近年一人暮らしの高齢者が増加傾向にあります。内閣府が行った高齢社会白書によると、一人暮らしの人が65歳以上人口に占める割合は昭和55年では男性4.3%、女性11.2%でしたが、平成27年には男性13.3%、女性21.1%と大きく増加していることがわかります。

1. 高齢者の孤立と心身の健康との関係

高齢者単独の生活は孤立につながり、社会とのつながりが疎遠になることで心と体の健康への影響も問題となってきます。なぜ、社会との重要性がこれほど重要なのかを解説していきたいと思います。

まず、高齢者が他者とかかわりを持つことで、以下のようなメリットが期待できます。

 

・脳の活性化・認知症の予防につながる

近所の方々と会話をしたり、外出することで脳が活性化され、認知症の予防にもつながります。

 

・コミュニケーション能力の維持

話す機会が減少すると、コミュニケーション能力が一気に低下してきます。コミュニケーション能力が低下すると、他者と話すことが億劫になり、さらに人との関わりを避けるようになります。積極的に地域の集まりなど交流の場に足を運び、コミュニケーション能力の維持に努めましょう。

 

・からだの健康

運動を通して他者との関わりを持つことをお勧めします。一人で運動を行うよりも仲間と一緒に行うことで、継続率がぐんと上がります。


この記事では、介護予防にもつながる友人や地域との関わり方について紹介します。

2. 友人や地域との関わりがほとんどない、社会的孤立とは?

社会との繋がりがない状態のことを社会的孤立と呼びます。単身世帯だけでなく、家族がいたとしても交流が少なく、日常的に人との交流が行われない孤立した生活を送る人もいます。
 
社会的孤立になりやすい高齢者の特徴として「日常の会話が少ない人」「困ったときに頼れる人がいない」「友人との付き合いが少ない」「近所とほとんど付き合いがない」があげられます。特に男性の一人暮らしは要注意で「日常の会話が少ない人」は約3人に1人いるといわれています。
 
社会との繋がりが少なくなってしまうと健康へのさまざまな悪影響が起こってきます。例えば、寂しさを紛らわせるために喫煙や飲酒が過度になり、それによって脳卒中や認知症などの病気に繋がるリスクが高まったり、体が健康的であっても、生きがいを感じることができずに心の病に陥ってしまい、幸福度が低下し、最悪のケースでは孤立死に至るといった例もあります。
 
では、この社会的孤立をどのようにすれば防げるのでしょうか?
友人や地域との関わりがほとんどない、社会的孤立とは?

3. 高齢者が参加しやすい社会との繋がりの場

これまでに人との関わりを多く持たなかった方からすると、急に交流の場に出ていくことは勇気がいることかもしれません。今回は高齢者の方が比較的気軽に参加できるコミュニティを3つご紹介します。
 
趣味を生かした交流の場
もし、何か特技や趣味があれば、自分の趣味に合った集まりに参加すると良いでしょう。共通の趣味をもつ仲間が集まるので、自然と会話も弾んできます。また、趣味が無い方でも習い事教室に通う感覚で初めてみるのも良いでしょう!
 
高齢者に人気の趣味サークルや習い事教室は「語学教室」「音楽教室」「運動教室」です。語学教室では習い事を通して語学を身に着けるだけでなく、海外旅行に出かける高齢者も増えています。

②地域のコミュニティに参加する
地域ごとに違いはありますが、調べてみると各地域にさまざまなコミュニティがあることがわかります。「自治会・町内会」「ボランティア活動」「シルバー人材センター」など、地域の情報誌やホームページなどで検索してみると良いでしょう。
 
地域コミュニティへ参加することのメリットは高齢者だけでなく、幅広い世代と関わりが持てる点にあります。子供たちも交えたボランティア行事などで元気な子供と接することで、自分も自然に元気になることができ、地域社会に貢献できているというやりがいも得られます。
 
③高齢者向けのサービスや施設を利用する
「老人ホーム」「デイサービス」「サービス付き高齢者住宅」などで、医療や介護の支援を受けるだけでなく、利用者同士のつながりも生まれることで、社会的孤立を防ぐことができます。
 
施設に入所・利用するには介護保険などの申請が必要な場合がありますので、自分に合った施設を選ぶことをお勧めします。
高齢者が参加しやすい社会との繋がりの場

4. コミュニティに参加するときの注意点(自分が楽しめることで社会との繋がりをもとう)

このように社会との繋がりを作ろうと考えたとき、「頑張らなければ」と感じてしまう人が少なくありません。しかし、実際には頑張って社会との繋がりを作ろうとすると、つらさやしんどさを伴ってしまい、楽しさを感じられなくなってしまいます。

運動をしていると気分がすっきりとしてくる、馴染みのカフェで飲むコーヒーがいつも美味しい、地域のイベントに参加する地域の人たちを見ていると心が落ち着く……このような気持ちがあれば、自然と社会との繋がりが増えてくるものでしょう。
 
もちろん、最初からさまざまな活動を楽しく感じられるわけではありません。嫌だなぁと感じていたことが気付けば好きになっていたり、気付けば苦手だった人と仲良くなっていたりするものですので、まずは挑戦してみるということがやはり大切になります。
コミュニティに参加するときの注意点(自分が楽しめることで社会との繋がりをもとう)

5. おわりに

このコラムでは、介護予防に関連する友人や地域との関わりについて紹介しました。社会的孤立や社会との繋がりと聞くと難しそうな印象を持つかもしれませんが、あなたが住む地域で楽しそうに過ごす方々のことを見てみると、参考になることがたくさんあるかもしれません。

この記事の提供元
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著者:坂元大海(アークメディカルジャパン株式会社 代表取締役)

<プロフィール>
10年間整形外科に勤務後、アメリカ(UNLV)に留学し、ピラティスマスターのライセンスを取得。帰国後にアークメディカルジャパン株式会社を立ち上げ、医療・健康・スポーツ分野において事業を展開。延べ10万人以上の豊富な治療経験や多くのプロ選手、日本代表選手、俳優などへのケアやコンディショニングを行っている。教育、講演、育成においても精力的に活動し、全国での指導実績も豊富にある。
<所有資格>
・理学療法士
・鍼灸師
・柔道整復師
・国際PNF協会 Recognized course修了者
・(財)日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
・NASM-PES
<講師実績>
久留米大学、九州共立大学、福岡リゾートアンドスポーツ専門学校非常勤講師
<学術活動>
・「血流制限下でのレジスタンストレーニングが筋活動に及ぼす影響」PT学会、理学療法学
・「シンスプリントの発生要因に関する一考察」九州・山口スポーツ医学会など多数

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