介護は、親の近くにいないとできないと思っている方が多くいます。つきっきりで介護が必要になるケースはありますが、体が不自由だったり、認知症だったりしても、離れたまま親の介護はできます。

1. 介護は親子が近くにいないといけないもの?

もしも離れて暮らす親が認知症になったり、脳卒中で倒れたりしたら、子が親と同居して介護しなければならないと考えるかもしれません。あるいは離れて暮らす親の介護は難しいからと、嫌がる親を介護施設に預けようとするかもしれません。
 
他にも子の家に親を呼び寄せて介護したり、子の家の近くに引っ越してもらったりして介護を続ける方もいます。逆に子が仕事を辞めて、故郷に帰るケースもあります。
 
介護の経験がなかったり、情報収集が十分でなかったりすると、親と子の距離を近づけて不安を解消しようとしがちです。
 
つきっきりの介護が必要になる場合は親子の距離が近いほうが安心ですが、親が自立できている状態でも、介護が必要になったらすぐに引っ越しをしようとする方もいます。親の介護をするためには、必ず親子がそばにいないとだめなのでしょうか?

2. 離れて暮らす親を10年以上、それぞれの自宅に住み続けながら介護してきた

わが家は岩手の自宅で暮らす認知症の母を、わたしの家がある東京へ呼び寄せず、また故郷である岩手へUターンせずに、通いで介護を10年以上続けています。
 
母は岩手から出たくないし、わたしも岩手へは帰りたくない。親子の希望を叶えるために始めたのが、遠距離介護でした。
 
東京から東北新幹線を使って、3時間半ほどで岩手の実家に到着します。新型コロナウイルスの感染拡大前は東京2週間、盛岡1週間のペースで遠距離介護をしていました。しかし首都圏で感染が広がると帰省が難しくなり、東京2か月、盛岡1か月のペースに変更しました。
 
遠距離介護の日常は、自分のブログやSNSなどで発信していますが、離れて暮らす認知症のお母さんをひとりにして大丈夫なのか、不安はないのかとよく質問されます。
 
不安はゼロにはならないけど、離れていても親の介護はできるし、実際10年以上続けていると回答しています。なぜ、親と離れたまま介護ができるのでしょう? 次の2つがあったからだと思っています。 

3. 介護保険サービスを活用している

1つ目は、介護保険サービスの利用です。ホームヘルパー、デイサービス、訪問リハビリ、訪問薬剤師、訪問看護など、医療・介護職の方が毎日家に来て、母の様子を見てくれます。
 
認知症の母は料理ができませんし、決められた曜日にゴミを捨てられません。お薬も決められたタイミングで飲めませんし、毎日点眼が必要な緑内障の目薬も忘れてしまいます。
 
こうした生活を援助してくれるのが、週6日利用しているホームヘルパーさんです。料理やゴミ捨て、お薬の見守りなど、わたしが不在の時、母をサポートします。
 
また週4回利用しているデイサービスも、母の生活を支えています。デイのスタッフさんが朝に車で自宅まで迎えに来てくれて、夕方までデイサービスで過ごします。栄養のバランスを取れた食事が提供され、母ひとりでは入れない入浴介助もしてもらえます。
 
このように母と遠く離れていても、介護保険サービスの体制をしっかり整えておけば、介護はうまく回っていきます。

4. 介護と無関係の道具でも、介護に活用できる

2つ目は、道具の活用です。介護で使う道具というと、手すりや車椅子など福祉用具を思い浮かべるかもしれません。わが家でも介護保険を利用して、5台の手すりをレンタルしています。
 
しかしここでいう道具は福祉用具ではなく、スーパーや家電量販店などで売っている介護とは無関係の便利な道具を、介護に取り入れるという意味です。
 
例えば熱中症対策のために取り入れているのが、下の写真にある「スマートリモコン」です。家にある赤外線タイプのリモコンをスマートリモコンに集約すると、スマートフォンから家電の遠隔操作ができるようになる便利なツールです。
 
認知症の母はテレビとエアコンのリモコンの違いが分かりませんし、操作もできません。真夏に誤って暖房のボタンを押したり、真冬に冷房をつけてしまったりして危険なため、エアコンのリモコンは母の見えないところに隠し、わたしが遠隔で操作をしています。
 
スマートリモコンは、室温や湿度をリアルタイムに把握できるだけでなく、予約の設定も細かくできます。母が朝起きる前に居間の冷房をつけて、デイサービスに行く前に電源を切るよう予約したり、デイサービスから帰ってくる前に部屋を冷やしておいたりもできます。
 
他にも、固定電話を買い替えました。岩手の実家には不用品買取業者や健康食品など、特殊詐欺につながりかねない迷惑電話が多く掛かってきます。以前はこうした電話を母が受けていて、不安でした。
 
しかし今は固定電話に登録されていない相手からの電話は呼び出し音が鳴りませんし、着信履歴をネットで検索して、迷惑電話だったらブロックするようにしています。
 
スマートリモコンや固定電話以外にも、たくさんの道具を使って離れて暮らす母の生活をサポートしています。これら道具については、わたしの書いた本『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』(翔泳社)にまとめたので、参考になさってください。
介護と無関係の道具でも、介護に活用できる
この記事の提供元
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著者:工藤 広伸

介護作家・ブロガー
1972年岩手県盛岡市生まれ、東京都在住。2012年より岩手で暮らす認知症の母を、東京から通いで遠距離在宅介護を続けている。途中、認知症の祖母や悪性リンパ腫の父も介護し看取る。介護に関する書籍の執筆や、企業や全国自治体での講演活動も行っている。認知症介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。著書に『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』(翔泳社)、『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)ほか
介護ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/

音声配信voicy『ちょっと気になる? 介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

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