1. 温泉旅館でくつろぎ、伝統とモダンが融合した加賀文化を満喫
親世代も子世代も、旅そのものを満喫し、シニアの親を快適にサポートできるのがこれから目指すべき親子旅のあり方。記念日用として訪れたい非日常のラグジュアリーな宿から、日帰りでも気分転換できる施設情報まで、さまざまなプランをトラベルライターの間庭典子がご提案します。
今回は「加賀百万石の伝統文化にふれる旅」をテーマに親子で金沢へ。往路は空の旅、復路は北陸新幹線を利用し、移動時間そのものを楽しみつつ、宿も2タイプに滞在し、それぞれのよさを満喫。加賀温泉と金沢の街、星野リゾートの温泉旅館・界 加賀(かい かが )とアクティブな旅を提案するOMO 5金沢片町のいいところどりプランです。
まずは羽田空港から約1時間、小松空港へとひとっ飛び。空の旅は非日常感を楽しめます。天候によりルートは変わりますが、富士山を見下ろせるチャンスの多い、左側の窓際席がおすすめです。絶景に出合えれば、移動もアクティビティのひとつに。遊園地のアトラクションに乗る気分で、このわくわくする時間を楽しみましょう。
小松空港からは車で約30分、JR加賀温泉駅からも車で10分程度の距離にあるのが、加賀温泉郷のひとつ、山代温泉。山代温泉は約1300年前に高僧・行基が発見したという歴史ある湯で、とろりと透明な「美人の湯」と呼ばれる泉質が自慢。当時の明治時代の共同浴場を再現した古総湯(こそうゆ)と地元の人が日常で使う総湯など、誰でも立ち寄れるかけ流し温泉が街の中心にあるんです。チェックイン前に荷物を預けて、街歩きを楽しむにもちょうどいい規模。この古総湯を中心に、散策するのにちょうどいい規模で街並みが広がっています。
写真下:加賀の伝統工芸をモチーフにした界 加賀の温泉。
2. まずは温泉街でしっぽり 界ならではの文化体験を満喫
界 加賀は総湯や古総湯といった名所が目の前という絶好のロケーション。1624年創業の老舗旅館、白銀屋(しろがねや)の伝統を受け継いだ風格ある門構えには圧倒されます。伝統建築棟と茶室は国の登録有形文化財。あでやかな赤い紅殻格子(べんがらごうし)、隣家への延焼を防ぐための防火壁・うだつなど、加賀特有の建築様式を見て学ぶことができ、白銀屋時代から残る馬をつないだという輪など、当時の面影が残っているんです。人を集めたり、時刻を知らせるのに打って合図にしたという魚板などもユニーク。各所にあるそれらを探すのも楽しいので、施設内をいろいろ探検してみましょう。
奥に新築した客室棟は一転して8階建ての近代的な建築。機能的なホテルの快適さを提供しています。すべての客室が加賀友禅や加賀水引、九谷焼などの伝統工芸を配したご当地部屋。全48室にはローベッドとソファがあり、うち18室は温室露天風呂付です。エレベーターなら温泉やライブラリーへもすぐ。館内へのアクセスがラクなことで、1階の温泉や庭など施設内を行き来することもおっくうでなくなり、アクティブに過ごせそう。
写真下:紅殻格子が印象的な界 加賀の伝統建築棟。
3. 日本庭園が見渡せ、一体化したパブリックスペース
1階はさまざまなアングルから庭が見渡せ、茶室や温泉、金継ぎ工房 へとつながるパブリックスペース。そこにも加賀の文化を体感できる仕掛けが。例えば温泉の内風呂の壁には、若手作家による九谷焼のアートパネルを展示。青手(あおて)や色絵など、その手法について解説され、湯浴みをしながら工芸について学べるのです。また脱衣所には加賀提灯など、この地域の工芸品が飾られています。滞在しているだけでさまざまな匠の技を鑑賞できるのがうれしいですね。
湯浴みのあとは無料でサービスしているアイスキャンディを。加賀棒茶などのご当地ドリンクを湯上りどころでふるまっているのも全国各地にある界ならではのおもてなしです。そこから続くトラベルライブラリーからは茶庭が望め、雨の日などは艶と陰影が際立ち、さらに美しく。
「いろはにほへと・・・」と書かれたトラベルライブラリーの屏風は北大路魯山人の書。白銀屋時代に訪れ、酔った勢いで書いたもので、最後の「ならむ」の3文字がないのが味。並びには魯山人ギャラリーがあり、器などを鑑賞できます。「器は料理の着物」という彼の料理哲学に習い、夕食では九谷焼と料理のマリアージュを提供。滞在するだけで加賀の文化を体感できるのです。
