パーキンソン病は、脳細胞の異常により体身体の動きに障害が現れる疾患です。脳の神経細胞内で産生(さんせい)されるドーパミンが減少することが原因と考えられています。
 
発症すると手足の震えや筋肉のこわばり、バランスがとれないなど、パーキンソン病特有の症状が現れます。
 
本記事では、パーキンソン病の原因や具体的な症状、発症した際の治療方法などについて解説します。パーキンソン病は指定難病とされており、50歳以上の方に起こることが多い疾患です。
 
早期治療が大切で、近年では効果的な治療薬もあり、発症から良い状態を維持することも可能になりました。自身やご家族に気になる症状がある場合は、ぜひ本記事の内容を参考にしていただき、専門医へのご相談をご検討ください。

1. パーキンソン病の原因

パーキンソン病は、神経細胞が何らかの原因で脱落していった結果、神経伝達物質の一つである、ドーパミンが不足することによって発症します。
 
 
中脳の黒質(こくしつ)という部分でのドーパミン神経細胞の減少が原因の疾患です。減少の理由は明らかになっていませんが、ドーパミン神経細胞が減少することまではわかっています。ドーパミンは、やる気や幸福感、運動や学習、ホルモンの調整など、さまざまな生命活動に関与する神経伝達物質です。
 
 
ドーパミンが減ると体を滑らかに動かすための指令をうまく伝えられなくなるため、運動機能に支障が生じます。ドーパミンが減少する原因は明らかになっていませんが、パーキンソン病の発症に影響を及ぼす薬や遺伝子などは明らかになっています。それぞれ詳しく紹介します。


●薬
一部の薬剤を服用したことによる影響で、一見パーキンソン病のようにみえる症状を呈することがありますが、これはパーキンソン病ではなく、薬剤性パーキンソン症候群と呼ばれるものです。薬の影響によってドーパミンの作用が弱まることで引き起こされます。薬剤性パーキンソン症候群を生じ得る薬としては、各種抗精神病薬、制吐剤、胃薬、抗うつ薬などの一部が挙げられます。

パーキンソン病と薬剤性パーキンソン症候群は別の疾患ですが、パーキンソン病の方がこれらの薬を服用すると、パーキンソン病の症状が悪化する可能性もあるため、薬を服用する際は医者や薬剤師とよく相談することが大切です。


●遺伝子
単一の遺伝子変異によってパーキンソン病を発症することがあり、家族性パーキンソン病とよばれています。パーキンソン病全体の約5~10%程度が家族性という報告もありますが、国や地域によって差も大きく、母集団によって一概にはいえません。


そのほか、パーキンソン病になりやすいという程度の遺伝要因を含めれば、より多くのパーキンソン病の方に、遺伝的要因が関わっていると想定されています。
パーキンソン病の原因

2. パーキンソン病が原因となって出る症状

パーキンソン病になると、さまざまな症状が見られるようになります。ここでは、代表的な症状について解説します。
 
 
●振戦(しんせん):手足が震える
パーキンソン病の代表的な症状といえるのが手足の震えです。座っている時やじっとしている時など、自身では安静にしていると思っている時に目立つことが多い症状です。
 

●筋強剛(きんきょうごう):筋肉がこわばる
パーキンソン病になると、筋肉がこわばるため、体を動かしにくくなります。この、こわばりのことを専門的には、筋強剛と呼びます。自分の思った通りに体が動かず、ストレスが溜まることも多くなります。


●寡動(かどう):動きが鈍くなる
筋肉のこわばりとともに、素早い動作や細かい動作が難しくなります。さらに最初の一歩の踏み出しづらくなったり、すくみ足が起こったりすることもあります。一度にたくさんの動作をしようとしても、なかなかうまくできないため、一つずつこなしていくことが大切です。


●姿勢反射障害:転びやすくなる
パーキンソン病の病態が進行していくと、転びやすくなってきます。例えば、立っている際に軽く押されるだけでバランスを崩して転んでしまうことも少なくありません。このようなバランスの取りにくさは、病状が進行してから出てくる症状であり、個人差はありますが発症から数年以上経過してから見られるようになることが多いものです。


