介護のストレスを解決するためには、人間関係を良好に保つことが大切です。
そのためには、スムーズなコミュニケーションが必要です。
どのようにすれば、より効果的なコミュニケーションをとれるのかご紹介します。
 

1. はじめに

コミュニケーションの目的は自分の考えていることを相手に伝える、意見を交換する、ご家族や周囲の人との人間関係を良くするなどの点が挙げられます。
 
皆さんは、今までに相手と友好的な関係性になる為にコミュニケーションを取ろうとして失敗したことはないでしょうか。
 
失敗とは相手の本当の思いを理解できない、相手が怒って帰ってしまったなどの状況を指します。
 
例えば、明後日と明日と聞き間違いをして、約束の日をすっぽかしてしまい、信頼を失うような失敗もあります。
 
⑴介護におけるミスコミュニケーション
①介護がそろそろ必要そうかなと思う時期
家族:体力が落ちてきていると思うから、介護保険の申請をした方が良いと思う。
ご両親:そんなに不自由していない。年寄扱いしないでほしい。
 
②物忘れが目立ち始めた時
家族:さっき、ご飯食べたでしょう。もう忘れてしまったの?
ご両親:親をバカにしないでほしい。
 
③介護疲労がある時
家族:お母さんの為にやっているのよ、少しは感謝してほしい。
ご両親:そんな娘に育てた覚えはない、なりたくて介護が必要になった訳じゃない。
 
④施設入所を検討している時
家族:お互いの生活の為にも施設という選択肢もあるよ。
ご両親:親を邪魔者扱いしないでほしい。
 
⑤介護サービスの内容を検討する時
家族:仕事があるから、出来るだけ日中は通所サービスを利用してほしい。
ご両親:家にいる方が落ち着く、どうして行きたくもないのに行かなきゃいけないのか。
 
親子関係においては、ご両親へ自分の気持ちを理解してほしいという思いから、つい感情的になってしまうことが多いように感じます。
 
⑵コミュニケーションがスムーズに進まない6つの要素
ミスコミュニケーションとは、相手とのコミュニケーションが上手くいかない状況を指します。具体的には次の要素が含まれています。
 
①相手の思いを理解せずに、自分の意見を押し付けること。
②伝えたいことを明確に伝えられず、相手に誤解を与えること。
③相手の意見に耳を傾けず、無視すること。
④言葉遣いや態度が不適切であること。
⑤相手の話を中断、または妨げること。
⑥相手の感情に共感や理解を示さないこと。
 
ミスコミュニケーションを防ぐためには、どのようなコミュニケーションをしたら良いのか確認していきましょう。
 
はじめに

2. 良好な関係を築くコミュニケーションの基本

⑴コミュニケーションの種類
コミュニケーションには大きく分けて2種類あります。
・言語コミュニケーション:会話や言葉をつかったコミュニケーション
・非言語コミュニケーション:言葉以外の方法で伝えるコミュニケーション
 
一般的には何を話すかが重要であると言われています。しかし、実際に相手の記憶に残るのはほとんどが非言語的コミュニケーションです。
「話の内容」はたった7%しか印象に残らないという研究結果もあります。
 
非言語的コミュニケーションは「見た目」と「話し方」だけでなく「表情」「しぐさ」「目線」なども含まれます。
これらは93%も相手の記憶に残るとされています。
非言語的コミュニケーションは相手を理解することにおいて重要な役割を果たしています。
 
コミュニケーションは言葉や表情などで相手を理解することですが、最も大切なのは相手と波長を合わせることです。
波長を合わせるポイント、さらに相手との関係性を深める傾聴について説明します。
 
⑵波長合わせについて
①声の大きさ、高さ、口調の速さを観察する
・相手が大きい声を出したら自分も大きな声で話す
・相手が高いトーンで話したら自分も高いトーンで話す
・相手がペラペラと話し出したら自分もペラペラと話す
相手のペースにすべてを合わせます
 
②体の動きを観察し、動き方を合わせる
・相手が前かがみになって話している場合は自分も前かがみになって話す
・相手が腕を組んで話している場合は自分も腕を組んで話す
・相手が手を振って話している場合は自分も手を振って話す
自分の動きを相手の動きにすべてを合わせます
 
③相手と呼吸を合わせる
・相手が深呼吸をするときは自分も深呼吸をする
・相手が早く息をするときは自分も早く息をする
・相手が息を止めるときは自分も息を止める
自分の呼吸を相手の呼吸にすべてを合わせます
 
相手と波長を合わせると、居心地の良い空間が作ることが出来、自分の提案が通りやすくなります。
 
⑶傾聴について
傾聴する事で相手との関係性がより深まります。
 
ご両親がデイサービスの日なのに行きたくないと言っています。原因は腰痛のようです。
どのように会話を進めればよいでしょうか。
 
①ご両親の言った言葉を繰り返して確認する
「腰が痛い」→「腰が痛いんだね」
 
②話の内容をまとめる
「昨日の夜から腰が痛くてデイサービスに行きたくないのんだね」
 
③ご両親の気持ちに寄り添った言葉を返す
「腰が痛くて辛かったね、気づかなくてごめんね」
 
④あいづちを打つ
「へぇ、そうだったの」
「うん、うん、辛かったね」
会話の時に「あいうえお」「はーへーほー」を使います。
例えば「ああ」「いいね」「うんうん」「ええ」「おお」という感じであいづちを入れることによって相手に興味や関心を示し、話が続けやすくなります。
 
