い物をする店舗を賢く使い分けることも有効です。

・コンビニは極力利用しない
コンビニはスーパーなどに比べて商品が割高な傾向にあるため、できるだけスーパーやドラッグストアでの購入を優先しましょう。パンや飲み物、冷凍食品などはコンビニよりスーパーの方が安価で、500mLペットボトルの飲み物一つとっても、50円程度の差が出ることもあります。

・100円ショップを賢く活用
100円ショップにも飲み物やレトルト食品、調味料などが販売されています。特にシニアの1人暮らしの場合、少量しか使わない調味料、香辛料などは、スーパーで大容量のものを買うより安く済む場合があります。

・ネット通販の活用
ネット通販は割高なイメージがあるかもしれませんが、長期保存ができる飲食料品(ペットボトル飲料、インスタント食品、缶詰など)は、セールのタイミングでまとめ買いするとお得になることがあります。クーポンやポイントアップキャンペーンをうまく活用しましょう。

・キャッシュレス決済とクーポンで「ちりつも」効果
買い物はキャッシュレス決済を利用し、ポイントをためることを意識しましょう。決済方法にもよりますが、100円につき0.5〜1.5%程度のポイントが付くことが多く、たまったポイントは次回以降の支払いに利用できるため、実質的に食費を減らせます。お店のアプリやクーポンアプリ、キャッシュレス決済アプリで発行されるクーポンも活用すると、さらにお得に買い物ができます。

 

4. 冷蔵庫・冷凍庫の整理整頓で「見える化」

冷凍庫の中

買ってきた食材をムダなく使い切るためには、適切な保存方法と冷蔵庫・冷凍庫の整理整頓が非常に重要です。せっかく計画的に買っても、庫内がごちゃごちゃで食材を見つけられず、駄目にしてしまうことは避けたいものです。

・使い残し食材は「見える化」する
料理で半分残った野菜や、少し余った肉など、使い残しの食材は特に目立つ場所に置くようにしましょう。冷蔵庫を開けた時にすぐに目に入るようにすることで、「これを使わなきゃ」という意識が芽生え、献立に取り入れやすくなります。かごを使ったり、冷凍庫ならブックエンドでフリーザーバッグを立てて並べたりするのも有効な方法です。

・「ついで冷凍」を習慣に
多くの野菜は冷凍保存が可能です(水分が多いものは除く)。買ってきたら、調理のついでにすぐにカットし、使いやすい量に分けてフリーザーバッグなどに入れ、冷凍保存しておくと便利です。白菜やほうれん草、にんじん、ごぼう、きのこ類などが冷凍に向いています。こうしておけば、いざという時にすぐに使え、生のまま保存するより腐らせる心配を減らせます。

・「ちょこっと残し」の専用かご
料理で少しだけ余った食材(「ちょこっと残し」)は、専用のかごに入れて管理すると、忘れずに次の料理に活用できます。これにより、シンプルな料理にうまみやボリュームを加え、食費を抑えながらも食事の満足感を高めることができます。

・「コンビニ方式」の並べ方
同じ食材は縦1列に並べ、古いものから手前に置く「コンビニ方式」で賞味期限切れを防ぎましょう。

・早く消費したい食材を定位置に
早く使い切りたい食材のために、「FIRST(先に使う)」とラベルを貼ったケースを用意したり、野菜室の上段など目立つ場所に置くなど、定位置を決めるのも有効です。

5. 冷蔵庫にあるもので!「逆引きレシピ」で賢く料理

冷蔵庫を覗く女性

食費の節約が上手な人は、買い物リストから献立を考えるのではなく、冷蔵庫にある食材から献立を考える「逆引きレシピ」が得意です。

・献立の柔軟性
「この料理にはこれが必要」と決めつけず、今ある食材で何が作れるかを考えましょう。例えば、肉がなくても、根菜やきのこ、豆腐などをだしで煮て片栗粉でとろみを付ければ、ボリューミーな和風あんかけになります。ウインナーやハム、半端に残った野菜やきのこなどを細かく切って、具だくさんチャーハンやオムライスにするのもおすすめです。

・食費の予算を「3:1」で管理する
食費の節約で最も重要なのは「予算取り」です。月全体の食費予算を決め、そのうち日々の買い物に使う費用を「3」、お米や調味料などの長期保存品に使う費用を「1」の割合に分けて管理することをおすすめします。これにより、「日割りで計算していたのに、月末に予算が足りなくなった……」という失敗を防ぎやすくなります。

・レシピの分量を守る勇気を持つ
レシピに「豚肉300g」とあるのに、1パック350gだからと全て使ってしまうのは少し考えものです。無理に食材を使い切ろうとして料理が余り、結局食べ切れずに捨てることになっては本末転倒です。少し残して保存するのは面倒に感じるかもしれませんが、余った食材は保存して後日上手に使い切りましょう。

6. 日常の「ちりつも」から無理なく節約を

料理をするシニア夫婦

「食費の節約は我慢の連続」というイメージがあるかもしれませんが、それは違います。ご紹介したように、献立を考える力を養い、賢く買い物をして適切に食材を保存することで、食事の満足度を落とすことなく食費を節約できます。日々の小さな心がけが、やがて大きな節約につながる「ちりも積もれば山となる」効果を生み出します。

最初は意識が必要でも、毎日続けることでそれが習慣になっていきます。ストレスなく、無理せず、楽しみながら食費節約を習慣化し、心豊かな生活を送っていきましょう。



構成:研友企画出版



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著者:和田由貴(わだ・ゆうき)

消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザー、食生活アドバイザーなど、幅広く暮らしや家事の専門家として多方面で活動。また、環境カウンセラーや省エネ・脱炭素エキスパートでもあり、2007年には環境大臣より「容器包装廃棄物排出抑制推進員(3R推進マイスター)」に委嘱されるなど、環境問題にも精通する。私生活では2人の子を持つ母で現役の節約主婦でもあり、日常生活に密着したアドバイスを得意とする。「節約は、無理をしないで楽しく!」がモットーで、耐える節約ではなく快適と節約を両立したスマートで賢い節約生活を提唱している。専門分野は食費・光熱費・交通費・レジャー費など生活全般の節約、エコライフ、買い物、100円ショップ、その他消費生活アドバイザーの立場から製品安全や消費者問題、環境教育などにも携わる。
https://wada-yuki.com/profile1/

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