1. 死は身近にあることを実感した愛犬セサミの突然の旅立ち
迫りくる本格的な介護に備える準備期間がプレ介護。50代となって、両親の体力も落ちた今が、まさにその時期だ。いつかは終活についても本気で考えないと……。実はそれを初めて実感したのが愛犬セサミの死だった。
ミニチュアダックスのセサミは16歳で旅立った。わんこの16歳といえば人間でいえば80歳は越しているだろう。ブラックタンのスムース(短毛)だったが、つやつやの黒の顔や体には白い毛もだいぶ混じるようになっていた。とはいえ、動きも機敏で「あら、子犬?」なんて言われる美魔女犬だったわけだが、だんだんと外に出るのを億劫がるようになり、ある日、散歩途中に一歩も歩かなくなってしまった。病院に連れて行くと、即入院。しばらく安静にし、投薬して状況をみようということになった。
翌日、動物病院から電話があり、数値が全く変わらず、いつ容態が変わるかもしれない。このまま亡くなることもあるので、このまま入院させるか、自宅で看取るか決めたほうがいいと言われて動揺した。どうやらもう回復の見込みはないらしい。
結局、点滴をつけたまま連れて帰り、その晩、寝ずに付き添うことにした。苦しそうにヒューヒューとのどを鳴らし、その日の明け方に、眠るように息をひきとった。老犬だったとはいえ、あまりにも急な最期。火葬場で小さな骨壺を受け取っても、まだ信じられなかった。
2. 自分たちの身近にもある死。エンディング会議をしないと……!
合計すると年齢200歳近い3人家族だったというのに、いつか来る死に関して、あまりにも無頓着だった。セサミを見送ってようやく、自分たちにもいつかはこんな日が来るんだと我に返った。あわてて書店でエンディングノートを3冊買いそろえ、ノートを片手に終活会議を開いた。いつもは聞きづらい質問も、エンディングノートの項目にそってなら、率直に語り合える。
弁護士ドットコムが特別協力したというコクヨの「もしもの時に役立つノート」は急な入院や死去に備えて、基本情報を書きとめておくリビング&エンディング・ノートブックだ。告知や延命処置、介護や葬儀に関してのかなり細かな質問項目がある。たとえば葬儀に関しては、準備をとりしきってほしい人、会計をお願いしたい人、飾ってほしい花や棺に入れてほしいもの、流す音楽など、かなり具体的だ。
無駄な延命治療はしたくない、というのは、家族3人、共通の意見だった。でも最期は自宅で過ごしたいか、どんな葬儀にしたいかではそれぞれの理想があって驚いた。普段話題にしないことである分、じっくりと語り合わないとお互いの心境なんてわからないものだなあとしみじみ感じた。
3. 各パスワードや遺影写真のデジタルデータの保管も重要
このノートには、携帯やパソコンなどのデジタルデータ、WEBサービスのパスワードやクレジットカード情報などの記入欄もあって、なるほど、そういった情報もリスト化されているといざというときに便利なんだな、と気づかされた。これらは、自分でもよくわかっていないことが多く、生きている間にも情報整理は必要な作業だ。宝物、コレクションについて誰に譲るか、どう処分するかなんていうページもあり、自分はいかに財産をもっていないのかということにも愕然とした。50年も生きているのに………! それでも、私ならではの思い入れのあるもの、形見分けしたいものなどを書きとめておいた。
DVDなどのメディアを保管する付属のディスクケースもこのノートにはついていて、遺影に使ってほしい写真や好きな音楽、連絡すべき住所録などを納めることを奨励している。なるほど。確かに。書けるところから書こう、何度でも書き直し、書き足しをしよう、記入日を書いておこうなど、アドバイスにもうなずくばかり。確かにこのノートを完璧に仕上げる必要はなく、今の自分を記録しておくことこそが大事なのだ。
4. 重いテーマにならないうちに家族で向き合い、語り合うのがいい
それにしてもセサミのことがなかったら、理想の葬儀や形見分けの話なんて、思いつきもしなかっただろう。いや、なんだか不吉、と本能的に避けていたかも。今の時点ではまだ切羽詰まってはいないものの、すくなくとも子である私からは切り出しにくいテーマだ。
それでもすでに見送った経験がある友人は口をそろえて、いかにその後の事務処理が大変だったかを語るではないか。中でも銀行口座関連、土地や家屋の相続関連の手続きは面倒だと聞く。そのときになってあたふたする自分たちの姿は容易に想像できる。
「もしもの時に役立つノート」には保険金の受取人が誰か、現在借りている、貸しているお金があるか、相続をどうするかなど、なかなか生々しい情報を記入するページもある。これこそプレ介護の今でないと詳しく聞くのは気まずい。これらはそれぞれで書くとしても、どんな終活が自分にとってのベストなのか、どう旅立ちたいかは、共有してもいいだろう。
重いテーマだからこそ、軽く、楽しく、夢を語りたい。ちなみに私は葬儀でふるまってほしいお酒だけは決まっている。気軽に飲めるスペインのスパークリングワインのCAVA! 参列者には楽しく思い出話で盛り上がってほしいし、そこで私の友達同士がつながり、仲良くなってくれたら楽しいな、と妄想する。そしてこの友人がスピーチしたら、もれなく過去の失敗話を面白おかしく語られてしまう!という危惧から、その見張り役を共通の友人に頼んでいたりする。
5. どうする? いつにする? 第2回目の終活会議の開催
友人となら酒のつまみになる話として、終活話で盛り上がれるのだが、両親とはリアリティがありすぎてできなかった。セサミの死をきっかけに、このノートのおかげで、そんな終活会議をすることができた。とはいえ、一晩ですべてを語り尽くせるわけもなく、第2回を開催しようと言ったきり、ほったらかしだ。こういうことは勢いが必要なのかもしれない。そろそろ重い腰をあげよう。
さて今度はなにをきっかけに切り出そうか。コロナ禍もかなり落ち着いてきた。旅行も外出も今まで通りにできる世の中に戻ってきた。いっそ終活合宿として、湯治を兼ねて温泉旅館にでもこもろうか。いつもよりちょっと晴れやかな場が、エンディングについて話し合うには適している気がするのだ。さぁ、どこへ行こう!