⑤黙って話を聞く
時には黙って話を聞き、心を汲むことも大切です。
 
⑥さらに会話を進めたいときに、もっと話を聞きたい姿勢を示す
「腰が痛いということが、デイサービスに行きたくないという理由なんだね」
「じゃあ、今日はどうする?」
 
以上が波長を合わせるポイント、相手との関係性を深める傾聴というコミュニケーションの基本となります。
 
介護の場面だけでなくご家族や職場などでもお試しください。
 
 
良好な関係を築くコミュニケーションの基本

3. 皮膚を通してコミュニケーションする

コミュニケーションの方法をいろいろご紹介してきましたが、さらに良い関係性を築く方法をご紹介します。
タッチングやマッサージというコミュニケーションがあります。
皮膚と皮膚を通じて得られる効果はどのようなものでしょうか。
 
⑴心を穏やかにして安心感や幸福感を得られる
タッチングやマッサージは幸せホルモンと言われるセロトニンを活性化させ、絆ホルモンと言われるオキシトシンの分泌を増やすと言われています。
 
⑵コミュニケーションが円滑になる
皮膚と皮膚が触れることで心の距離感が縮まります。また、言葉だけでは伝えきれない思いを伝える事が出来ます。
 
⑶リラクゼーション効果
皮膚に触れると自律神経が調整され、交感神経と副交感神経のバランスが整い、ストレスが軽減されます。
 
⑷介護を受ける人の自尊心が高まる
触れ合う事で心の安定を促し、不安や孤独感を和らげることが出来ます。また介護を受ける人の自尊心を高めます。
 
⑸タッチングやマッサージを行う側もリラックスする
幸せホルモンのオキシトシンの分泌が増え、ストレスホルモンのコルチゾールが低下します。
 
⑹体の状態を把握できる
マッサージする側は受ける方の皮膚の異常や筋肉の緊張などを、触れることで把握しやすくなります。
 
タッチングを好まれない場合もある為、受ける方の意思を確認する事も大切です。
それを確認するには今まで説明したコミュニケーションの基本が役立ちます。
 
また、タッチングからコミュニケーションを図る事も可能です。
 
皮膚を通してコミュニケーションする

4. 自分とのコミュニケーションを変える

コミュニケーションは相手とのやり取りだけでなく、自分自身とのコミュニケーションも重要です。
 
私達は24時間コミュニケーションをしていると言われています。
言葉を発するだけでなく、心の中で考えたり感じたりしています。
 
第一回目の記事 「介護中にストレスを感じる理由 4.ストレスは人間の正常な反応」の中で
人間はマイナスのフィードバックというシステムがあるとお伝えしました。
自分が悩みや不安を抱えていると、マイナスな言葉を自分に投げかけてしまうことがあります。
マイナスな感情が悪いわけはありませんが、その状況が続くと自信や信頼を失う可能性があります。
 
思い通りにならない時は自分の心の声に耳を傾けてみましょう。
そして、以下のような質問を自分に投げかけてみて下さい。
これは問題解決に繋がる自己探求の質問です。
 
「何のために、私は母親に対してきつい口調で注意してしまったのだろう?」
「何のために、私は父親に対してイライラした感情を抱いてしまったのだろう?」
 
自分がした行動に対しこのように質問をすることで本当はどうしたかったのかに気づくことが出来ます。
以下の答えは一例ですが、ご両親が介護状態にあることできつい口調やイライラした感情を抱いたのではないことが分かります。
 
「時間を管理して介護や家事、育児もしたいのに思うように出来ない為にきつく言ってしまったのかもしれない」
 
「両親とゆっくり話したいのに出来ないことでイライラしたのかもしれない」
 
「~のため」と自分に質問することは、深層心理にある本来の目的を知る質問です。
 
ご両親の存在を否定したり、良好な関係性を拒んだりしているのではない為、別の方法を考えることが出来ます。
 
こうすることで無駄に原因探しばかりせず、同じ問題に悩むことは減っていきます。
 
これらの方法で自分自身とのコミュニケーションが変わり、ご両親とのコミュニケーションも良い方向へ変化していきます。
 

5. まとめ

良好なコミュニケーションをとる方法を理解していれば、信頼関係が深まり、お互いを尊重することが出来ます。
そうする事で介護のストレスの大半は解決出来ます。
 
介護は大変という思いがあるかもしれませんが、コミュニケーションの基本をマスターし日々実践する事で介護の時間を大切に、愛おしく感じる事が出来ます。
 
しかし両親、家族だとしてもすべてを理解できない事もあります。
次回は両親と良い関係を築き、介護する為に必要な方法をお伝えします。
 
この記事の提供元
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著者:郷堀有里夏

看護師経験30年。急性期病棟やICUを10年経験した後、施設看護や訪問看護、ケアマネジャーとして多くの介護を必要とする方々やそのご家族と関わる。
県外で勤務していた頃、母親が介護状態となり地元へ帰省する。
仕事と介護と自分の人生に悩んでいた頃、認知科学を学ぶ。
学びを通してわだかまりのあった親子間や家族間の葛藤を解消し、介護中に修復する事が出来た。そして、母親を施設から引き取り家族と共に在宅看取りを行うことが出来た。
自身の経験を通して、「健やかに自分らしく生きること」や「安心して介護や看取りが行える環境づくり」が重要だと感じ、心の介護専門家として講座やお話会を通じ情報を提供している。

<経歴、職歴>
(一社)日本ナースオーブ所属 Wellnessナース
看護師経験30年(訪問看護管理者、施設看護、介護支援専門員、救急センター、ICU)
保険外自費サポート ひかりハートケア登録ナース

<その他の活動>
心から看る介護と認知症のお話会
後悔しない親の介護 / ブログ
人生が豊かになる介護メルマガ

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