ダブルケアとは介護と育児が同時進行している状態のことです。ダブルケアと仕事の両立は身体的・精神的につらく、離職を選択される方も少なくありません。しかし離職しても問題は解決せず、逆に身体的・精神的・経済的にも負担が増すことが分かっています。
 
この記事ではダブルケアによる離職、そして仕事を続けるためのポイントについてお伝えしていきます。
 

1. ダブルケアによる離職の現状

1.ダブルケア前後の就業状況
2016年に内閣府委託調査により、ダブルケア前後の就業状況の調査が行われました。
 
①ダブルケアが始まる前の就業状況
 
男性
「正規の職員・従業員」   75.0%
「非正規の職員・従業員(パート・アルバイトを含む)」   8.6%
「自営業、フリーランス等」   12.4%
「無業(専業主婦・主夫、学生、その他)」    3.9%
 
女性
「正規の職員・従業員」   36.0%
「非正規の職員・従業員(パート・アルバイトを含む)」    26.8%
「自営業、フリーランス等」   3.6%
「無業(専業主婦・主夫、学生、その他)」      33.6%
 
 
 
②ダブルケアが始まった後の就業状況
 
男性
「正規の職員・従業員」   65.7%
「非正規の職員・従業員(パート・アルバイトを含む)」   13.6%
「自営業、フリーランス等」   13.6%
「無業(専業主婦・主夫、学生、その他)」             7.0%
 
女性
「正規の職員・従業員」   23.7%
「非正規の職員・従業員(パート・アルバイトを含む)」   25.3%
「自営業、フリーランス等」   5.6%
「無業(専業主婦・主夫、学生、その他)」            45.4%




 
ダブルケア前後の就業状況を見てみると、男性の「正規の職員・従業員」は9.3%下がっているのに対し、「非正規の職員・従業員(パート・アルバイトを含む)」が5.0%上がっていることが分かります。また、女性の「正規の職員・従業員」は12.3%、「非正規の職員・従業員(パート・アルバイトを含む)」は1.5%下がっているのに対し、「無業(専業主婦・主夫、学生、その他)」は11.8%も上がっていることが分かります。
 
2.業務負担の変化
仕事をしている(「正規の職員・従業員」「非正規の職員・従業員(パート・アルバイトを含む)」「自営業、フリーランス等」)と回答した人のうち、ダブルケアが始まってから仕事の負担が変化したかについての調査結果です。
 
男性
「業務量や労働時間等を増やした」                     12.0%
「業務量や労働時間等を変えなくてすんだ」         47.9%
「業務量や労働時間等を増やしたかったが変えられなかった」   10.5%
「業務量や労働時間等を減らしたかったが変えられなかった」       11.0%
「業務量や労働時間等を減らした(うち離職して無職となったもの)」   2.6%
「業務量や労働時間等を減らした(無職となった者以外)」   16.1%
 
女性
「業務量や労働時間等を増やした」               
9.8%
「業務量や労働時間等を変えなくてすんだ」       30.0%
「業務量や労働時間等を増やしたかったが変えられなかった」   8.4%
「業務量や労働時間等を減らしたかったが変えられなかった」   13.1%
「業務量や労働時間等を減らした(うち離職して無職となったもの)」   17.5%
「業務量や労働時間等を減らした(無職となった者以外)」   21.2%
 
 
 
ダブルケアを理由に離職した人の割合は男性が2.6%に対して、女性が17.5%となっています。
 
3.仕事をしていると回答した人の今後の働き方に対する希望
仕事をしている(「正規の職員・従業員」「非正規の職員・従業員(パート・アルバイトを含む)」「自営業、フリーランス等」)と回答した人のうち、今後の働き方に対する希望の調査結果です。
 
男性
「今後も同じ仕事(職種、職場)で働き続けたい」 67.4%
「より労働時間が短いなど、負担の軽い仕事(職種、職場)に変えたい」   20.3%
「より給料が高いなど、経済的条件のよい仕事(職種、職場)に変えたい」   8.9%
「仕事を辞めたい」   3.5%
 
女性
「今後も同じ仕事(職種、職場)で働き続けたい」  59.8%
「より労働時間が短いなど、負担の軽い仕事(職種、職場)に変えたい」   24.2%
「より給料が高いなど、経済的条件のよい仕事(職種、職場)に変えたい」   11.9%
「仕事を辞めたい」    4.1%
 
