親の介護が始まると、思っていた以上に出費がかさみ、頭を抱えることも少なくありません。
介護費用の負担を少しでも軽減するために、利用できる制度や方法はないか、考えてみましょう。

1. 介護費用はどのくらいかかる?

介護にはどのくらいお金がかかるのでしょうか。
 
介護の度合い・期間、在宅介護か施設介護かなど、介護の方法や状況によって個人差が大変大きいので一概にはいえませんが、参考までに平均値をみてみましょう。
 
【月々の平均は8.3万円】
生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(2021年度)」によると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、一時的な費用(住宅改造や介護用ベッドの購入など)の合計が平均74万円、月々の費用が平均8.3万円です。
また、介護期間は平均5年1か月となっています。
 
このデータで単純に計算すると、総額600万円近くかかることになります。

2. 誰が負担すべき?

大きな家計負担となる介護費用、誰が負担するのがよいのでしょうか。
 
厚生労働省の「国民生活基礎調査(2019年)」によると、介護費用を負担しているのは要介護者本人(または配偶者)であることが大半で、本人(または配偶者)以外が負担しているのは1割程度です。
 
「親の介護は親のお金で」が原則
上記のデータでも示されているとおり、「親の介護は親のお金で」が基本です。
 
「親の介護費用は子どもが負担すべき」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、長寿化や少子高齢化が進み、子どもが負担するのは難しい現状があります。
 
「いつまで・どのくらい」かかるか予測が難しい介護費用、親のお金でまかなうことを前提に、介護プランを考えることが大切です。

3. 「住民税非課税世帯」は負担が大幅に減る

介護費用の負担を軽減するためには、まずは、親の経済状況を確認する必要があります。
親が「住民税非課税世帯」であれば、さまざまな公的支援を受けられるからです。
 
「住民税非課税世帯」とは?
住民税は、収入のあった人が、その収入に応じて、住んでいる自治体から課税される税金です。
一定の収入以下の人は住民税が非課税になり、世帯の全員が住民税非課税の世帯を「住民税非課税世帯」といいます。
 
収入が年金のみの一人世帯の親(65歳以上)の場合、住民税が非課税になる年収は、155万円以下※です。
 
収入が年金のみの夫婦二人世帯の親(65歳以上)の場合、主たる生計者の年収が211万円以下※、配偶者の年収が155万円以下※であれば、「住民税非課税世帯」になります。
 
※自治体によって多少異なります。詳しくはお住まいの自治体にお問い合わせください。
 
【どんな支援が受けられる?】
「住民税非課税世帯」であれば、国民健康保険料や介護保険料が軽減されるほか、以下のような優遇を受けることができます。
 
・介護保険負担限度額認定が受けられる
認定を受けると、介護保険施設を利用するときの「居住費・食費」が軽減されます。ただし、認定を受けるためには、「住民税非課税世帯」であるだけでなく、預貯金等の資産の要件も満たす必要があります。
 
・「 高額療養費制度」や「高額介護サービス費」の自己負担上限額が下がる
詳しくは後述します。
 
・自治体独自の優遇がある
「住民税非課税世帯」に対し、自治体は様々な優遇措置を実施しています。
例えば、紙おむつの支給、予防接種費用の免除、タクシー利用の助成などがあります。
 
・「寡婦」や「障害者」に該当すると非課税に?
「寡婦」や「障害者」に該当すると、住民税の非課税世帯の所得要件額が大幅にアップします。
 
例えば、「寡婦控除」を受けられる一人暮らしの母親(65歳以上)の場合、公的年金の年収が245万円以下であれば、「住民税非課税世帯」になります。
 
ただし、こうした控除は、「扶養親族等申告書」を提出しなければ受けられません。
親が「住民税課税世帯」である場合は、各種控除の申告漏れはないか、確認してみましょう。
 
年金から税金が天引き(源泉徴収)されている場合、毎年9月以降、日本年金機構から「扶養親族等申告書」が送られてきます。
 
これは、各種控除を受けるために必要な書類です。この申告に基づいて、該当の控除金額が差し引かれ、税額が決定します。
 
配偶者や扶養親族がいなくても、親本人が「寡婦控除」や「障害者控除」の対象となる場合は、必ず提出するようにしましょう。
 
例えば、父親と死別した母親(所得500万円以下)は、「寡婦」に該当します。
 
また、障害者手帳を持っていなくても、介護認定を受けていれば、「障害者控除」を受けられる可能性があります。
 
65歳以上で、心身の状態が所定の基準に該当する場合、自治体から「障害者控除対象者認定書」が交付されます(申請が必要です)。
この認定書があれば、「障害者控除」を受けることができるのです。
 
