1. 認知症とフッ素配合歯磨き粉
認知症が進むと、歯ブラシなどの道具の使い方を忘れてしまったり、水を吐き出すうがいがうまくできなくなったりして、歯みがきの能力が低下します。
また、認知症の高齢者は、健康な高齢者に比べて特に甘い食べ物を好むという海外の研究データが報告されています。
こうしたことから、認知症の高齢者はむし歯になりやすい傾向にあると言われています。けれども、むし歯予防を優先して甘いものを禁止するのは生活の楽しみを奪うことになってしまいます。
甘いものを楽しみつつ、むし歯予防も期待できる方法として、高濃度フッ素配合の歯みがき粉を使った歯みがきがあります。
この歯みがき粉はフッ素が歯をコーティングするために、むし歯や知覚過敏などの口腔トラブルを効率よく予防する効果があります。さらに、歯の表面の凹凸がなくなってツルツルした状態になるので、歯垢や歯石もつきにくくなります。
ただし、いくらむし歯予防の効果があると言っても、すでにむし歯になっている場合は、まずは歯科医院で治療を受けましょう。
2. 糖尿病と口腔ケア
糖尿病は、40代以上の10人に1人がかかっていると言われるほど、日本人の代表的な生活習慣病の一つで、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが不足して、血糖値(血液中の糖)が異常に高くなる病気です。
糖尿病になると、口の中が乾きやすくなるため、唾液の分泌量も低下し口の中が汚れやすくなって口臭がきつくなります。
また、免疫力が低下するので歯周病になりやすく、治りにくいことも知られています。高血糖の状態が続くと白血球の機能が低下するために炎症が進み、組織が壊れやすくなるからです。
糖尿病の人の7~8割が歯周炎などにかかっているといわれています。さらに、感染に対する抵抗力も弱くなるため、歯周病から重症の感染症を引き起こす危険性もあります。
一方で、歯周病を治療すると血糖値がコントロールしやすくなるなど、歯周病の改善が糖尿病の改善に関係することが近年報告され、注目を集めています。
つまり、お口の中を清潔に保つことで、二次的な感染症を防ぐだけでなく、糖尿病の進行も抑えることができるかもしれないのです。糖尿病の人は特に口腔ケアをしっかり行い、歯科での定期的な検診も行いましょう。
3. どうする? 自分から食べようとしない人への食事介助
●食べられないのではなく、食べようとしてくれない
ご家族やご利用者さんへの食事介助のときに、困ってしまうケースの代表が「食べ物を口もとに運んでも自分から食べようとしない」というものです。歯みがきのときに口を開けてくれないというのも困りますが、食事介助のときに食べようとしてくれないというのも、同じくらいの難題です。
こうしたケースでは、いくつかの原因が考えられます。
例えば、食事の好みが合わない、睡眠が十分に取れていない、食事以外のことに意識が向いている、体調不良で食欲がない、などです。
それぞれの原因によって、対応の仕方も異なってきますが、食事介助時にできる主な工夫を紹介しましょう。
●何が好物? どうしたいと思っている?
まずは、楽に食べられるような工夫をします。
いきなり固形物を口に運んでも、食欲がなければ食べる気にならないでしょう。
そんなときは、取りやすい水分や汁物から口に運んであげましょう。また、好物があるなら、それから食べ始めてみましょう。
もしかしたら、介助されて食べるのではなく、自分の手で食べたいのかもしれません。そんなときはおにぎりやパンなど、手でつかんで食べられるものを用意するのもいいですね。
食事をする環境のせいで食欲が出ない、ということもありえます。そんなときはテーブルの向きを変えてみましょう。外の景色が見える窓側に向けてみると有効かもしれません。
そして最後に基本中の基本。なかなか食べてくれないからといって、「さっさと食べてください」などと急かしたりするのはやめましょう。
ご利用者さんの気持ちが焦ってしまうし、食欲もますますなくなってしまいます。なにより、誤嚥などの事故につながりかねません。食事介助は、ご利用者さんの気持ちに寄り添って行いましょう。
動画で確認しましょう。
記事の監修:一般社団法人 日本訪問歯科協会