「食事が噛んで食べられること」「口から食べると、味わって楽しんで食事をすることができる」そのようなアタリマエを、年をとっても長く続けるために「口腔ケア」はとても大切な役割をもっています。本コラムでご一緒に考えてみましょう。

1. よく噛むことの8つの効果

①胃腸の働きを促進する
唾液中の消化酵素の分泌がさかんになり、細かくかみ砕けば胃腸への負担を和らげます。
 
②むし歯、歯周病、口臭を予防する
唾液の分泌が増え、唾液の抗菌作用によって口の中の清掃効果が高まります。
 
③肥満を防止する
ゆっくりたくさん噛むと満腹感が得られ、食べ過ぎを防ぎます。
 
④脳の働きを活発にする
噛むことで脳への血流が増加し働きを活発にするため、脳の若さを保って老化を防止します。
 
⑤全身の体力の向上
よく噛めば全身に活力がみなぎり、体力が向上します。
 
⑥味覚が発達する
じっくりと味わうことができ、味覚が発達します。
 
⑦発音がはっきりする
口のまわりの筋肉が発達し、言葉の発音もはっきりします。
 
⑧がんを予防する
唾液に含まれる酵素には、食品中の発ガン物質の発ガン性を抑制する効果があると言われています。
よく噛むことの8つの効果

2. 食べる楽しみ 生きる意欲〈1〉楽しんで食べる

食べるという行為は、ただ体に栄養を補給するだけのものではありません。
 
「おいしかった」「お腹がいっぱいになった」という満足感が得られると、体が元気になるとともに、気持ちも明るくなってきます。
 
「おいしさ」とは、味、香り、食感(歯ごたえ、舌ざわり、口あたりなど)、見た目、噛む音など、五感を使って感じるものです。さらに、気のおけない人たちと会話を楽しみながら食べるという付加価値があれば、食べる楽しみはさらにふくらみます。
 
楽しんで食べると、心の満足度が増して、消化吸収が良くなるとも言われています。
 
そのためには、家族や友人などと会話を弾ませながら食べられるような、楽しい雰囲気づくりも大切です。
 
高齢者の食事は、自分の口でおいしさを感じながら食べることが大切です。それが楽しみとなり、生きる意欲を高めて、若々しい生活をもたらしてくれるのです。

3. 食べる楽しみ 生きる意欲〈2〉正しい食事の姿勢

高齢者の食事では、「おいしく食べる」ということと同時に「安全に食べる」ということにも気を配る必要があります 。
 
誤嚥を防いで安全に食べるためには、姿勢がとても大切です。また、食べ物をしっかり飲み込んで食道に送るためには、首の角度が重要です。
 
・正しい食事の姿勢:上半身を起こして背中を少し丸め、やや首を前屈させます。この姿勢ならば、ごっくんと飲み込んだどきに、のどが自然に上下に動きます。
 
・危険な食事の姿勢:リクライニングで上体が反り返った姿勢や、介護者が上から介助する姿勢は、首が伸びているのでうまく飲み込めません。気管も開きっぱなしになるために、食べ物が流れ込んで窒息する危険もあるので気をつけましょう。
 
また、おいしく食べるためには、お口の中が健康であることがとても重要です。老化が進むにしたがって、噛む力や飲み込む力は衰えてきます。お口の中の健康をいつまでも長く維持するためには、口腔ケアが欠かせません。

4. 要注意!食事介助中の誤嚥サイン

・いろいろある!誤嚥のサイン
食事介助中、特に気をつけなくてはいけないのが誤嚥です。ご利用者さんが自ら「誤嚥しました」と言ってくれることは少ないので、誤嚥が疑われるサインに敏感になっておく必要があります。
 
食事中の誤嚥のサインで代表的なのが「のどがゴロゴロいう」ことと「透明な鼻水が出る」の2つです。これ以外にも何気なく見過ごしてしまいがちな誤嚥につながるサインがいくつかあります。
 
・見逃していませんか? こんなサイン
例えば「食べこぼしが増えた」ことです。口をしっかり閉じられなくなると、口から食べ物をこぼすようになります。さらには、「よだれを垂れ流す」ようにもなります。
 
口をしっかり閉じられないと、飲み込むことも難しくなります。当然、誤嚥してしまうことも多くなるわけです。
 
ほかには「なかなか飲み込まない」、「食事に時間がかかるようになった」というのも誤嚥につながるサインです。
 
舌の動きに問題があったり、のどの筋肉が衰えたりすると、なかなか飲み込むことができなくなり、食事の時間も長くなります。食事に時間がかかる人は、急いで食べてもらう必要はありません。ゆっくりと自分のペースで食べていただくのがよいのですが、一方で長時間になり過ぎるのも問題です。
 
 
食事の時間が長くなり過ぎると、食事をするのに疲れてしまいます。こんなときには誤嚥してしまう可能性も高くなりますから、40分以上食事しているようなら、一度中断してもらいましょう。このような人には、1回の食事の量を見直して、数回に分けて食べてもらうようにするといいかもしれません。
 
また、「大好物を食べなくなった」というのも誤嚥につながるサインです。うまく飲み込めなくなったりすると、それまで大好物だったものでも避けるようになります。
 
このような見過ごしがちなサインにいち早く気がつくことで、誤嚥を予防することができるかもしれませんよ。
 
動画で確認しよう!
 
より詳しい情報はこちらをご覧ください。
記事の監修:一般社団法人 日本訪問歯科協会
要注意!食事介助中の誤嚥サイン
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著者:一般社団法人 日本訪問歯科協会

医療、福祉

2000年4月にスタートした介護保険法の施行に伴い、在宅介護や在宅診療も注目を浴びるようになりました。歯科界も例外ではなく、全国に歯科往診に取り組む歯科医師が増えてきている状況において、多くの行政的課題や社会的な存立に関する課題が生まれることが予想されます。そこで、そのような課題を解決し訪問歯科診療を発展させていくために、平成12年4月に日本訪問歯科協会を設立いたしました。
現在、医療費の削減が社会的に注目されている中、高齢者医療は転換期を迎えています。要介護者の口腔状態が良くなれば、間違いなく社会的な医療コストは軽減されます。歯科往診に対する社会的なニーズの高まりというだけではなく、社会貢献あるいは社会的責任という側面からみても、訪問歯科診療の普及は歯科関係者にとって急務となっております。
本会では、訪問し歯科診療を行なうだけで満足せず、ご家族や介護事業者、ヘルパー、医師などが密に連絡をとることにより訪問歯科診療および口腔ケアを求められる方の立場に立って、身体だけではなく精神的な健康も視野においた質の高い訪問診療を目指していきます。

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