●その他の症状
ここまで紹介した主な症状以外にも、パーキンソン病によって引き起こされる症状にはさまざまなものがあります。具体例を以下です。


身体機能の異常:無表情、嚥下障害、書き文字の変化
自立神経の異常:便秘、起立性低血圧、排尿障害、発汗障害
精神・認知の異常:うつ状態・不安、認知(の異常)、睡眠障害、幻視・妄想
その他の異常:痛み、嗅覚機能の低下、疲労


その他の症状については、日常生活に支障が出る可能性があります。体に違和感を感じたり、パーキンソン病に特有の症状がみられたりする場合は、病院で診察してもらうことをおすすめします。
パーキンソン病が原因となって出る症状

3. パーキンソン病の診断を受けるには

パーキンソン病かもしれないと感じた場合は、脳神経内科を受診してください。病院では、主に問診や神経学的診察、頭部画像検査、血液検査などが行われます。必要に応じて核医学検査を行なうこともあります。臨床症候と検査結果を踏まえたうえで、パーキンソン病の診断基準をもとに、パーキンソン病かどうかを判断されます。一見パーキンソン病のように見える神経疾患はほかにも数多くある為、専門医による診断を受けることが大切です。


(画像=Brain disease diagnosis with medical doctor seeing Magnetic Resonance Imaging (MRI) film diagnosing elderly ageing patient neurodegenerative illness problem for neurological medical treatment/stock adobe.com)
パーキンソン病の診断を受けるには

4. パーキンソン病の治療

パーキンソン病と診断された場合、基本的に薬を使った治療が行われます。冒頭でも説明しているように、パーキンソン病の症状はドーパミンが減少することで引き起こされます。薬を使用することで、少なくなったドーパミンを補充したり、ドーパミンの作用を促進したりする治療が基本です。パーキンソン病の症状に応じて、さまざまな薬の服用を通し、症状の改善を目指します。服用する薬で気になることがあれば、医者や薬剤師に相談してみましょう。


また、病状や希望によっては、機器を用いたデバイス補助療法が行われるケースもあります。治療と同時にリハビリテーションを行い、できるだけ体を動かすようにすることも大切です。パーキンソン病は体が動かしにくくなっていく病気であり、症状が進行して体を動かしにくくなると、自由に活動ができなくなり、症状の悪化につながる可能性があります。そのため、パーキンソン病と診断されたら、早い段階から運動に取り組む習慣をつけるとよいでしょう。
パーキンソン病の治療

5. まとめ

今回は、パーキンソン病の原因や具体的な症状、治療方法などについて解説しました。
 
 
以前は何年もかけてゆっくりと進行する疾患とされていましたが、現在は効果的な治療薬があり、発症しても良い状態を保つこができ、早期の治療開始が大切です。
 
 
パーキンソン病の症状が進行すると、思うように体が動かせずストレスが溜まり、引きこもりがちになってしまいます。そのため、専門家と共に薬物治療を行い、リハビリテーションにも取り組み、できる範囲の運動習慣を身につけるようにすることが大切です。
この記事の提供元
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著者:鈴木 幹啓(すずきこどもクリニック院長)

すずき・みきひろ。すずきこどもクリニック院長、日本小児科学会認定小児科専門医、株式会社オンラインドクター. com 代表取締役など。自治医科大学卒業後、三重大学小児科入局。三重県立総合医療センター(小児一般病棟、新生児集中治療室、小児救急を担当) 、国立病院機構三重中央医療センター(新生児集中治療室を担当) 、国立病院機構三重病院 (小児急性期病棟、アレルギー・糖尿病・腎臓病慢性期病棟、重症心身障害児病棟を担当) 、山田赤十字病院(小児一般病棟、新生児集中治療室、小児救急を担当) 、紀南病院(小児科医長) を経て平成22年5月、和歌山県新宮市に「すずきこどもクリニック」を開院。2020年10月、株式会社オンラインドクター.comを設立。CEOに就任。

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