これまで5回の記事で「ダブルケアとは何か?」についてお伝えしてきました。今回の記事ではダブルケアラーの内面について、さらに制度のすき間を埋めるようなサポートもお伝えしていきます。

1. ダブルケアラーの悲鳴

1.100人いれば100通りのダブルケア
年齢、家族構成、住んでいる場所、仕事、預金額、通っている学校・保育園、友人、ご近所さん、病気、必要な介護、これまで経験したことなど一人ひとり違います。そのため「これが正解」という一律的なケアや対応はありません。しかし中には「正しいケア」や「正しい対応」を探して、自分を責める方もいらっしゃいます。
 
コミュニティや当事者会に参加して、ダブルケアの仲間を探してみるのもよいと思います。当事者であれば共感出来るような思いや悩みはたくさんあると思います。自分自身のケアのことを話し、他の人のケアについて聞いていくと「100人いれば100通りのケアや思いがある」ということに気づかれるのではないでしょうか。良かったら参加してみてください。
 
2.相談できない、頼れない
「こんなことに悩んでいるって言ったら周りに変わってると思われるかもしれない」「私よりも、もっと大変な人がいる」と相談したり、頼ったりすることに対してためらいを感じている方はとても多いのです。
 
相談がないということは表面化されず、周りからは困りごとがわかりにくいため、 支援につながりにくくなります。ダブルケアは介護と子育てが同時進行している状態で、とても大変な時期です。遠慮せずに周りに相談し、頼っても大丈夫です。
 
3. わかりにくい行政窓口
2023年8月時点でダブルケアの相談窓口を設置しているのは大阪府堺市だけです。堺市ではダブルケアの相談窓口設置に加え、「認定こども園、保育所などの利用への配慮」、「特別養護老人ホームの入所基準の緩和」、「緊急の家族支援策としてのショートステイ事業の利用日数を延長」というような支援策が設けられています。
 
ほとんどの行政は介護、子育ての窓口は別々に設置されており、自治体によって対応はさまざまであるため、対応に大きな差があります。何もわからないまま窓口へ行くと、タイミングによっては門前払いされることもあります。窓口をたらい回しにされることもあり、心身ともに疲れ果ててしまいます。
 
それでも諦めずに困っていることやダブルケアの状況などを詳しく窓口の職員へ伝えてください。職員は状況がわかってくることで対応をしてくれるようになります。諦めないことが大切です。
 
4.自分自身をケアできない
介護、子育てをしながら仕事もしていると圧倒的に時間がありません。人によっては何日も徹夜するなど、眠る時間もほとんどないという方もいます。ダブルケアラーの方は他の人のケアに意識が向きすぎて、自分自身の身体に意識を向けることができずに限界までがんばってしまいます。過労で倒れてしまったり、ダブルケアラー自身も病気になってしまうこともあります。
 
まずは使える制度を利用して、ケアの負担を軽くしていくことが大切です。そしてご自身に合ったセルフケアの方法を探して、自分自身をいたわってあげてください。
ダブルケアラーの悲鳴

2. 制度の隙間を埋めるサポート

1.コミュニティに入る
コミュニティに参加してダブルケアの仲間を探してみるのをおすすめします。悩みを話すだけでも気は楽になります。また制度、サービスについての情報交換が出来る場でもあります。自分自身で調べるよりも体験者から聞く方がより多くの情報を得ることができます。

 

2.エッコロ共済
エッコロ共済とは生活クラブが運営している、制度のすき間を埋めてくれるようなサポート制度です。「困ったときはお互いさま!」が合言葉です。制度内容はそれぞれの生活クラブによって異なります。山梨、静岡、青森、ふくしま、福祉クラブ、滋賀では2023年8月時点では行っていません。

具体的に東京都の生活クラブのエッコロ共済の活動例を見ていきましょう。

①困ったことを手伝うケア 
庭の水やり、ごみだし、ペットの世話、鍵の預かり、留守番、引っ越しの手伝い、粗大ごみや重いものの移動、着物の着付けの手伝いなどをお願いできます。

②子どもを預かるケア(送迎を含む)
子どもの預かりと送迎をお願いできます。

③加入者、または家族の入院・在宅療養時のケア
通院・入院時の付き添い、簡単な家事(掃除・洗濯・買い物・食事の準備など)、家族の見守り等をお願いすることができます。

基本的に介護など専門的なことはお願いできません。介護保険サービス、子どもの一時預かり等のものではなく、ちょっとしたお願いことができるサービスです。

3.ナース家政婦
看護師が家政婦としてサポートしてくれるサービスです。一般的な家事支援サービスから、子育て支援、産前産後サポート、外出・受診サポート、入院中の付き添い、介護支援、健康相談、メンタルサポート、お看取りサポートなど幅広く対応することができます。

基本的にナース家政婦は医療行為を行えません。しかし場合によっては経管栄養、吸引、創傷(そうしょう)処置、褥瘡(じょくそう)処置、与薬、酸素のオンオフ、インシュリンなどご家族が在宅で行えるような医療行為を行うことができます。必要な場合は契約の際に確認してください。

 
ナース家政婦が提供するサービスの中でおすすめなのが「受診同行」です。介護保険内のサービスでも通院介護がありますが、使い勝手が良くありません。通院介護ができることは病院へ行くまでの支度、病院までの移動、移動時に発生する乗り降りの介助、受診の手続き、処方薬の受け取りなどです。
 
病院内では原則、病院スタッフが介助するため待ち時間、診察は介護保険内のサービスを利用できません。待ち時間、診察室内での医師とのやり取りに介助が必要であれば、訪問介護か訪問看護の自費サービスを利用する必要があります。
 
看護師が受診サポートする場合、介護保険内のサービスに加え、サポート中の体調確認や急変時の対応ができます。診察中も医師とのやり取りをサポートします。医師が診察中に話していたことをわかりやすくご本人やご家族にお伝えすることができます。またお薬の説明をすることも可能です。
制度の隙間を埋めるサポート

3. まとめ

心身ともに疲弊しきる前に公的な制度や自費サービスなどを最大限に活用してみてください。そして誰かに相談することを遠慮せず、1人で抱え込まないでくださいね。
 
 
[参考]
大阪府堺市|ダブルケア相談窓口
看護師家政婦紹介|ひかりハートケア


 
 
 
この記事の提供元
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著者:山本みどり

大学病院のNICU(新生児集中治療室)で勤務後、精神科、訪問看護を経験。
現在は小児発達ケア専門訪問看護ステーションで発達障がいと診断された子どもやそのご家族へ小児発達ケアを行っている。
食から身体のことを整えたいと思い、プライベートでは中医学・薬膳を学んでいる。

【経歴】
看護師/Webライター
看護師歴6年 NICU、精神科、訪問看護(成人・精神特化・小児発達ケア)
家政婦やベビーシッターとしても働いている。

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