① 子どものことが後回しになる
介護は突然始まります。介護体制を整えるために地域包括支援センターで相談したり、介護申請したりと目まぐるしく日々が過ぎていきます。目の前の介護に必死になってしまいがちです。
子どもはとても優しく、親御さんのことを繊細に感じ取ります。忙しく介護している親御さんを見て、「今、お母さんは大変なんだな。」と感じると「少し待っててね」と言われても「やだ。どうして?」と言わずに「うん。分かったよ」と我慢してくれることがあります。親御さんの役に立ちたい、楽にしてあげたいと家事や介護のお手伝いをしてくれることもあります。
後からそれに気づき「もっと子どもに甘えさせてあげたら良かった」「もっと子どもと向き合えば良かった」と後悔される親御さんも少なくありません。
介護を他者に任せることはできますが子育てをができるのは親御さんと家族だけです。介護のことはどんどん専門家に任せて子どものことを優先してあげてください。
②子どもの体調が不安定になる
ダブルケアを一生懸命がんばっている親御さんを見て、子どもは「良い子でいよう」と自分の気持ちを抑えてしまうことがあります。またダブルケアで疲れ果てて余裕が無くなると、子どもへネガティブな言葉かけをかけてしまうこともあります。
そういったことが続くと、子どもの心は疲弊していきます。子どもは自分の気持ちや体調を言葉で表現することが難しいため、精神的負担が増えてくると笑顔が少なくなる、眠れない、食欲が落ちるなどの変化も見られることがあります。夜泣きが激しくなる、おもらしをするようになることもあります。また生理が始まっている女の子の場合、生理痛がひどくなることもあります。
ダブルケアの負担を軽くして余裕を持ち、親御さんが笑顔でいられる時間を増やすことが大切です。子どもと向き合うためには時間と余裕が必要になります。1人で抱え込まずにまず周りに相談してみてください。
③不登校
ダブルケアと不登校、つながりがあまり無いのではと思われるかもしれませんが、Dさんのケースを読み解きながらその関係についてお伝えしていきます。
Dさん(39歳、女性、会社員)のケース
Dさんの家族は夫(会社員)と子ども(長男11歳)です。夫は単身赴任中で、両親と暮らしています。
・ダブルケアが始まったきっかけ
父親が認知症になり、主に母親が介護を担っていました。しかし母親が玄関先で転んで骨折してしまい、母親も介護が必要となりました。夫は単身赴任中ということもあり、Dさんは父親と母親の介護を一気に引き受けることになりました。
・不登校になった経緯
認知症の父親のケアと骨折している母親のケアのため、ぎりぎりのスケジュールで行動していたDさんには余裕がありませんでした。
徐々に長男は学校へ行くのを渋るようになっていきました。余裕のないDさんは「早く学校へ行きなさい」と追い立てるように学校へ送り出していたところ、ある日を境に学校へ行けなくなってしまいました。
・その後
子どものことを見ていなかったと後悔し、介護のことを見直すためにDさんはケアマネジャーと相談しました。ケアマネジャーからは父親の施設入所を勧められ、家族で話し合った結果、父親は施設へ入所することになりました。母親に関してもDさんの負担を和らげるようにサービスを組み直してもらいました。
また学校の先生やスクールカウンセラーと情報共有をして長男が登校できるようにさまざまな方面からケアを行いました。時間はかかりましたが、再び学校に行くことができるようになりました。
Dさんの場合、ケアマネージャー、学校の先生、スクールカウンセラーなどに相談しながら問題を解決していきました。
子どもにとって、自分自身の気持ちを表現するのは難しいことです。不登校は子どものSOSの表現の1つです。子どものSOSに気づいてあげてください。
④ヤングケアラー
子ども家庭庁によるとヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものことです。責任や負担の重さにより、学業や友人関係などに影響が出てしまう可能性があることが問題とされています。
・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
・障がいや病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている
・目の離せない家族の見守りや声掛けなどの気づかいをしている
・日本語が第一言語でない家族や障害のある家族のために通訳をしている
・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
・アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族の対応をしている
・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
・障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
・障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている。
子どもが介護や家事を手伝うこと自体は悪いことではありません。適度であれば家族の中でコミュニケーションが深まり、家族の絆が強くなります。また介護を通して「将来、人の役に立つ仕事をしたい」という将来の夢を抱いて医師や看護師、介護士を志す子どももいます。
問題なのは子どもが介護や家事を手伝わないと生活が回らないという状況に陥ってしまい、介護と家事を常時担わなければならない状態になることです。
ヤングケアラーの問題は比較的に新しい問題で、現時点で支援制度や窓口は整備中の段階です。ヤングケアラーとなっている子ども自身は情報にアクセスする機会が限られています。ヤングケアラーを適切な制度につなげるには親御さんをはじめ、周りの大人達が気づいてあげることが必要になってくるかもしれません。