1. 人間も、住まいも、要サポート目前という老老共同生活
人生100年というが、すでに折り返し地点に。結婚も出産もしていない私は、いまだに「子供」の身分だ。1999年に出版社を退社後、NYへ渡ってフリーライターとして活動し、一人暮らしをしていたが、2006年に帰国。現在、都内の実家にともに78歳になる両親と暮らしている。
帰国してからもう17年になるのか。守ってくれていた両親は、時を重ね、今やこちらが支えるべき存在となった。耳も遠くなり、今までのようにすたすたとは歩けないなどの衰えはあるものの、まだまだお達者なふたり。今日も仲良く、喧嘩している。ほっといても大丈夫なアラサン(アラウンド傘寿)両親との実家暮らしなんて、かなり恵まれた環境だろう。
とはいえ、誰にでも平等なのが時の流れ。きたる老老介護の気配におびえている今日この頃だ。50代独身子なしフリーランスが備えるべき、プレ介護について考えてみようと思う。
自宅は東京23区内の庭付き一戸建て――というと聞こえがいいが、築30年以上の一軒家はあちこちにガタがきていて、年末には暖房システムがダウンし、エアコン総とっかえの高額出費……先日はキッチンの水漏れトラブルに大わらわ……とこちらも時限爆弾を抱えているような状況。見えない壁が四方からじわじわと迫ってくるような心境だ。
古い家具や時代遅れの電化製品、すでに使わなくなったプリンターなどを、貧乏性な両親は廃棄できない。使えるものは無理してでも使う。捨てない生活は、サステナブル的には優等生かもしれないが、さまざまなシステムが進化しているこの時代、非効率なことこの上ない。これをバージョンアップできれば、かなり生活は向上するだろうに……!
そう。迫りくる危機というのは「対ひと」とは限らない。住宅周りのメンテナンスなど、住環境や世の中のシステムにどう対処するかも問題だ。スマートフォンやPCなどデバイス関係のアップデートも目の前に迫る壁のひとつ。
50代は更年期が気になるお年頃でもある。体力の低下に悩み、今まで簡単にできたことが困難になる。さまざまな病や故障と直面する同年代の友人も増えてきた。病気は年齢順には来てくれない。親より自分が先に倒れることだってあり得るのだ。ああ、人生って大変……!
2. 姉妹のキャラはそれぞれ。苦手分野も違うから、自然に分担
そんな漠然たる不安が迫っている我がプレ介護生活だが、ラッキーなのは、離れて暮らす妹が2人いて、立場や環境が違う3姉妹が連携できるということだろう。
同居しているのは長女の私。表立ったサポートらしいことはなにもしていないが、共に暮らしているだけに、ちょっとした変化には気がつける。物騒な事件も多い昨今だが、二人だけではないというだけで、両親も、離れて暮らす妹たちも安心できるようだ。いわば見守り担当。日常生活の伴走者。
次女の妹は料理人として近所に店舗をかまえ、一人で切り盛りする経営者だ。私がNYで暮らしていた時には実家で暮らしていたが、結婚を機に駅の反対側のマンションへと引っ越し、同じく食の事業に携わる夫と2人暮らし。1週間に一度くらい予告もなく立ち寄り、余ったお惣菜や食材、出汁を届けてくれる。店舗も彼女の住まいも、自宅から徒歩15分程度の距離なので、散歩やジョギング帰りにちょっと顔を見せることも多い。このたまに訪れるわずか10分程度の滞在が、親にとっては心地いい刺激になっているようだ。
末の妹は若くして結婚。現在、千葉県で3人の子供を育てている。なんといっても孫の顔を見せるという最大の親孝行を担ってくれたことがありがたい(しかも3人も!)。年に数回、成長した孫とともに妹一家が訪れるのは、両親にとってなによりものイベントだ。年末年始は大はりきりで、数日前からメニューを考えている。専業主婦同士、話題も共有できるのか、この末娘の妹は母のよき話し相手になってくれている。
3. 「会話を分担」はなによりのプレ介護支援につながる!
実はこの「いい会話相手」というのがプレ介護生活では一番、サポートとなる。私が家にいるときにはできるだけいい聞き役になろうと努めているが、限界がある。毎日のことだから、がんばると続かない。ついイラついてしまうときがある。
そんな相手を、さすがは3人の子育てを経て、あらゆるママ友とのコミュニケーションを築いてきた一番下の妹はうまくこなしている。話を聞きつつ、いい返しをして、みごと、会話のキャッチボールが成立しているのだ。妹との長電話の後には、母はいつもすっきりとした顔になる。たまに立ち寄る近所に住む妹も、いいガス抜きとして「機能」してくれている。ありがたい!
そして会話というサポートを分担し、共有すると、グチでも文句でも何でも言い合え、共有できる。いずれ本格的な介護が始まっても、助けを求めやすくなると思うのだ。もしくはさりげなく察知してくれるに違いない。私たち姉妹はLINEのグループをつくって、両親に関する情報や近況をつぶやきあうことにした。情報を共有するとコミュニケーションもとりやすく、頻度も高まる。ふたりの妹が相手になってくれれば、同居する私の気持ちの負担も軽くなる。
本格的な介護生活がいつ始まるかは誰にもわからない。それは1年後かもしれないし、明日かもしれない。だからこそ、無理なく、楽しくできることをいろいろと試み、今から備えておきたい。備えあれば憂いなし、などとうまくいかないのは重々、承知だが、憂いあれば備えよう、と心に刻んでみるのだ。