フレイルには3つの側面があり、放っておくと相互に影響して負の連鎖を招き、悪化していきます。今回は、身体・心・社会の3つの側面からフレイルを解説し、家庭でできるチェック法や予防法を紹介します。困った時の相談先もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
フレイルとは「健康」と「要介護」の中間にあたる状態のことです。単なる老化ではなく、身体や心の機能が低下している状態だといわれています。フレイルは、以下のような要素が複雑に絡み合って起こります。
・加齢に伴う身体機能の変化や慢性的な病気
・食欲不振による栄養不足
・気力の低下や社会的な孤立
放置すると要介護状態へと進みますが、適切に対策をすれば健康な状態に戻れるのがフレイルの特徴です。
フレイルには身体・心・社会の3つの側面があり、影響し合っています。
それぞれについて見ていきましょう。
■身体的フレイル
筋力や体力が低下している状態で、次のような徴候がみられます。
・体重が減った
・疲れやすくなった
・ペットボトルのキャップが開けにくい
・信号が青のうちに横断歩道を渡りきれない
身体的フレイルには、サルコペニア(筋肉量の減少と筋力低下)やロコモティブシンドローム(運動器※の機能低下により立ち座りや歩行が困難になる状態)なども含まれます。両者は重なり合う部分もあり、いずれも身体機能の衰えを示す重要なサインです。
※運動器とは骨・関節・筋肉・神経などのことを指します。
■心理的フレイル
心理的フレイルとは、定年退職や配偶者との死別などをきっかけに、意欲や気力が低下してしまっている状態です。
認知機能の低下やうつ状態も含まれ、気分が落ち込んだり、以前は楽しんでいた趣味に関心を示さなくなったりします。
■社会的フレイル
社会的フレイルとは、家族や友人との交流が減り孤立してしまう状態のことで、フレイルの入り口になりやすいといわれています。
誰とも会話しない日が続いたり、外出する機会がなくなったりすると、脳への刺激が極端に減り、やがて心理面や身体面にも悪影響が及ぶのです。
【3つの側面は影響し合う】
身体・心理・社会的フレイルは互いに影響し合い、1つが悪化すると他も連鎖的に悪化する「フレイル・ドミノ」を招きます。
【例】
1.社会的フレイル:友人と会わなくなり、家に閉じこもる
2.心理的フレイル:会話が減って気分が落ち込み、食欲も湧かなくなる
3.身体的フレイル:栄養不足と運動不足で筋力が落ち、さらに外出が困難になる
初めは「人付き合いが面倒」というささいな変化でも、放置すれば心や身体へと影響が及び、最終的には要介護状態へと進んでしまう可能性があるのです。

「どのような状態がフレイルに当てはまるのか?」「病院受診が必要かどうか判断できない」と迷っている方も多いのではないでしょうか。ここでは、家庭でできる3つのフレイルチェックの方法を紹介します。
①日本版フレイル基準(J-CHS基準)
日本の高齢者に合わせて作られた評価基準で、以下の5項目のうち、いくつ該当するかをチェックします。

▪体重減少
意図せず、過去6ヶ月で2〜3kg以上体重が減った
▪筋力低下(握力)
男性で28kg未満、女性で18kg未満
▪疲労感
過去2週間で「わけもなく疲れた」と感じる
▪歩行速度
通常歩行が秒速1m未満(横断歩道を青信号のうちに渡りきれない)
▪身体活動量の低下
①軽い運動・体操をしていない
②定期的な運動・スポーツをしていない
※2つとも週1回も行っていない場合に該当
【判定基準】
・3つ以上当てはまる:フレイル
・1~2つ当てはまる:プレフレイル(フレイルの前段階)
・1つも当てはまらない:健常
②「指輪っかテスト」
特別な道具を使わずにその場でできる方法で、筋肉量の減少の程度をチェックできます。

【チェック方法】
1.両手の親指と人差し指で輪っかを作る
2.利き足ではない方のふくらはぎの「一番太い部分」を囲む
3.指とふくらはぎの間に隙間ができるかどうかを確認する
【判定基準】
・隙間ができる:高リスク(筋肉が痩せている)
・指がちょうど届く:中リスク
・指が届かない:低リスク(筋肉が十分にある)
③基本チェックリスト
厚生労働省が作成した全25項目の質問票で、フレイルのリスクを総合的に判断できます。
【主なチェック項目】
・日常生活関連動作(外出、買い物、金銭管理など)
・運動機能(歩行、階段昇降、転倒歴など)
・栄養状態(体重減少、身長・体重など)
・口の機能(噛む力、むせなど)
・閉じこもり(外出頻度)
・認知機能(物忘れ、日付の認識など)
・心の健康(気分の落ち込み、意欲の低下など)
このチェックリストは項目が多いため、全25項目と判定の目安は、以下からご確認ください。

フレイルの予防には「運動」「栄養」「社会参加」の3つが重要です。
どれか1つだけではなく、3つをバランスよく取り入れることで、効果的にフレイルを予防できます。
①運動
日常生活に必要な筋肉を維持し、転倒や寝たきりを予防します。
おすすめは以下のような「ながら運動」です。
・テレビを見ながら足踏み
・歯を磨きながらかかとの上げ下げ
わざわざ準備する必要がなく、手軽に始められます。頑張りすぎず、気軽に続けることが大切です。

②栄養
筋肉の材料や体力の回復に必要なたんぱく質を摂りましょう。
肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質は、1日に両手に乗るくらいの量を目安にし、3食に分けて摂取してください。
肉や魚の場合は、手のひらと同じくらいの厚みが目安です。ツナ缶やサバ缶、市販の温泉卵、プロテイン入りの飲料なども活用しましょう。

③社会参加
「社会参加」といっても、大げさに考える必要はありません。
ゴミ出しのついでに近所の人とあいさつを交わしたり、スーパーで買い物をして店員と会話したりするだけでも、立派な社会参加です。「誰かとつながっている」という実感が、心の健康につながります。

フレイルについて相談したい場合は、以下の専門機関に行ってみましょう。
その際、生活状況や健康状態について、あらかじめメモにまとめておくとスムーズです。

■地域包括支援センター
高齢者の暮らしを支える「総合相談窓口」です。
保健師や社会福祉士などが在籍しており、身体の健康相談のほか「最近家に閉じこもっていて心配」「近所で参加できる体操教室を知りたい」といった相談にも対応してくれます。
■かかりつけ医
普段から健康管理をお願いしているかかりつけ医がいる場合は、相談先として覚えておきましょう。健康状態をよく知っているため、今の不調がフレイルによるものなのか、別の病気が隠れているのかを見極めてくれます。
信頼している医師からのアドバイスは、家族からのことばよりも素直に受け入れてもらえる場合もあるでしょう。
フレイルは、身体の不調・心の衰え・社会性の低下などが複雑に関わり合って起きている状態です。
放置すると悪化しますが、適切な対策をとれば元気な状態へと戻れます。チェックリストを活用して現状を把握し、運動・栄養・社会参加の3つをバランスよく取り入れて対策しましょう。気になることがあれば、専門家にも相談してください。
監修:中谷ミホ
画像TOP・イラスト:写真AC
その他画像:Generated with OpenAI ChatGPT

著者:鈴木康峻
2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。
得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど
保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級