 
 
男性、女性ともに1番多かった回答は「同じ仕事を続けたい」でした。
 
4.働いていない人の今後の働き方に対する希望
無職(専業主婦・主夫、学生、その他)と回答した人の中で今後の働き方に対する希望について、調査がされました。
 
男性
「(機会があれば)働きたい」    15.4%
「労働時間が短いなど、負担の軽い仕事(職種・職場)であれば働きたい」   30.8%
「給与が高いなど、経済的条件のよい仕事(職種・職場)があれば働きたい」   7.7%
「子育てが終わったら働きたい」    5.1%
「介護が終わったら働きたい」   7.7%
「子育て・介護ともに終わったら働きたい」
2.6%
「今後も働く意向はない」    46.2%
 
女性
「(機会があれば)働きたい」    46.8%
「労働時間が短いなど、負担の軽い仕事(職種・職場)であれば働きたい」    40.9%
「給与が高いなど、経済的条件のよい仕事(職種・職場)があれば働きたい」   7.4%
「子育てが終わったら働きたい」   17.7%
「介護が終わったら働きたい」   10.8%
「子育て・介護ともに終わったら働きたい」  10.3%
「今後も働く意向はない」    16.7%
 
 
 
男性は「今後も働く意向はない」と回答した人が46.2%いるのに対し、女性は男性に比べて「働きたい」と回答した人が多いことが分かります。
 
ダブルケアによる離職の現状

2. ダブルケアをしながら仕事を続けるために必要なこと

内閣府の調査の中で、仕事を続けることが出来た理由として以下のことが挙げられています。
 
・子どもを育児サービスに預けることが出来た
・デイサービスや老人福祉施設に通所・入所させることが出来た
・自費サービスを利用した
・勤務先の制度(テレワーク、時短勤務など)を活用することが出来た
・勤務条件(仕事時間など)を調整することが出来た
・家族の理解と支援が得ることが出来た
・地域のサービス(子育てコミュニティなど)を利用し、支援を受けることが出来た
・職場の制度を利用しやすい雰囲気だった
 
仕事を続けるためにはサービスや制度を活用することが重要ということが分かります。
 
ダブルケアをしながら仕事を続けるために必要なこと

3. 勤務先の支援制度

遅刻、早退や中抜けなど柔軟に対応してくれたり、有給を半日単位や1時間単位で使えたりする場合があります。
 
・有給休暇
・フレックスタイム制度
・残業、休日勤務の免除
・介護休業制度
・介護休暇
・時差出勤制度
・裁量労働制度
・在宅勤務制度
・育児休暇
 
以上はダブルケアの負担軽減のために活用したい制度の一部です(ダブルケアに利用出来る制度は勤務先によって異なります)。詳しくは勤務先の担当部署にお尋ねください。また、相談先が分からないという場合は総合的な相談事を受け付けている地域包括支援センターに行ってみてもよいと思います。
 
勤務先の支援制度

4. 家族の理解を得ること

ダブルケアをしながら仕事を続けたいと考えていても、家族の理解が得られずに苦しんでいる人もいます。
 
・介護と子育てに専念して欲しいから仕事を辞めて欲しいと言われる
・ダブルケアの負担が1人に集中しているのに家族は手伝ってくれない
・介護は家族がするべき
・子どもが小さいうちは母親が面倒をみるべき
 
家族の理解を得るということはとても難しいことかもしれません。そんな時は1人で悩まずにまずは相談してみてください。誰かに相談することで意外な解決策が見つかるかもしれません。
 
家族の理解を得ること

5. まとめ

仕事を続けるためにはサービスや制度を最大限に活用することが大切です。勤務先の担当部署、地域包括支援センターなどに相談してみてください。1人で抱え込まずに悩みをお話くださいね。

 

[参考]内閣府|育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書

 

この記事の提供元
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著者:山本みどり

大学病院のNICU(新生児集中治療室)で勤務後、精神科、訪問看護を経験。
現在は小児発達ケア専門訪問看護ステーションで発達障がいと診断された子どもやそのご家族へ小児発達ケアを行っている。
食から身体のことを整えたいと思い、プライベートでは中医学・薬膳を学んでいる。

【経歴】
看護師/Webライター
看護師歴6年 NICU、精神科、訪問看護(成人・精神特化・小児発達ケア)
家政婦やベビーシッターとしても働いている。

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