認定の基準は自治体によって異なりますので、お住まいの自治体に確認してみましょう。
 
「住民税非課税世帯」になって介護費用を大幅に軽減できる可能性もありますので、控除の対象となる場合は、必ず提出するようにしましょう。

4. 医療費・介護費を取り戻そう

医療費や介護サービス費が高額になってしまった場合は、以下のような制度により、払い戻しを受けることができます。
 
【高額療養費制度】
医療費の負担が大きくなりすぎないよう、年齢や所得に応じた上限額を超えた分が払い戻される制度です。
 
70歳以上の一般所得層(年収約156万~370万円)の場合、ひと月の上限額(世帯ごと)は57,600円、外来(個人ごと)は18,000円(年間上限14万4,000円)です。
 
「住民税非課税世帯」であれば、上限額が24,600円(収入が一定以下の場合は15,000円)になります(外来は8,000円)。
 
【高額介護サービス費】
介護保険サービスの利用料が、所得に応じた上限額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。
 
住民税課税世帯(年収約770万円未満)の場合、ひと月の上限額(世帯ごと)は44,400円です。
 
「住民税非課税世帯」であれば、上限額が24,600円(収入が一定以下の場合は世帯24,600円、個人15,000円)になります。
 
【高額医療・高額介護合算制度】
同一世帯の、1年間の医療費と介護サービス費の自己負担額の合計が、年齢や所得に応じた上限額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。
 
夫婦共に75歳以上の一般所得層(年収約156万~370万円)の場合、年間の上限額は56万円です。
 
夫婦共に75歳以上の「住民税非課税世帯」であれば、年間の上限額は31万円(収入が一定以下の場合は19万円)になります。
 
【国や自治体の支援・助成】
上記のほかにも、国や自治体は様々な経済的支援や助成を行っています。
以下に、いくつか例を挙げます。
 
※自治体によって支援の内容は異なりますので、ご注意ください。
 
・特別障害者手当
精神や身体に重度の障害があって、日常生活で常時特別の介護を必要とする「在宅」の方に対して、国から支給される手当です。
2022年12月現在、支給額は月額27,300円です。
要介護4、5の認定を受けている場合は、対象になる可能性があります。
利用には「在宅」が条件ですが、グループホームや有料老人ホームなど「在宅」扱いの施設であれば、受給可能な場合もあります。
 
・家族介護慰労金
介護保険サービスを利用せずに、要介護度が高い高齢者を在宅で介護している家族に支給される慰労金です。支給額は年額10万円程度です。
 
・紙おむつの支給・助成
多くの自治体が、介護支援サービスの一つとして、紙おむつの支給・助成を行っています。現物を支給する場合や費用を助成する場合があります。自治体によっては、「住民税非課税世帯」を支給の条件にしています。
 
このほか、
・福祉タクシー料金の助成
・補聴器購入費の助成
・車いすの貸出し
・出張理髪・美容サービス
などがあります。
 
【まとめ】
介護費用を軽減できる制度や方法をいくつか紹介しましたが、こうした制度を利用するには、自ら調べて、申請する必要があります。
 
介護費用の負担軽減には、情報収集が不可欠なのです。
 
親に代わってしっかりと情報を集め、利用できる制度は上手に利用して、介護費用の負担を少しでも軽減しましょう。

5. 民間介護保険について知りたい!という方へ

※ここからはイオン保険サービス株式会社からのご案内となります。
 
ぜひ「イオンのほけん相談」にお問い合わせください!
<相談窓口>
この記事の提供元
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著者:原 絢子

原 絢子(はら あやこ)
<略歴>
FPサテライト所属ファイナンシャルプランナー
自分で保険の見直しを行ったのをきっかけに、お金の知識を身につけることの大切さを実感し、ファイナンシャルプランナーとして活動を始める。
モットーは「自分のお金を他人任せにしない」。ひとりでも多くの人がお金を味方につけて、自分の思い描く人生を歩んでほしいと、マネーリテラシーの重要性を精力的に発信している。

<所有資格>
日本FP協会 AFP認定者
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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