これから介護をスタートされる方へ、現役薬剤師がお伝えしたい【初めての介護マニュアル】ポイントを5つご紹介します。分かりやすく具体的にお伝えしますので、介護をスタートする際の手続きや、制度の理解、受けられるサービスを検討する際にお役に立てますと幸いです。

1. ポイント1 介護が必要になった時、まず確認したい「介護保険」

こんにちは。薬局薬剤師の山本咲希です。
身近な方の介護が必要になった時、どんなサービスを利用できるのか、サービスを利用するためにどんな手続きをすればいいのか、困っていらっしゃる方も多いと思います。今回は、「初めて介護をする方にお伝えしたい介護についての基本知識」と「介護における薬局の活用方法」をお伝えしたいと思います。
 
初めて介護をするときに、まず確認していただきたいのが「介護を受ける方の介護保険の加入の有無(年齢により判断できます)」と「市区町村からの介護認定(以下で詳しく説明しますが、市区町村に申請することで受けられる認定です)の有無」です。なぜなら、この2つの有無によって「利用できるサービス」の種類に違いがあるからです。
 
どんなサービスが選択肢となり得るのかを、以下のチャートを参考にしながら整理しましょう。
 
このチャートにあるように、「市区町村が実施する要介護認定を受けていない」場合でも、介護保険以外のサービスであればご利用いただくことが可能です。
 
ただし一般的に、介護保険外のサービスよりも、介護保険のサービスの方が金銭的負担が少なくなりやすいため、まだ認定を受けておらず、日常の生活に介護や支援が必要な場合には、まず以下の手順で「要介護認定」の申請をすることをおすすめします。
 
(介護保険のサービスを利用するためには、市区町村の要介護認定で「介護が必要である」と認定を受ける必要があります)
ポイント1 介護が必要になった時、まず確認したい「介護保険」

2. ポイント2 【徹底解説】市区町村への「要介護認定」申請手順

手順①要支援・要介護認定の申請
 
介護を受ける方がお住いの住所地の市区町村の役所の高齢・障害課や地区健康福祉ステーション介護保険担当窓口(地域により名称は異なります)にて申請を行いましょう。申請費用は無料です。
 
※ご本人やご家族が申請できない場合は、地域包括支援センターなどに申請の代行をしてもらうことも可能です。
 
●持ち物
・介護保険被保険者証(65歳以上の方)
・印鑑(代理人の場合)
・かかりつけの医療機関名・医師名が分かるもの
・医療保険被保険者証(40歳から64歳の方)
・マイナンバー(個人番号)の確認に必要な書類など
 
●手順②市区町村の職員の方がご自宅を訪問
 
市区町村の職員が介護を受ける方の自宅を訪問し、「洋服は自分で着られるか」「トイレには自分で行けるか」など、どのくらいの介護・支援が必要かを判断する為の聞き取り調査を行います。
 
ちなみに、このタイミングに、市区町村が「かかりつけ医」(手順①で提示したかかりつけ医)に対して依頼をすることで、かかりつけ医が「介護や支援についての意見書」を提出してくださいます。これに関しては、申請者の関与や金銭的負担の必要はありませんのでご安心ください。
 
手順③介護認定の通知(手順①の申請から平均1か月程度)
 
ご自宅を訪問しての聞き取り調査と、かかりつけ医からの意見書の結果を総合して、市区町村の介護認定審査会で、その方の介護・支援を必要とする段階が決定され、その結果が通知されます。段階は、以下の7つのうちから一つ、または「認定なし」のいずれかに決定されます。
 
ポイント2 【徹底解説】市区町村への「要介護認定」申請手順

3. ポイント3 訪問薬局とは? 薬剤師訪問は1回約500円!(*2)

