ピジョンタヒラは介護のお困りごとを解決するさまざまなアイデア商品を生み出しています。ヒット中の「液体とろみかけるだけ」と「ラクラクおしりキレイミスト」開発の裏側をお伺いしました。

1. 介護をされる側・する側、双方に寄り添った商品を

――ピジョンタヒラは「介護」という言葉が世の中に浸透する50年以上前から、車いすやおむつカバーなど介護用品の開発に取り組んでこられました。現在はどのような商品を扱っているのでしょうか。
 
中谷さん ピジョンタヒラは現在、おしりふきや清拭料などの清潔用品から介護施設や在宅でご使用いただける車いすといった、介護の場面に寄り添ったさまざまな商品を販売しています。介護される方のお気持ちを第一に、介護する方にも使いやすいと思っていただけるよう、素材からデザイン・加工までさまざまなアイデアを盛り込んでいます。
 
――介護用品とベビー用品には共通点が多いともいわれますが、ベビー用品メーカー大手・ピジョンのグループなんですね。
 
中谷さん はい。商品はほぼベビー用品と同じ工場で作っています。そのため、品質面・管理面でも安心安全にお使いいただけるというのは大きいです。ピジョン研究所では主に車いすや食事関連系、液体系は静岡、不織布・シート系は兵庫・茨城の生産グループ会社といった具合に、商品によって開発担当の場所・工場が違うんです。そのため、何か一つの商品だけを作るのではなく、介護のニーズを網羅的にカバーできるというのが大きな特徴ですね。
 
 
写真下:ピジョンの介護ブランド「ハビナース」の注目商品、「液体とろみかけるだけ」(左)と「ラクラクおしりキレイミスト」(右)。
介護をされる側・する側、双方に寄り添った商品を

2. デザインやキャッチコピーも開発者が考える

――新奇性が高い商品を多数販売されていますが、商品開発はどのように行われているのでしょうか。
 
中谷さん 弊社では介護現場の“生の声”を大切にしていて、社員全員がお客様のお悩みやニーズを現場からくみ取り、商品開発に生かしています。介護施設の職員や在宅介護されている方からヒアリングし、その内容をマーケティング部が集約、そこから開発部門に「こういう商品はできないか」という相談をします。企画・設計から実際に商品が発売されるまで、だいたい2年くらいですね。私たちは介護される方、する方が発売された商品を通じて「あぁよかった」と思って頂ける開発を目指しています。
 
宇佐美さん マーケティング部から依頼されるお題はハードルが高いものばかりですが、世の中にないものを作る、というのが開発者の醍醐味でもあります。商品自体の企画・設計はもちろんですが、パッケージのデザイン、キャッチコピー、運搬用の段ボールの設計に至るまで、すべて私たち開発者の仕事。基本的には1商品1人ですべて担当しています。
 
町田さん 開発者というと研究室にいるイメージがあるかもしれませんが、実際は研究が3割、オフィスワークが7割ほど。会議も多いですし、会議の資料作りや検証データの作成、原価計算まで、細かな仕事も多いんです。


写真下:中谷拓真さん。「ハビナース」を中心に商品企画からPRまで行う。
デザインやキャッチコピーも開発者が考える

3. 炭酸飲料にとろみがつけられる「液体とろみかけるだけ」

――「液体とろみかけるだけ」は、どのような商品なのでしょうか。
 
町田さん 炭酸飲料をはじめ、とろみ付けが難しい牛乳やオレンジジュース、汁気が多いお料理にもダマにならずにすぐにとろみ付けできる、という商品です。現在販売されているとろみ剤は粉末が主流なのですが、①ダマができやすく口触りが悪い、②溶かすのにコツがいる、③強い撹拌が必要なため料理の形がくずれてしまう等の課題があります。とろみ剤が初めから液体になっていればこういった課題を解消できると考え、開発に取り組みました。


写真下:粉末のとろみ剤のお悩みをすべて解決する「液体とろみかけるだけ」。
 
炭酸飲料にとろみがつけられる「液体とろみかけるだけ」

4. 誰でも簡単にとろみ付けできる

中谷さん 特に在宅介護の場合、誰かがとろみの付け方を教えてくれるわけではないので、「どれくらいの粘度のとろみを付ければいいのかわからない」という声が多いんです。「液体とろみかけるだけ」はかける量を増やすだけで粘度を高くすることができ、飲料や料理にさっとなじむので再調整も簡単です。たとえば唐揚げなども、飲み込みやすいように刻んだ後、液体とろみをかけてまとまりを作れば、飲み込む力が弱い方でもおいしく 召し上がっていただけます。
 
――開発にあたり、一番苦労したところはどんなところでしょうか?
 
町田さん じつは、ピジョンが介護食品を販売するのは今回が初めてなんです。そのため、日本介護食品協議会が制定した規格を一から勉強するところからスタートしました。「液体とろみかけるだけ」は原液を10倍に薄めても原液と同じ粘度のとろみが付くのが特徴ですが、この配合を作るのがすごく大変で。100回以上、試作を繰り返して、やっと条件を満たす配合の組み合わせが見つかりました。


他のご家族と同じメニューに切り刻んでかけるだけでOK
誰でも簡単にとろみ付けできる

5. 「食事が楽しくなった」と大反響

――今年6月にはパッケージがリニューアルされ、「炭酸飲料に使える」という点を前面に押し出したデザインになりました。
 
中谷さん 発売後、介護されていてもビールや炭酸飲料を飲みたいという方が多くいることがわかりました。しかし粉末タイプのとろみ剤では炭酸にとろみを付けるのはかなり大変で、実際にとろみを付けようとすると、とろみ剤を加えて混ぜた後、冷蔵庫で数時間寝かせる必要があり、飲みたい時にすぐに飲むことができないという問題がありました。
そこで試しに「液体とろみかけるだけ」でやってみたところ、簡単にすぐにとろみをつけることができたんです。このことをより伝えるため、「液体とろみ かけるだけ」のパッケージデザインをリニューアルしました。
 
――かなり画期的な商品ですが、発売後、お客様からはどんな声が寄せられていますか?
 
