1. 老老介護とは
老老介護とは、65歳以上の高齢者を同じく65歳以上の高齢者が介護している状態のこと。
「高齢の夫婦が配偶者を介護する」「65歳以上の子どもが高齢の親を介護する」などのケースがあります。
2. 老老介護の現状
厚生労働省が今年7月に発表した「2022年国民生活基礎調査 」によると、在宅介護をしている家庭のうち、65歳以上の「老老介護」の割合が63.5%だったことが判明しました。6割を超えたのは調査開始以来、初めてのことで、過去最高の割合です。
また、75歳以上同士の「老老介護」の割合は35.7%と、在宅介護をする家庭のほぼ3分の1を超えています。
2025年度には、団塊の世代のすべてが75歳以上となり、介護が必要な高齢者が増えるため、老老介護の割合はさらに高まると予想されます。
老老介護が増加する原因には、少子化や核家族化などの社会環境の変化や、他人に助けを求めることへの抵抗感、金銭的な問題などさまざまな要素が絡み合っていると考えられます。
実際に、筆者がケアマネジャーとして担当していたご利用者の中にも「頼れる家族や親族が近所にいない」「経済的事情」などの理由で「老老介護」をしているケースは多くありました。
3. 老老介護の問題点
次に、老老介護の問題点についてみていきましょう。
◾️身体的・精神的負担が大きい
毎日の介護は、高齢の介護者にとって大きな負担です。要介護者の身体を抱えたり、起こしたりすることも多く、介護者の体力を消耗します。介護者が外出などでリフレッシュできる時間が持てなくなり、精神的に追い込まれることもあります。
◾️共倒れに陥りやすい
相対的に体力が弱まっている高齢の介護者にとって、介護の負担は相当なものであり、 無理をすることで、介護者が体調を崩してしまう可能性があります。
介護者が体調を崩して介護の継続が不可能となってしまうと、まさに共倒れの状況となり、生活自体が回らなくなってしまうでしょう。
筆者が担当した老老介護のケースでも、認知症の夫を介護する妻が病気になり、介護を続けることが難しくなったケースや、寝たきりの妻を介護する夫が、腰を痛めて介護ができなくなったことがありました。
◾️「介護疲れ」からの問題
介護の負担が積み重なると、介護疲れから深刻な問題に発展する可能性も少なくありません。
時折報道されている高齢者虐待などは、二人暮らしの老老介護に多く発生しています。「老老介護で限界だった」「一緒に死のうと思った」などの言葉もよく見聞きします。
老老介護による殺人や虐待を防ぐためには、介護者の身体的・精神的な負担を軽減することが重要です。
4. 老老介護を乗り切るために
老老介護を乗り切るためには、以下の対策が考えられます。
◾️地域包括支援センターへ相談
解決策のひとつとして、老老介護での困りごとや心配事があれば、地域包括支援センターへ一度相談してみましょう。
地域包括支援センターは、高齢者の暮らし全般の相談窓口として、全国の市町村に設置されています。
保健師や主任ケアマネジャー、社会福祉士といった医療や保健、介護、福祉の専門スタッフが在籍しているので、「今の状況にはこういう対策ができる」など、さまざまな悩みに対する適切なアドバイスをしてもらえます。また、必要な場合は、介護保険の申請も可能です。
◾️介護サービスを利用する
介護サービスの利用も老老介護の負担を減らす対策のひとつです。
要介護認定を受けている人は、介護保険を利用してさまざまな介護サービスが利用できます。自宅での生活を希望する場合は、訪問介護やデイサービスを利用すると、介護者の負担を減らすことができます。
「どうやって介護サービスを使えばいいのかわからない」という方は、担当のケアマネジャーがサービス事業者とのパイプ役をするので心配ありません。
また、介護保険のサービス以外にも利用できるサービスはあります。
例えば、市町村が高齢者支援事業として行っているサービスには、配食サービスや外出の付き添い、家事援助、安否確認などがあります。市町村によってサービス内容に差があるため、詳しくは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなどに問い合わせてみるとよいでしょう。
◾️施設への入居を検討
施設入居が最も介護の負担を軽減できる方法と言えます。
施設によっては、夫婦で入居可能な場合もあるので、一緒に生活を送りながら、介護はプロのスタッフに任せることが可能です。要介護者にとっても安心できる環境と言えるでしょう。
すぐの入居を希望していなくても、施設の申し込みだけでも済ませておくと、介護者の精神的な余裕につながります。
施設を探す際も、担当のケアマネジャーに相談すると、条件に合った施設を紹介してもらえます。
5. おわりに
老老介護には、共倒れなどのリスクがあります。地域包括支援センターへの相談や、介護サービスの利用など、周囲と関わりながらできるだけ介護者の負担を減らしていくことが重要です。
また、介護は長期間になることもありますので、無理をせず施設入居も検討していきましょう。