1. 介護保険サービスを利用して、介護のプロに頼る
記事冒頭の写真は、母が自宅で訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)を受けているところを撮影したものです。
訪問リハは主治医の指示に基づき、リハビリの専門職である作業療法士や理学療法士などが利用者の家を訪問し、歩行や立ち上がりなどの機能訓練や、食事やトイレなどの日常生活動作の助言や改善などを行います。
母は手足が不自由なので、週1回のペースで作業療法士さんに来てもらって、歩行訓練や筋力トレーニングを行っています。
訪問リハのほかにも、ホームヘルパーが利用者の家を訪問して食事の準備や介助、洗濯や掃除などの生活のサポートを行う訪問介護や、看護師が家を訪問して医療的ケアを行う、訪問看護などがあります。
また下の写真にある手すりは、福祉用具のプロである福祉用具専門相談員に相談して、自宅に設置しました。母の立ち上がりのサポートのために、利用しています。
これらはすべて公的な介護保険制度で利用できるもので、介護保険サービスといいます。65歳以上で介護が必要と判断されれば、誰もが介護のプロの力を借りられます。40歳から64歳の方は、特定の病気で介護が必要な場合のみ、利用可能です。
介護保険サービスの料金負担の割合は、利用者の所得に応じて1割~3割となっていて、残りは税金や介護保険料で賄われます。こうした介護保険サービスを利用するためには、何から始めればいいのでしょう?
2. まずは地域包括支援センターに相談する
最初は中学校の通学区域に1つはある、地域包括支援センター(以下、包括)に相談してみましょう。公的な無料の相談窓口で、介護に関する相談を受けつけています。
包括には専門職(保健師、主任ケアマネジャー、社会福祉士)がいて、家族の困り事に応じて、それぞれの専門分野の知識を生かして、対応してくれます。
地域によっては名称が異なり、「高齢者相談センター」などの場合もあります。まずは親が住んでいる地域を担当している包括がどこにあるかだけでも、チェックしておきましょう。混んでいる場合もあるので、電話で予約してから訪問したほうがいいです。
3. 介護保険サービスを利用するために、要介護認定を受ける
包括に相談したあと、介護保険サービスを利用する流れになったら、次に行われるのが要介護認定です。
調査員が病院や家などを訪問して、家族の心身状態を調査する認定調査が行われます。このタイミングでかかりつけ医に、主治医意見書の作成を依頼します。医師は介護保険サービスの必要性を、医学的な視点から意見します。
認定調査の調査結果と主治医意見書に基づき、原則30日以内に7段階の要介護度(要支援1~2、要介護1~5)が決定しますが、非該当と判定される場合もあります。
この要介護度に応じて、受けられる介護保険サービスや毎月のサービスの上限額が決定します。上限額の範囲内であれば、利用者の負担割合は1割から3割ですが、上限額を超えてサービスを利用すると、超えた分は全額自己負担となります。
また介護保険サービスを利用するための計画書をケアプランといい、要介護度が要支援であれば包括が、要介護であればケアマネジャーが作成します。このケアプランに基づいて、決められた曜日や時間に介護保険サービスが提供されるようになります。
4. なぜ介護のプロの力が必要なのか?
そもそも介護のプロに頼らなくとも、家族だけで介護はできると思っている方もいるかもしれません。また介護を受ける親が他人を家に入れたくない、介護のプロの力を借りなくても自分でできると言って、受け入れを拒否するかもしれません。
親子ともに元気なうちは、介護の負担が少ないので家族だけでも介護は回ります。しかし加齢によって身体機能や認知機能が衰えていくにつれ、次第に介護の負担は増え、多くの時間を取られるようになります。
そうなったときに、介護を続けながら仕事や家事、育児を両立できるでしょうか? 将来を見越して、早いうちから介護のプロの力を借りておくことで、終わりの見えない介護への不安の解消につながります。
またひとりで介護を丸抱えした結果、多くのストレスを抱えて疲弊し、社会から孤立してしまうケースがあります。孤立すると他人の目が届きにくくなり、介護虐待につながる場合もあるので、社会との接点を持つためにも介護のプロの力は必要です。
わが家の場合は、ヘルパーさんに燃えるゴミを捨ててもらうところから始めました。最初は週1回の利用でしたが、母の認知症が進行するにつれ、買い物や食事、洗濯や掃除など、介護のプロに頼る場面が増え、今では毎日介護保険サービスを利用しています。
人の助けを借りるなんて恥ずかしいと思う方もいますが、介護のプロに頼ることは決して恥ずかしいことではありません。親を守るためにも、そして介護者自身が介護で疲弊しないためにも、介護のプロの力は積極的に借りてください。