ダブルケアとは介護と子育てが同時進行している状態です。この記事では3人のケースから介護が行き詰まってしまう場面を読み解き、その場合の対処法をお伝えしたいと思います。

1. 突然の介護

Aさん(42歳、女性、専業主婦)のケース
Aさんの家族は夫(会社員)と子ども2人(長女10歳、次女7歳)です。
両親は近隣に住んでいます。姉(45歳)がいて遠方に住んでいます。
 
① ダブルケアが始まったきっかけ
父親が脳梗塞で倒れて右半身に麻痺が残ってしまい介護が必要になりました。父親と同居していた母親は高齢で姉も遠方在住のため、Aさんが介護を担うことになりました。
 
②大変だったこと
介護申請は出来たものの父親は他人のお世話になることに対して抵抗感が強く、訪問ヘルパーが来ることやデイサービスに行くことを嫌がりました。そのためAさんは夫と子どもを送り出したあと、毎日実家へ介護に行かなければなりませんでした。
 
Aさんが行っていた介護はトイレ介助、移動介助、食事介助などです。これに加えてさらに日々の買い物や掃除など生活に必要なこと全般を担っていました。自宅に帰っても何かあると母親から電話が来るため、気は抜けませんでした。子ども達の学校行事中にも母親に呼び出されることもあり、子ども達に対して申し訳ない気持ちを感じていました。
 
父親も思うように身体を動かせない苛立ちからか、Aさんへ強く当たってしまうこともありました。慣れない介護と父親からの言葉で心身ともに疲弊してしまいました。
 
③対処法
今まで身の回りのことをご自身でされてきた方が突然、介護が必要になり、誰かの手を借りなければ生活が出来ない状態になるということはとても苦痛を感じることだと思います。介護に対して抵抗感を感じるということは当然のことかもしれません。しかしAさんのように父親の身の回りのことをまで介護をしていると、Aさんはの心身ともにさらに疲弊していってしまいます。
 
まずは生活援助など身の回りの介護から導入していく方法も良いかもしれません。介護保険内で提供出来る介護には大きく分けて身体介護と生活援助の2つがあります。身体介護は排泄介助、入浴介助、外出援助、食事介助、通院介助などです。生活援助は調理、掃除、洗濯、寝具の整頓、買い物などです。
 
家事ができる同居家族がいると介護保険内で生活援助を受けることはできませんが、同居家族が高齢であったり、持病があったりして家事が難しいと判断されると、生活援助のサービスを受けられることもあるためケアマネージャーに相談してみるとよいと思います。
 
また、介護保険でのサービスは制約があることがあるため、自費サービスを導入することもよいかもしれません。料理代行、掃除代行、買い物代行など代行サービスではそれに特化したサービスを受けることが出来ます。また家政婦は家事に加え、介護など幅広くサービスを行うことが出来ます。
 
Aさんがインフルエンザにかかってしまったり、疲弊しきって倒れてしまったりすると介護が立ち行かなくなってしまいます。父親を含め、家族内で今後どのようにしていくか話し合いをしておくとよいと思います。親子だと感情的になってしまうことがあるため、ケアマネージャーや看護師など第三者を介するとうまくいく かもしれません。ケアマネージャーや看護師等に事前に相談してみることをおすすめします。
 
突然の介護

2. 価値観のズレ

Bさん(45歳、女性、パート勤務)のケース
Bさんの家族は夫(会社員)と子ども3人(長女15歳、長男12歳、次男8歳)です。義両親と同居しています。
 
①ダブルケアが始まったきっかけ
義父の物忘れがひどくなってきたと思っていたら、何度も同じことを聞いたり、財布や鍵など大事なものを置いた場所を忘れてしまったりするようになってきました。おかしいと感じて病院へ行くと認知症と診断され、Bさんが介護を担うことになりダブルケアが始まりました。

 ②大変だったこと
外出しても帰り道を忘れてしまい、帰れなくなっていた義父を近所の人が保護してくれたことがありました。「家に帰る」という義父に対して、「ここがお家だよ」と話しかけても「家に帰るんだ」と堂々巡りです。
 