介護を必要とする方が、薬の管理や服用、薬局までの往復などで悩んでいる場合は、薬剤師がご自宅まで訪問するサービスをご利用いただけます。
 
このサービスは、「要介護認定を受けていない方」でも、医師が薬剤師の訪問が必要だと判断した場合は受けることができるサービスです。
 
市区町村による要介護の認定には、申請から1か月程度かかりますが、認定が下りるまでの間に受けていただくことも可能です。ただし、「要介護認定を受けている方」と「受けていない方」では、サービスの名称や料金が異なるので、以下をご確認ください。
 
■要介護認定を受けている方
【介護保険利用の場合】居宅療養管理指導
・料金は1回517円(1割負担の場合)+お薬代金
※老人ホームなどの同一建物居住者は1回約350円(1割負担の場合)
※2023年9月現在
・介護保険の範囲内では、1か月あたり4回まで訪問可能
※訪問薬局は介護保険の区分支給限度額の範囲外で利用できます
 
■要介護認定を受けていない方、要支援認定を受けている方、申請中の方
【介護保険を利用しない場合】在宅患者訪問薬剤管理指導(医療保険を利用)
要介護認定を受けていない方は、かかりつけの医師からの指示があれば、医療保険を利用して訪問薬局サービスを受けていただくことができます。
・料金は1回650円(1割負担の場合)+お薬代金
※2023年9月現在
・1か月あたり4回まで訪問可能

*2…緊急訪問の場合は金額が異なります

4. ポイント4-1.訪問薬局で提供している「訪問・配達サービス」

■訪問・配達サービス
薬局に通われている方のなかには、エンシュアリキッド(食事がとれないときや消化・吸収力が弱まっているときに用いる総合栄養剤です)などの重量のある薬を服用されている方も多いかと思います。
 
例えばエンシュアリキッドは1箱24本入りで7.4㎏。これを1日3回服用されている方は、4週間分だと合計84本で25.9㎏にもなります。訪問薬局では、このような重量のある薬の配送も行っています。
ポイント4-1.訪問薬局で提供している「訪問・配達サービス」

5. ポイント4-2.訪問薬局ではお薬のセットもしてもらえる!

訪問薬局では、ご自宅での薬の置き場所の決定や確認、セット方法や服薬確認のご提案から、実際のお薬のセットまでを行います。
また、配薬や飲み忘れを確認できるよう、以下のような服薬シートの作成を行っている薬局もあります(服用するお薬の種類や、服薬時間を記入しておき、冷蔵庫やドアなどに貼っておくことで、飲み忘れを防止するためのチェックができるシートです)。
 

6. ポイント4-3. 薬剤数を減らす処方提案

服用する薬剤の数が多くなると、飲み忘れが増えたり、副作用の危険性が高まったりすることもあります。そのような場合には、患者様の症状を確認したうえで、必要に応じて服用している薬剤数を減らす処方提案も行います。
 
 
■お薬をもっと飲みやすくするためのご提案
「1日3回服用していたが、1日2回の服用にする」というように、患者様が飲みやすいように服薬のタイミングを変更したり、錠剤が飲み込みづらくてお薬を飲むことに不安を感じていらっしゃる方には、粉の薬に変更したり、錠剤やカプセルを水で溶かすことによって飲みやすくする方法をご紹介したりと、服用のタイミングやお薬の形態についても一人ひとりの患者様に合う形でのご提案をさせていただきます。
ポイント4-3. 薬剤数を減らす処方提案

7. ポイント4-4.薬の管理に便利なツールの紹介

お薬カレンダー、お薬ボックス、お薬服薬アラーム、一包化(同じタイミングで飲むお薬を一つの小袋に全てまとめて入れた状態でお渡しする)など、服薬を管理するために便利な方法はたくさんあります。
 
薬剤師が患者様のご自宅へお伺いし、お薬の管理を一緒に行います。お薬の管理のお悩みに応じて便利なツールをご紹介します。
 
■緊急時のご連絡
飲み忘れ、飲み間違え、一回の服薬時に2回分服用してしまった、などの場合にも、いつもの薬局の薬剤師にすぐ相談ができるので、不測の事態が発生しても落ち着いて対応することができます。
 
