訪問入浴介護は、介護保険で受けられる在宅サービスのひとつです。
自力での入浴が難しい方や、家族のサポートだけでは入浴が難しい方に向いています。
今回は、訪問入浴介護について紹介します。
 

1. 訪問入浴介護とは

訪問入浴介護は、看護職員1名と介護職員2名の計3名のスタッフが利用者の自宅に訪れ、専用の浴槽を使用して入浴のサポートを行うサービスです。
 
自力での入浴が難しい方や家族のサポートだけでは入浴が難しい方に向いています。
 
デイサービスなどの施設に通わなくても、自宅で入浴介助を受けられるので、外出が難しい方には助かるサービスです。
 

2. 訪問入浴介護の利用条件

訪問入浴介護の利用条件は次の通りです。
 
・要介護1〜5の認定を受けている方 
・主治医から入浴を許可されている方
 
なお、要支援1・2の方は「自宅に浴槽がない」「疾病などの理由で通所施設などでの入浴が困難」といった条件に該当する場合、「介護予防訪問入浴介護」を受けられます。
 

3. 訪問入浴サービスの流れ

訪問入浴介護のサービスは、以下のような流れで行われます。
 
1.入浴前の体調確認  
事故防止のため、入浴前後に、看護師が体温・脈拍・血圧・呼吸の測定を行い、身体状態をチェックします。
 
体調が優れない場合は、手足などの一部分のみお湯に浸す「部分浴」や、身体を温かいタオルで拭く「清拭」にとどめる場合もあります。
 
2.入浴準備・脱衣
健康状態に問題がなければ、浴槽など入浴に必要な機材を搬入し、お湯の準備を行います。(床はマットや防水シートで保護)
 
入浴準備が整ったら、介護スタッフにより脱衣の介助を行い、ベッドから浴槽へ移動します。寝たきりの方は、担架を使って安全に移動します。
 
 
3.入浴・上がり湯
洗髪や洗身の介助を行います。皮膚が乾燥していないか、傷がないかなどをチェックしながら洗っていきます。
 
最後にシャワーで上がり湯をかけて、入浴を終了します。入浴時間は通常10分程度です。
 
 
4.着衣・入浴後の体調確認
浴槽からベッドへ移動して着衣の介助を行います。
看護師が体温・脈拍・血圧・呼吸を測定し、必要があれば軟膏の塗布などの処理を行ってくれます。
 
5.片付け
使用した機材を綺麗に洗浄・消毒して片付けます。移動した家具等があれば、元の位置に戻し、サービスの提供が終了します。
 

4. 訪問入浴介護の所要時間

準備から片付けまでを50分前後で行う事業所が一般的です。
 
・入浴前(体調確認・浴槽の準備・脱衣):15〜20分
・入浴:10分程度
・入浴後(着衣・体調確認・浴槽の片付け):15〜20分
 

5. 訪問入浴介護の費用

1回あたりの費用の目安は以下の通りです。
※介護保険1割負担の場合
 
【要介護1〜5の場合】
・全身浴:1,266円
・部分浴:1,139円
・清拭:1,139円
参考 :厚生労働省「介護報酬の算定構造
 
 
【要支援1・2の場合】
・全身浴:856円
・部分浴:770円
・清拭:770円 
参考 :厚生労働省「「介護報酬の算定構造」
 
要支援1・2の方が利用する「介護予防訪問入浴介護」の場合は、訪問するスタッフが少ない分、費用が少し安くなります。
 

6. 訪問入浴介護を利用するときのポイント

訪問入浴介護の利用を検討する際には、以下のポイントに注意しましょう。
 
◾️自宅の受け入れ環境の確認が必要 
浴槽を室内に持ち込むため、自宅の環境整備が必要です。
 
介助を行う部屋は、浴槽の設置とスタッフの作業スペースとして、2〜3畳ほどの広さが必要です。利用前には、事業者に自宅の状況を確認してもらいましょう。
 
また、駐車場がない場合は、事業者が警察署で駐車許可証の発行を受けているか確認しましょう。
 
事業者が駐車許可証の発行を受けていない場合は、家族が警察署に行き、許可証を発行してもらう対応が必要です。
 
◾️医療行為のサービスは受けられない 
訪問入浴介護では、看護師が同行するため医療行為が受けられると勘違いする利用者もいるようです。しかし、訪問入浴介護の目的は「入浴」であるため、痰の吸引や褥瘡の処置といった医療行為は認められていません。
 
訪問入浴介護で看護師ができることは、血圧測定などのバイタルチェックや湿布の張り替え、軟膏の塗布など簡易な処置が中心です。
 
 
◾️利用する人の心情に配慮する 
訪問入浴介護では、浴槽や機材の搬入が重労働なため、男性スタッフが多い傾向です。
 
そのため、女性の利用者の場合で男性スタッフから介助を受けることに抵抗がある方は不快感に感じてしまうかもしれません。
 
利用前には、本人の希望を確かめ、場合によっては、同性による介助が可能かどうか事業者に相談してみましょう。
 
利用者本人が快適にサービスを利用できるように配慮することが大切です。
 

7. 訪問入浴介護の事業者選びのポイント

訪問入浴介護の事業者を選ぶ際には、以下の5つのポイントを確認して決めていきましょう。
 
・浴槽や備品の洗浄・消毒、感染症対策などの衛生管理は行き届いているか
・体調が急変した場合など緊急時の対応方法はどうなっているか
・体調不良での日程変更は可能か
・キャンセルの扱いやキャンセル料がかかるのか
・利用者・家族の要望にどの程度対応してくれるか
 
 
ケアマネジャーからも事業者選びのアドバイスをもらえますが、最終的に事業者を決めるのは利用者やその家族です。
 
パンフレットやホームページを見るだけでなく、実際にその事業者を利用した人に感想を聞いてみるのも参考になります。できる限りの情報を集めて   「ここなら大丈夫」と思える事業者を選びましょう。
 

8. 訪問入浴介護を利用したい場合はケアマネジャーに相談しよう

自宅のお風呂での入浴が難しい方や外出が難しい方が利用できる訪問入浴介護は、利用者の身体を清潔にするだけでなく、心身機能や生活の質の維持・向上につながる介護サービスです。 
 
訪問入浴介護を利用するには要介護認定を受け、ケアプランを作成することが必要になります。利用を検討している方は、まずはケアマネジャーに相談してみましょう。
 
この記事の提供元
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著者:中谷 ミホ

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級

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