ご自身の身体の具合や使用状況等によって、最適なステッキをお選びいただくことが必要です。グリップの形状や素材、ステッキの色やデザインもさまざまな種類がありますので、ご自分に合ったステッキを選ぶことが重要です。ファッションや気分に合わせてお選びいただくことができます。
①身体状況別ステッキを購入される方の理由は大きく3つあります。
A:身体に痛みがあって歩くのが辛い
腰やひざ、神経の痛み、また関節の痛み等、歩き続けていると痛みが増してきて歩くのが辛くなるタイプの方です。この方々は、痛みを軽減するため痛い箇所に負担がかからないように、ステッキにある程度体重をかけながら歩くことが必要です。その場合に重要なポイントは「強度的に大丈夫か?」「グリップで掌が痛くならないのか?」「先ゴムは滑りにくいのか?」等です。
B:バランス感覚の低下によりふらつく
薬の飲用や病気・疾患及び神経の反応速度の低下により歩く際にふらつき、常に何かにつかまっていないとまっすぐに歩行することが困難な方の場合です。この方々は、平衡感覚を保つためにバランスを取りながらステッキを利用して歩くことが必要です。その場合に重要なポイントは「身体から少し離れた場所(斜め突き)でも使用できるのか?」「重量は重くないのか?」です。また、バランスを取るために両手を使用して歩いたほうが楽な方もいます。その他、主に室内で使用する四脚杖の場合は、ステッキ自体を上に持ち上げながら歩くので、腕の力がある程度あるのかどうかも重要なポイントになります。
C:常に何かにつかまっていないと安定した歩行ができない
頸椎損傷や神経疾患のある足、または足腰の怪我によって常に何かにつかまっていないと歩行することができない場合、または、足や腰の痛みが酷く、ステッキに相当体重をかけないと歩くことができない場合は、歩行器や松葉杖やクラッチ杖を使用しなければ自立歩行ができません。この方々は、自分の体重をある程度(場合によっては体重の1/2ほど)支えながら歩行するための歩行補助具が必要になります。ただ、体重を支えるために掌、または手首にある程度の荷重がかかるため注意が必要なので、腕と掌に荷重が分散するクラッチ杖はとても便利です。松葉杖は脇の下に荷重をかけると、脇の下の神経やリンパ腺に損傷が発生する可能性がありますので絶対にお避け下さい。また、一般的な棒状杖を2本使用して、クラッチ杖や松葉杖同様に体重をかけながら歩行することは大変危険ですので絶対に避けてください。
②性別及び身体のサイズによっても違います。
ステッキは明確には区分されていませんが、ある程度の目安として男性用と女性用に分かれます。
A:男性用(身長が高く、体格が大きい方)
一般的に男性は背が高く体格も掌も大きいので、その体型や大きさに合ったステッキが必要です。一般的なアルミ素材のステッキはシャフトの仕様が太いもの(22mm+19mm)と細いものが(19mm+16mm)がありますが、より安心感のある太い仕様のものがおすすめです。また、掌も大きいためしっかり握ることができるグリップのものがおすすめです。
B:女性用(身長が低く、体格が小さい方)
一般的に女性は背が低く体格も掌も小さいので、その体型やサイズに合ったステッキが必要です。よりスマートに見える細い仕様のもの(19mm+16mm)がおすすめですが、体重をかけながら安心して使用したい方には太い仕様のもの(22mm+19mm)をおすすめします。また、掌も小さいため滑りにくくフィット感のある柔らかめのグリップのものがおすすめです。
③使用する場所が屋外と屋内でも違います。
A:屋外で使用
屋外で使用する場合、坂道や砂利道や階段など平らでない場所が多いため、一般的には棒状杖(一本杖)を使用します。棒状杖の先端が可動する仕様のものや、接地面積が広い先ゴムのものもありますので使用する方の状況によってお選びください。なお、杖先が可動しない四脚杖については、平坦な場所で使用する仕様のため、凸凹の多い路面の屋外で使用することは避けた方が良く、杖先が可動する四点杖をおすすめします。
