1. 「仕事と介護の両立」におけるフェーズとは
仕事と介護の両立には、大きく3つのフェーズがあります。
まずは、介護の準備をしておくべき「備えの時期」、次は介護が始まった直後の「始まりの時期」、そして介護体制を整えて両立をしていく「両立の時期」です。今回は両立の流れを知り、フェーズごとにしておくべきことを把握していきましょう。
2. ①備えの時期
この時期は、これから始まるかもしれない介護のために備えておく期間です。介護はまだまだ先と思っていても、脳梗塞や転倒による怪我などが原因で、ある日突然始まる可能性も十分考えられます。ご家族が元気なうちから、いかに準備をしているかによって、その後の仕事と介護の両立のしやすさが大きく変わってきます。
急な介護の始まりに備えるために、この時期にやっておくべきことは、「情報収集」と「話し合い」です。
◎情報収集
まず集めるべき情報は、「自分が働く会社の制度」、「地域包括支援センターの場所」、そして「介護保険証の保管場所」です。
仕事と介護の両立を促進するために、介護休暇や介護休業などが法律(育児・介護休業法)によって定められています。その他、介護が始まっても働き続けられるよう柔軟な制度を整えている企業も増えてきています。自分が働く会社にはどのような制度があるのか、確認しておきましょう。
地域包括支援センターは、地域の包括的な支援・サービス提供体制を推進している場所で、高齢者の総合相談窓口です。ご家族の介護が始まった際ら、まずは地域包括支援センターに相談しましょう。ご家族の介護について今後どのようなことをすればいいのか一緒に考えてもらうことができます。
人口2~3万人の日常生活圏域(中学校区域)に1つを目安に設置されており各々担当のエリアが決まっています。ご家族の住む地域を担当している地域包括支援センターを前もって確認し、いざ介護が始まったときにいつでも連絡できるように備えておきましょう。
インターネットで「自治体名(ご家族様の住む地域) 地域包括支援センター」と検索すると調べることができます。
介護保険被保険者証は介護保険認定を受けるための申請時に必要になります。65歳の誕生日前後に各自治体から発行されますが、介護を必要としていない方は使う機会がないため忘れてしまいやすいものです。いざ介護が始まるときに探すところから始めるのは大変ですので、ご本人がどこにしまっていらっしゃるのか、今のうちから保管場所を確認しておきましょう。
◎話し合い
話し合っておくべき相手は、「介護の対象となる方」と、「一緒に介護をしていく可能性があるきょうだいやパートナー」です。急に介護が始まった際に、きょうだいやパートナーと足並みがそろわないために苦労することも。いざというときはどうするか、役割分担などについて話し合い、今のうちから目線合わせをしておきましょう。
3. ②始まりの時期
介護が始まった時にやるべきことは「態勢作り」です。介護が始まると、急ペースで介護態勢を整え、仕事と両立できるようにしていく必要があります。この態勢作りは職場面と介護面、両輪で進めていく必要があります。
◎職場ですること
まずは「課題整理」をし、「報告・相談」をしていきます。介護の現状や仕事にどんな影響があるのか、配慮してほしいことはどんなことかなどを整理して上司や同僚に伝えましょう。その上で利用できる社内の支援制度等について確認し、活用できるか相談していきましょう。中々言い出しにくいかと思いますが、両立のためには周囲の協力も必要です。状況をこまめに伝えていけるとよいでしょう。
◎介護ですること
介護の面では、「専門職への相談」がなによりも大切です。ご本人や一緒に介護をしているご家族の状態を細かく専門職に伝え、今後のことを一緒に考えてもらいましょう。相談先としては、在宅介護であれば地域包括支援センター、入院中であれば病院のソーシャルワーカーなどが挙げられます。
また、介護保険のサービスを利用するためには申請が必要です。そして、認定結果が出たら手続きを行い、担当ケアマネジャーを依頼します。その後は担当のケアマネジャーと連携し、どんな些細なことでも相談していきましょう。この先にどんなことがあるか、今何をするべきか一緒に考えてもらえるはずです。
4. ③両立の時期
介護の平均期間は約5年。長い方では10年以上続くこともあります。また、いつどんな状況変化が起きるかもわかりません。先が見えないのが介護の特徴です。
介護態勢が整って両立できる状態ができても、この先どのような変化があるのかわからないので、たとえ変化が起きたとしても両立していくことができるように、常に「情報をアップデート」していくことが大切です。
◎職場ですること
介護状況の変化は都度職場に共有していきましょう。また、働き方を考えることも大切です。利用できる制度はうまく活用して両立を目指します。
急な通院・ケアマネジャーとの相談などの対応で休まなければいけないことも考えられます。そうしたときに協力を得られるよう、決して一人で抱え込まず、周囲とコミュニケーションをとっていくことが大切です。
◎介護ですること
状況変化に関しては、ご家族間でも共有していきましょう。介護者の状況によっては新たなサービス導入の検討をしたり、施設入居を考えたりする必要もあるかと思います。また、民間の介護保険外サービスの中には、介護保険だけではまかないきれない様々なニーズにこたえる新しいサービスが生まれつつあります。地域によってばらつきはありますが、
利用できるものはないか、常にアンテナを張り情報収集をすることが望ましいです。
どんな時も念頭に置いておきたいのは「いかに負担を減らすか」ということです。サービスは積極的に活用し、自分が頑張りすぎないこと。先の見えない介護期間を乗り切るために最も重要なことは「自分を大切にすること」です。ストレスマネジメントに気を配り、程よくリフレッシュしながら負担の軽減を図っていきましょう。
※この記事は2023年4月時点の情報をもとに作成されており、制度内容等は変わる場合があります。