加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)は、日本人の視覚障害の原因の1つとして注目されている病気です。以前は有効な治療法が少なかったのですが、近年、診断技術や治療法が大きく進歩し、早期に発見・治療を行えば、視力の維持や改善が期待できるようになっています。見えにくさを「ただの老眼」と見過ごさず、早めに気づき、適切な対処につなげるために知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説します。

1. まずは見え方をチェックしてみよう!

加齢黄斑変性は、比較的早い段階から自覚症状が現れやすいといわれています。まずは、見え方をチェックしてみましょう。


加齢黄斑変性のチェック画像

上の写真を両目で見たとき、片目で見たときのそれぞれの見え方をチェックしてみましょう。木の輪郭や、草原・空の色合いなどに違和感はありませんか?


加齢黄斑変性のチェック画像

上の写真のように、周囲は問題ないのに、中心部がゆがんで見える場合、加齢黄斑変性などの病気が隠れている可能性があります。

次に、生活習慣や見え方をチェックしてみましょう。以下のリストに当てはまる項目が多い場合、加齢黄斑変性の可能性が考えられます。

【見え方・生活習慣のチェック】
□ 物がゆがんで見える
□ 視野の中心がかすんで見える
□ 長年、タバコを吸っている
□ 肉食中心で野菜をあまり食べない
□ 日中、屋外にいることが多い

特に「見えにくさ」を自覚している場合は、早めに眼科を受診しましょう。

2. 加齢黄斑変性が起こるしくみ

眼科検診
目の奥には「網膜」という薄い膜があり、カメラのフィルムのような役割をしています。その中心にあるのが「黄斑(おうはん)」で、文字を読む、顔を見分けるなど、細かく見るために欠かせない、視細胞が集まる最も重要な部分です。

加齢黄斑変性では、加齢とともに黄斑に老廃物がたまったり、炎症が起こったりして、網膜が傷ついていきます。特に「新生血管型(滲出型)」では、網膜の下にもろくて異常な血管が生じ、そこから血液や水分が漏れ出すことで、急激な視力低下を引き起こします。また、紫外線などの光刺激も、網膜へのダメージを蓄積させる一因と考えられています。

3. 「目の生活習慣病」と呼ばれる理由とは?

目の見え方チェックのイメージ

加齢黄斑変性は、単なる老化現象ではなく、長年の生活習慣が深く関係する病気です。そのため、「目の生活習慣病」と呼ばれることもあります。紫外線、喫煙、肥満、遺伝などは、加齢黄斑変性の発症リスクを高めることがわかっています。

特に食生活の影響は大きく、抗酸化作用のある栄養素(ビタミンやミネラルなど)や、黄斑を守る色素(ルテインなど)などの不足は、発症や進行のリスクを高めると考えられています。

50歳以上で肥満があり、家族に加齢黄斑変性の人がいる場合は、一度、眼科で検査を受けましょう。

4. 2つのタイプ:「萎縮型」と「滲出型」

眼科の診療時イメージ

加齢黄斑変性には主に2つのタイプがあります。

●萎縮(いしゅく)型
黄斑の組織が加齢とともに徐々に薄くなり、萎縮していくタイプです。進行は比較的ゆっくりですが、現時点では決定的な治療法は確立されていません。

●滲出(しんしゅつ)型
 網膜の下に異常な血管(新生血管)ができ、出血やむくみを起こすタイプです。進行が早く、放置すると急激に視力が低下する恐れがあります。

日本人の場合、9割以上が滲出型です。滲出型は進行が速いため、早期発見・早期治療が重要です。萎縮型は進行が遅いものの、治療法が確立されていないため、予防が最善の治療となります。

5. 加齢黄斑変性の検査方法

眼科の診療風景

早期発見には、眼科での専門的な検査が欠かせません。視力検査や眼底検査に加え、近年普及している「OCT(光干渉断層計)検査」では、網膜の断面を詳しく撮影することができ、ごく初期の異常や、新生血管の有無を発見することができます。特に、治療中は病気の活動性(再発や悪化のサイン)を見逃さないために、定期的な検査を行うことが視力維持の鍵となります。

6. 現在の主流の治療法は「目に直接注射する治療」

診察風景

滲出型の治療はこれまでレーザーで新生血管を焼き固めてむくみを止める方法が中心でした。近年、抗VEGF薬を目の中に直接注射する「硝子体内注射」が主流になっています。これは、網膜にできる異常な血管を抑え、視力低下を防ぐための治療です。まれに感染症(眼内炎)などの合併症のリスクがあるため、治療前後のケアや医師の指示を守ることが大切です。

治療は1回で終わるものではなく、継続が必要です。患者さんの病状やライフスタイルに合わせて、主に以下の2つの方法で投与スケジュールが組まれます。

• PRN法(必要時投与)
再発や悪化の兆候が見られたときに注射する方法。注射回数を抑えられる反面、再発を見逃さないようこまめな検査が必要です。

• トリート&エクステンド法(計画的投与)
病状が安定すれば、注射間隔を「4週→6週→8週…」と少しずつ延ばしていく方法です。再発してから打つのではなく、良い状態を維持するようにコントロールするため、視力を守りつつ通院の負担を軽減できるメリットがあります。この方法は「オーダーメイドの治療」ともいえ、本人や付き添いの家族の負担に合わせて相談することが可能です。

7. 加齢黄斑変性の予防のためにおすすめの栄養素は?

ルテイン

特定の栄養素の摂取が、加齢黄斑変性の進行を抑える一助となることが、アメリカで行われた大規模研究(AREDS)などで報告されています。

●ルテイン、ゼアキサンチン
ルテインとゼアキサンチンは、水晶体や黄斑部に含まれる成分で、強い光の刺激から視細胞を守り、網膜にたまる老廃物の除去を助けるなど、目の健康を守る働きがあると考えられています。

ルテインを多く含む食品:小松菜、モロヘイヤ、ルッコラ、パセリなどの緑色野菜

ゼアキサンチンを多く含む食品:パプリカ、かぼちゃ、マンゴー、とうもろこしなどの黄色野菜や果物

●ビタミンC・E、亜鉛
これらの栄養素は抗酸化作用をもち、網膜の健康維持に関わるとされています。

また、サプリメントは病気を治すものではなく、食事だけでは不足しがちな栄養素を補う補助的な手段です。特に、加齢黄斑変性のリスクが高い人は、自己判断せず、医師に相談したうえで、食事の改善と合わせた活用を検討するとよいでしょう。



構成:研友企画出版



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著者:真鍋佑介(まなべ・ゆうすけ)

岐阜市で真鍋眼科院長を務める日本眼科学会認定の眼科専門医で、緑内障診療を専門としつつ、白内障手術や小児近視予防など幅広い診療を行う眼科医。金沢医科大学卒業後、岐阜大学病院や関連施設で経験を重ね、緑内障外来で多数の症例を担当してきた経歴を持ち、その臨床経験を基盤に2021年に真鍋眼科を開院。診療では、検査画像や数値をモニターに映しながら視覚的に示し、患者が自分の目の状態を理解したうえで治療方針を選べるようにする説明スタイルが特徴。診療の傍ら、目の健康に関する一般書『一生目が見える人のすごい習慣』などの著書を執筆し、雑誌・Webメディアでの解説記事やYouTubeチャンネル「真鍋眼科」を通じて情報発信にも積極的に取り組む。

真鍋眼科公式HP
https://manabe-eye-ladies.com/

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