財布や家の鍵、車の鍵をなくすため、毎日家の中を探さなくてはなりませんでした。義父に対してネガティブな感情を抱いてしまい、イライラをぶつけてしまうこともありました。義父はもともと怒りっぽい性格ではありませんでしたが徐々に怒りっぽくなり、よく怒るようになっていきました。帰り道が分からなくなることもあり、義父が外出しないように見守りや声掛けをしたり、失くし物を探したりと気が抜けず、精神的につらくなっていきました。
 
またBさんは仕事にやりがいを感じており、できれば仕事を続けたまま介護と子育てをしたいと考えています。義父の施設入所を考えていましたが、夫は「介護は家族がするもの」という価値観を持っており介護と子育てに専念出来るようにと仕事を辞めるよう提案してきます。施設入所や介護負担の分担について話し合いをしてもBさんの気持ちを分かってもらえず孤立感を感じるようになっていきました。
 
③対処法
誰かを説得して納得してもらうということは難しいことで時間がかかります。Bさんにとって、大切なことは1人で抱え込んで精神的に疲弊しきってしまう前に誰かに悩みを相談することかと思います。
 
介護の総合的なことであれば地域包括支援センター、認知症であれば認知症カフェに行くのもよいと思います。認知症カフェとは認知症になった方やそのご家族が、当事者の方や専門家とお話が出来る場所です。認知症の介護をしているという同じ境遇の方の集まりのため、悩みも相談しやすいでしょう。また専門家もいるため、具体的なアドバイスを求めることも出来ます。認知症カフェは毎日やっているわけではありませんので詳しくは地域包括支援センターでお尋ねください。悩んでいる方は1人で抱え込まないでくださいね。
 
 
価値観のズレ

3. 制度の狭間

Cさん(38歳、女性、会社員)のケース
Cさんはシングルマザーで子ども2人(長男4歳、次男2歳)がいます。子ども達は保育園に通っています。両親は離婚しており、母親はCさんと子ども達と一緒に住んでいます。
 
①ダブルケアが始まったきっかけ
母親が尻もちをついた時、腰椎圧迫骨折をしてしまい、介護が必要になりました。
 
②大変だったこと
骨折する前、母親は率先して子ども達の保育園のお迎え、家事など家のことをしていました。また長男が熱を出した時はCさんの代わりにお迎えに行ってくれました。しかし母親が腰椎圧迫骨折となったことでCさんが子育てと家事のすべてをすることになりました。
 
それに加えて母親は歩行器を使って歩いていると足に力が入らなくなり座りこんでしまったり、動けなくなったりすることがあり、仕事中のCさんを電話で呼び出していました。Cさんは会社員として働いていましたが、職場の理解があり、仕事を抜けて介護や子どものことを行っていました。
 
シングル家庭ということもあり、相談出来る相手や介護と子育てを手伝ってくれる人が周りにおらず、介護と子育て両立に大変さを感じていました。
 
③対処法
シングル家庭は他に介護や子育ての負担を分担出来る人がいないことが多く、ケアの負担が1人に集中しやすくなります。
 
介護保険から、自費サービス、会社の制度などを活用して介護や子育ての負担を軽減する必要があります。まずはケアマネージャーに相談して、可能な範囲で負担を軽くしていくことから始めるとよいと思います。
 
制度の狭間

4. まとめ

介護が行き詰まる原因は2つあります。介護負担が1人に集中すること、相談出来ずに1人で抱え込んでしまうことが原因です。介護保険サービスなどを活用することができれば介護の負担が軽くなります。
 
子育てをしている世帯にとっては介護が始まるということはダブルケアもが始まることでもあります。子育てをしながら介護をするために、1人では悩まずに周りに相談しながらサービスや制度を使ってみてくださいね。
 
 
次の記事は子育てに焦点を当てた記事です。
 
この記事の提供元
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著者:山本みどり

大学病院のNICU(新生児集中治療室)で勤務後、精神科、訪問看護を経験。
現在は小児発達ケア専門訪問看護ステーションで発達障がいと診断された子どもやそのご家族へ小児発達ケアを行っている。
食から身体のことを整えたいと思い、プライベートでは中医学・薬膳を学んでいる。

【経歴】
看護師/Webライター
看護師歴6年 NICU、精神科、訪問看護(成人・精神特化・小児発達ケア)
家政婦やベビーシッターとしても働いている。

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