人生100年時代に健康寿命を延ばしていつまでも自分の足で歩くためには、体を支える足腰を丈夫に保つことが大事です。しかし、運動が苦手な人やこれまであまり運動をしてこなかった人がいきなり強度の高い運動を行うのはひざや腰を痛めるもと。そうした層に必要なのは「気軽にできて運動効果が高い健康法」です。たとえば、近年注目を集めているスロージョギング(※)もそのひとつ。本記事では、2回にわたってスロージョギングの効果や正しいやり方、継続するためのポイントなどを解説していきます。
 
※スロージョギングは(一社)日本スロージョギング協会の登録商標です。

1. 疲れずラクにできて、しかも運動効果が高い

習慣的な運動は、生活習慣病をはじめとするさまざまな病気の予防・改善に効果があるといわれています。とはいえ運動習慣があまりないシニア層のなかには、「何をしてよいか分からない」「ジョギングを始めたけれど、疲れて三日坊主になった」という人も多いでしょう。体力増進を目指して無理なく運動を続けるにはどうすればよいのでしょうか。
 
「そうした人におすすめしたいのが、継続しやすくて運動効果も高いスロージョギングです」と話すのは、一般社団法人日本スロージョギング協会理事の佐藤紀子先生です。
 
スロージョギングというのは、その名の通り「ゆっくり走るジョギング」のこと。歩くくらいの速さ、あるいは隣の人と話ができるくらいの速さで行うといえばイメージしやすいでしょうか。「そんなにゆっくりなら、ウオーキングと変わらないのでは?」と思うかもしれませんが、スロージョギングはゆっくりとはいえ走るので、歩行とは違う筋肉が鍛えられ、消費エネルギー量はウオーキングの約2倍にもなります!
 
「無理なくできてきつくないので、運動初心者でも楽しくラクに続けられますよ」とは佐藤先生の言葉です。特別な道具も必要ないので、気軽に始められるのもスロージョギングのよさ。これならチャレンジできそうですよね!
疲れずラクにできて、しかも運動効果が高い

2. スロージョギングは、運動初心者にこそおすすめ!

スロージョギングは、もともと「走ることはきつくてツラいというイメージを持つ方でも歩く速さであれば無理なく取り組める」との構想から開発されたもの。「運動不足が原因で筋力が落ちてきた気がする」「無理なく始められる運動があれば知りたい」という人にはとくにおすすめです。
 
 
もちろん、スロージョギングのよさはそれだけではありません。スロージョギングによって得られる主な効果とメリットは次の通りです。
 
●有酸素運動と筋トレ両方の効果が得られる
●消費エネルギー量はウオーキングの約2倍
〇無理のない運動の強さだから、息切れせず笑顔で長く走れる
●ひざや股関節など、関節への負担が少ない
●大腿四頭筋(太もも前面)、大臀筋(お尻)など下半身の筋肉が鍛えられる
 
習慣的な運動は、生活習慣病の予防やがんのリスク低減、血糖値や血圧の改善などに効果的だとされています。また、スロージョギングは一歩進むごとにしっかりと下半身を使うため、太ももやお尻の筋肉、上半身と下半身をつなぐ筋肉など、大きな筋肉を鍛えることが可能です。
 
スロージョギングによって全身の血行がよくなると脳の働きも活性化するため、ストレス発散やリフレッシュ効果も期待できますよ。

3. スロージョギングにおける走り方のコツは?

スロージョギングを行う上で重要なポイントは、以下の3つです。それぞれのポイントについて佐藤先生に解説してもらったので、しっかりマスターしてスロージョギングの楽しさや効果を実感してください。
 
①ニコニコペースで走る
ニコニコペースというのは、笑顔を保てるペースのことです。鼻歌を歌いながら走れるペース、あるいは人と話しながら走れるペースともいえます。
 
「走っているときに息が切れて笑顔が保てなくなったら、ペースが速すぎるのかもしれません。スピードを落として、ニコニコペースに戻しましょう」
 
②歩幅を狭くしてリズミカルに走る
「歩幅を20~40㎝程度にし、小刻みに足を動かす感じで走ります。大きな歩幅でゆっくり走ると、体勢が不安定になって足への衝撃も強まるので注意してください。1秒間に3歩(1分間に180歩)以上を目安に小刻みに進みましょう」
 