■副作用のモニタリング、受診勧奨
多くの薬を飲んでいると、発生する可能性のある副作用の全てをご家族のみでチェックすることはとても大変です。
 
そんな場合にも定期的に自宅に訪問してくれる薬剤師がいれば、不安の解消にお役に立てます。また、少しでも体調に異変があるときには病院への受診をおすすめしたり、ご家族の方への連絡も行います。
 
ポイント4-4.薬の管理に便利なツールの紹介

8. ポイント5 薬局に訪問してもらうための基本手順

■STEP1 介護認定を受ける
ポイント2「市町村へ要介護認定を申請する手順」の手順で、介護認定を受ける。
 
 
■STEP2 (介護保険利用の方のみ)ケアマネに相談して、ケアプランを立てる
介護認定を受けると、担当のケアマネジャーを決定します。担当のケアマネジャーに訪問薬局を利用したい旨を相談すると、薬の配達と管理をケアプランに組み込み、居宅療養管理指導を実施している薬局と連絡を取ってくれます。
 
 
■STEP3 医師に訪問指示書を書いてもらう
かかりつけの医師の同意を得たうえで、薬局と契約を結びます。医師から訪問指示書を書いてもらうことが基本ですが、処方箋の備考欄に「訪問指示」と記載してもらうことでも訪問薬局をスタートすることができます。また、初回であれば、薬剤師が医師に疑義照会し、口頭で確認することで訪問を開始することも可能です。契約の手順についてはさまざまな方法があるので、薬局やかかりつけの医師に相談してみましょう。
 
すでにかかりつけの調剤薬局があれば、自宅への訪問ができるかどうかを確認し、ケアマネジャーと直接連絡をとってもらうとスムーズです。
 
 
訪問薬局利用のための手順は以上ですが、地域によっては手順が異なる場合があるため、必ずお近くの介護窓口や医療機関にご確認をお願いいたします。
 
これから介護をスタートされる皆様は、今後不測の事態や自力では解決できない問題が生じて疲れたり、悩んだり、もやもやしたりすることもあるかと思います。
 
そんな時はどうか思考を閉じずに、ケアマネジャーやお近くの医療機関にいつでもご相談ください。微力ながら、皆様のお力になれるよう尽力いたします。
 
 
監修:水野 彩香
薬剤師・事業構想修士(専門職) 株式会社ブルペン執行役員(イロドリ薬局千年店 薬剤師)
大手調剤薬局を退社後、株式会社ブルペンに入社し、生まれ育った川崎市でイロドリ薬局千年店の運営を行っている。
現在は地元の地域医療に貢献すべく、在宅医療にも積極的に取り組んでおり、プライベートでも介護が必要な祖父母のため、介護に関する提案やフォローを行っている。
この記事の提供元
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著者:山本 咲希(株式会社レインフラワー)

薬剤師/日本薬剤師会認定薬剤師。
北里大学薬学部首席表彰を受けて卒業後、薬局薬剤師として活動。
大学病院の門前薬局、内科、小児科、耳鼻科、皮膚科など、さまざまな薬局で調剤を学び、現在は薬剤師・起業家として活躍している。
地域医療研究、全国薬剤師・在宅療養支援連絡会J-HOPでの研究発表、OTC薬のアプリケーション開発、日本薬学会での論文発表を行っている。

「医療・教育・美容を武器に、元気に・迷いなく・美しく生きていける社会を作る」という理念のもと、クリニック・薬局向けのシステム開発・提供、区民講演会での講演を行うほか、自身もボディメイクの全国大会「ベスト・ボディジャパン」に出場、関東最大規模の大会でグランプリを獲得した。教育業界にも力を注ぎ、顧問を務める個別指導塾「生徒派」を入塾1年待ちの全国屈指の人気塾にしたほか、全国の塾・予備校のシステム開発を行う。自身の経営する化学専門予備校「花塾」も盛況で、仕事が生きがいの日々を走り続けている。
著書に『プランブロック式 ゼロから理系難関大学に合格できる戦略的学習計画法』(KADOKAWA)がある

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