写真下:1階のトラベルライブラリー。温泉や工房などもすべて1階に。
4. 伝統工芸体験へとGO! 工房を工房を訪れ、匠の技に迫る‼
さぁ、いよいよ加賀の工房探訪へ! 山代温泉から車で10分ほどの山中温泉は石川三大塗りと呼ばれる山中塗で有名。塗りの輪島、蒔絵の金沢、そして木地の山中と呼ばれる山中塗。木材をろくろを回して削り出す挽物木地の生産量は全国一で、木地師と呼ばれる木工品を加工する職人が多く工房を構えています。界 加賀のご当地文化体験「手業のひととき」では、工房の職人技を間近で見学して、舞台裏に潜入できます(要予約 1名11000円、2024年2月末までの期間限定 )。今回、訪れたのは「工房 なかじま」。山間にある工房にたどりつくと職人さんたちが山中塗の特徴、工程についてレクチャーしてくれます。奥へと進み、コックピットのようなろくろ台のすぐ近くでその手技も見学。数多くの取材体験がある私ですが、こんなにリアルな場で、グググっとにじり寄り、手元まで見せてもらえることってなかなかない! これには興奮しました。
写真下:工房 なかじまで見学できる山中塗のろくろ台。鮮やかな手技に感動!
5. 加賀料理の夕食を削りたての器で呑みながら堪能
さらには! この見学、実は見るだけではないのです。今回はぐい吞みサイズの酒器を削り出してもらったのですが、甘口のお酒に合うころんとしたシェイプと、キリっとした辛口に合うカーブのデザインの2種から選ぶなど、カスタムオーダーするという趣向。そして界 加賀での夕食では、削り出したばかりの酒器で加賀の日本酒を味わいます。まだ木の香りが残る無垢の器。漆を何度も擦り込む拭漆(ふきうるし)の工程がまだのため、底から日本酒がしたたる状態です。この器で味わう日本酒も、また格別。あでやかな九谷焼の器と加賀料理とのマリアージュを楽しんだ後には、黒、紅、茶の漆から色を選び、丁寧に仕上げた器を、後日、届けてくれます。自宅で旅を振り返りながら、その完成した酒器で呑むという趣向。これはスペシャル!
写真下:今日、工房で削られたばかりの酒器でお料理をいただく。
6. 加賀料理の夕食を削りたての器で呑みながら堪能
界 加賀には金継ぎの工房もこの4月にオープン! 温泉旅館内の金継ぎ工房というのは日本初で、陶磁器の破損部分を漆で修復するという伝統的な金継ぎの技法や背景となる歴史を施設内で学ぶことができるのです。界 加賀で使用している九谷焼の器はみな作家に依頼して創作してもらった作品。毎日使うことで劣化したり、破損してしまった器を廃棄するのはもったいないと感じた元蒔絵師のスタッフがその手法を学び、2019年から金継ぎをスタッフ内に広めました。部活動のように広まり、今では「金継ぎ人口」はスタッフの半数以上に! 「金継ぎいろは」は数ある工程の一部を体験できるアクティビティ。金継ぎの技法をプロから学んだスタッフが指導し、その奥深さにふれることができます。15時30分から毎日開催され、6名まで無料で参加できます。ギャラリーとして展示もしており、15時から17時30分の間は見学も可能です。
写真下:界 加賀にオープンした金継ぎ工房で、工程の一環を体験。
7. 明治時代の共同浴場を再現した古総湯で朝風呂を
早朝は目の前にある古総湯へ。葺きの屋根や二階の窓が印象的な外観だけでなく、ステンドグラスやタイルに施された九谷焼など、明治時代の共同浴場を復元した古総湯は入浴方法も当時のまま。もちろん、源泉かけ流しです。界 加賀の宿泊者は、アメニティキットを包んだふろしきを見せると無料で入浴できますよ。
星野リゾートのブランドのひとつである界のコンセプトは「王道なのに、あたらしい」。伝統的な温泉旅館のくつろぎと最新のホテルの快適さをいいとこ取りしたような滞在が可能に。温泉やご当地の食文化はもちろん、その地の文化にふれるアクティビティも満載で、どの世代にとっても快適で刺激的な滞在となるのです。
写真下:宿の目の前にある古総湯は明治時代の入浴スタイルを再現。
界 加賀
石川県加賀市山代温泉18₋47
050-3134-8092(9:30 AM〜6:00 PM)