B:屋内で使用
屋内で使用する場合は平坦な場所が多く、ステッキ自身を自立させることができるため一般的には四脚杖(多脚杖)を多く使用します。ただ、棒状杖とは使い方や歩き方が異なるので、使用する際には使い方の説明が必要です。棒状杖と同じように使いたい場合は、杖先が可動する4点杖(多点杖)もおすすめです。
C:屋内&屋外の併用
屋内や屋外の両方で使用する際におすすめなのが、杖先が可動する4点杖(多点杖)です。自立することができる商品もありますし、狭い階段や坂道などでも使用できます。
④使用する頻度でおすすめするステッキが異なります。
A:常に使用する場合
ステッキを常に使用しなければ歩行に不安がある方には、伸縮タイプまたはストレートタイプ(一本物)のステッキがおすすめです。また、体重をある程度預けながら歩行しなければならない場合は、松葉杖やクラッチ杖がおすすめです。クラッチ杖には折畳みができるタイプもあり、乗り物に乗る際も便利です。
B:時々使用する場合
普段は不安が少なくても、旅行や買い物等で長時間外出したりする場合に歩行に不安を感じる方には、折畳みタイプのステッキがおすすめです。折畳みタイプなので、使用しない場合はカバンやバッグに入れておくことができます。最近では、シャフトが太め(φ22mm+19mm)の折畳タイプもありますので、背の高い方やより歩行に不安を感じる方も安心して使用することができます。
⑤一番重要なのは「グリップ(握りやすさ)」
ステッキは常に手で握りながら使用するために、自分に合ったグリップのものを選ぶことが重要です。特に手の大きさには個人差があるように、グリップも大小さまざまな大きさがあります。
また、グリップの形状もさまざまですが、ステッキを握る方の手に常にフィット感のある形状のものを選ぶことが大切です。さらに、雨に濡れたり、手に汗をかいて滑ることもあるので、グリップの材質にも注意しなければなりません。
もう一つ重要なのは、グリップの首元(つけ根)です。この首元が太いと握った際に指またが広がり、長期間使っていると痛くなる場合がありますので注意が必要です。手や指の力が弱くてグリップを握れない方は、掌でグリップを押さえながら歩くことができる「アナトミカル型」グリップがおすすめです。(右手用、左手用がありますのでご注意ください。)
⑥先ゴムの重要性
ステッキの先端にある先ゴムは、常に床面に接しており、歩行を補助する目的としては重要になります。(接地面のことを「支持基底面」と呼びます。)特に雨の日などの路面が濡れて滑りやすい場合や、マンホールや排水口など接地面の状況はいろいろと変化しますので注意が必要です。
近ごろでは、濡れた路面や滑りやすい側溝やマンホールなどの接地面に対して「滑りにくい先ゴム」を付けたタイプのものもあります。また、階段や坂道などでは、斜め方向にステッキを突く場合が多いため、先ゴムの形状や素材は特に重要になります。特に、体重を預けながら使用するクラッチ杖は、棒状杖より接地面に荷重がかかるため、雨の日などは滑りやすい状況になるので特に注意が必要です。
ステッキの先ゴムは使っていくうちに摩耗してすり減っていきます。基本的にステッキは斜めに同じ方向で付くので、先ゴムの片側だけが減るケースが多くなります。すり減った先ゴムは、雨の日など路面が濡れている場合は特に滑りやすくなり、転倒の危険性が高まるため非常に危険です。また、すり減った状態で使い続けると、先ゴムに穴が開いて、ステッキ本体(下部シャフト)も破損する恐れがあります。
先ゴムは消耗品ですので接地面の溝が減ったら必ず実施してください。使用頻度や杖の突き方のクセ等により千差万別で一概に交換時期は決められませんが、約半年~1年が目安です。なお、先ゴムは使用しているステッキの下部シャフトの太さ(一般的には16mm~19mm)によってさまざまあります。測り方は「ノギスまたはものさし」で測ってください。また、メーカーが違うと先ゴムが合わない場合がありますので注意が必要です。