町田さん ピジョンでは商品開発のプロセスに、モニターの方に試作品をお試しいただく、という工程があるのですが、その段階から非常に反響が良く、「食事が楽しくなった」「家族と一緒の食事が食べられてうれしそうだった」「炭酸のシュワシュワ感を体験させてあげられた」といった声をいただきました。発売まで2年半かかりましたが、その分、反響は大きかったですね。




写真下:町田翔さん。主にベビー向け離乳食の開発などに携わっている。
「食事が楽しくなった」と大反響

6. トイレットペーパーがおしりふきに「ラクラクおしりキレイミスト」

――「ラクラクおしりキレイミスト」は、どのような商品なのでしょうか。
 
宇佐美さん このミストを吹きかけるだけで、普段お使いのトイレットペーパーがおしりふきになる、という商品です。排泄の介助時の大人のおしりふき使用率は約20%で、必要性を感じていなかったり、コストがかかるという理由で、ほとんどの方がトイレットペーパーを使われています。でも、トイレットペーパーだけでは尿や便の汚れは完全にはふき取れません。高齢者の方は肌が弱いため、汚れが残っているとスキントラブルの原因にもなります。「ラクラクおしりキレイミスト」は水溶性の洗浄成分と皮膚保護成分、保湿成分を配合しているので、ゴシゴシこすらなくても汚れをしっかり拭き取れ、かつ肌を保湿することができるんです。


写真下:1本でおしりふき330枚分になり、お財布にもやさしい「ラクラクおしりキレイミスト」。
トイレットペーパーがおしりふきに「ラクラクおしりキレイミスト」

7. 排泄物のにおいの問題は介護の現場では深刻

中谷さん おしりふきにはトイレに流せるものと流せないものがあり、前者はトイレに流すため水に解れやすく、後者は紙が厚くて水分も多いのですが、別で捨てなければならない。両者のいいところ取りをしつつ、環境面への配慮からも、トイレットペーパーに吹きかけて流せるタイプの開発に取り組みました。
 
――ジャスミンフローラルの香りも自然ですね。
 
中谷さん 排泄物のニオイの問題は介護現場では深刻で、介護される側・する側、双方に精神的な負担がかかります。でも、強い香りでごまかそうとすると、かえってそれが不快になってしまうことも。そこで、普通のおしりふきには入っていない、尿臭・便臭に効果を発揮する「フィードラント香料」というものを配合しています。
 
宇佐美さん 良い芳香を有する香料は、尿や便のニオイともされている「インドール」や「スカトール」を意図的に入れているんです。しかし「ラクラクおしりキレイミスト」に使用している香料はその2つを意図的に抜いているので、尿や便のニオイと混ざることで、香料本来のいい香りに変化させることができます。




写真下:トイレットペーパーから5㎝ほど離して、3回程度スプレー。
排泄物のにおいの問題は介護の現場では深刻

8. 「簡単でにおいも気にならない」と好評!

――開発にあたり、一番苦労した点はどんなところでしょうか?
 
宇佐美さん トイレットペッパーがボロボロにならないようにする工夫が大変でしたね。最初は油分が多い成分で考えていたんですが、それでは汚れを取るという効果は薄くなってしまう。成分の配合はもちろん、何回吹きかけるのか、どれくらいの距離から吹きかけるのか、スプレーの噴射口はどれくらいの幅にするのがベストなのかなど、何度も実験を重ねました。モニターの方にお試しいただいた段階では厳しい意見もいただき、そこから改良を加え、販売まで2年半くらいかかりました。
   
――商品開発では、モニターの方のご意見も重視されているんですね。
 
宇佐美さん 我々がいいと思っていても、実際に使われる方にそれを実感してもらえないと意味がないですからね。おかげで販売後は「いつも使っているトイレットぺーパーで簡単にできていい」「汚れはもちろん、ニオイが気にならなくていい」とご好評いただいています。


写真下:宇佐美英俊さん。主にスキンケア、トイレタリーの開発に携わっている。
「簡単でにおいも気にならない」と好評!

9. 「ピジョンらしさ」で介護をよりよく

――今後はどのような商品を作っていきたいですか?
 
町田さん 「液体とろみかけるだけ」から派生させた、味がついたものや、栄養が摂れるものなどを考えています。介護の現場でみんな困っているけど、他の会社がやっていないことにチャレンジしていきたいですね。
 
宇佐美さん 僕はもともと、ベビー、マタニティー、介護とさまざまな分野で網羅的に商品開発に携われるということに魅力を感じてピジョンに入社しました。各分野の仕事をするなかで、ベビーではすごく伸びているカテゴリなのに、介護ではまだまだ商品数が少なかったり、一般成人用の商品で代用されてしまっていたり、ということも多いんです。そういった部分で介護に特化した商品を開発することで、介護される側・する側、双方のお困りごとを解決できるのではないかと考えています。僕らの商品を使っていただくことで、介護にプラスαの喜びをお届けできるよう、今後も頑張ります!
「ピジョンらしさ」で介護をよりよく

10. 商品のご紹介「液体とろみかけるだけ」

11. 商品のご紹介「ラクラクおしりキレイミスト」

この記事の提供元
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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