自分がラクに感じるペースを崩さないようにしてください。
 
③フォアフット着地を意識する
足の指のつけ根部分を「フォアフット」といい、この部分で着地すると衝撃が少なくラクに走れます。
 
「フォアフットは、足踏みやジャンプのとき最初に地面につく部分なので、走る前に軽くジャンプして位置を確認しておきましょう。初心者がつま先走りやかかとをつけない走り方をすると、ふくらはぎにかなりの負担がかかります。フォアフット着地後は、かかとをついてもかまいません」
 
なお、けがを予防するために、走った後の整理体操を忘れずに行いましょう。
スロージョギングにおける走り方のコツは?

4. 正しい姿勢をキープすることで効果はさらにアップ! ゆっくりだからこそ姿勢を意識して!

ゆっくり走るスロージョギングを正しい姿勢で行うことで、けがをしないフォームを身に着けられます。
 
正しい姿勢を保つために注意すべきポイントは、次の6点です。
 
●あごは軽く上げて、自然な呼吸を行う
●目線を上げて遠くを見る
●背筋はまっすぐに保つ(頭から足先までが1本の棒であるかのようなイメージ)
●地面を強く蹴らず、真下に押す感じで走る
●肘は90度くらいに曲げ、腕振りはあまり大きくしない
●体をねじらない(2本のレール上を進むイメージ)
 
疲れて姿勢が崩れると、腰が落ちてひざが曲がった状態になります。そうすると、下半身に負担がかかりやすくなるので、「姿勢が崩れてきたかな」と感じたら迷わず休憩しましょう。

5. 準備はOK? まずは最初の1歩を踏み出してください

「今日から運動を始めるんだ!」と気負いすぎたり、無理をしすぎたりすると、挫折の原因になりかねません。また、これまで運動習慣がなかった人の場合、運動の時間を確保するだけでも「ハードルが高い」と感じるでしょう。そうしたなかで簡単に挫折しないためには、スロージョギングを日常生活のなかに組み込むことが大事です。
 
「通勤や買い物、用事などで歩く時間を少しずつスロージョギングに置き換えてみるのがおすすめです。最初のうちは、1分スロージョギングをして30秒歩くことをくり返すだけでOK。慣れてきたらスロージョギングの時間を延ばし、1日合計30分を目標にしましょう」(佐藤先生)
 
ちなみに30分はまとめてではなく、1分×30回、5分×6回、10分×3回のようにこま切れにしてもよいのだそう。通勤や買い物の合間に行うなどして、合計で30分を目指してください。
準備はOK? まずは最初の1歩を踏み出してください

6. まとめ

スロージョギングは体への負担が少なく、長時間続けることも可能です。しかし、小さな疲労でも蓄積すればけがにつながる恐れがあるため、慣れないうちはオーバーワークにならないように注意しましょう。継続的に続けていけば、少しずつ体力が向上していくので、自分に合った時間や頻度でじっくりと取り組むことが大事です。 今回は、スロージョギング入門塾のスタート編として、効果・メリットや基本の走り方についてお話しました。次回はステップアップ編と題して、コース選びや目標設定、習慣化するためのコツなどを紹介しますので、そちらもぜひご覧下さい。

 

記事監修:佐藤紀子先生

佐藤紀子(さとう・のりこ) ※写真下
一般社団法人日本スロージョギング協会理事。健康運動指導士、日本スロージョギング協会認定アドバンスインストラクターとして、全国で行われるスロージョギング講習会などの講師活動を行い、スロージョギングの普及に努める。またマラソンランナーでもあり、東京マラソン2014に夫婦で出場し「夫婦で走った最も速いフルマラソン(合計タイム5時間28分23秒)」として当時のギネス世界記録に認定された。

まとめ
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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