1. 白血病の種類
進行の速さにより急性白血病と慢性白血病に、どの細胞がガン化したかによって骨髄性とリンパ性に分類されますが、ここではまず急性白血病と慢性白血病に分けて解説します。
●急性白血病
血液細胞には数多くの種類がありますが、実はどの血液細胞も同じ細胞をもとに作られています。どの細胞になるか分からない状態で遺伝子に異常が出た場合、がん化した血球のみが作られてしまうことがあります。これが白血病のはじまりです。
急性白血病は、急性骨髄性白血病・急性リンパ性白血病・急性前脊髄球性白血病などさまざまな種類に分類されます。
白血球が作られていくなかで、どの段階の血球遺伝子に異常が起きてがん化していくかによって病名が異なります。
例えば急性骨髄性白血病は、血球のもととなる骨髄芽球の遺伝子に何かしらの異常が起き、がん化した細胞が増えていく疾患です。
急性リンパ性白血病は骨髄芽球の異常ではなく、比較的若いリンパ球ががん化するもので、小児の白血病に多く見られます。白血病細胞が血流に乗って肝臓・脾臓・リンパ節・脳・精巣などの体内のあらゆる場所に住み着くのが特徴です。
急性リンパ性白血病のおよそ75%が小児に発症し、中でも2〜5歳に多く見られます。
●慢性白血病
急性白血病に比べて比較的ゆっくりと進行する白血病が慢性白血病です。慢性白血病も、慢性骨髄性白血病・慢性リンパ性白血病・成人T細胞白血病・骨髄異形成症候群などさまざまな種類に分けられます。
慢性骨髄性白血病は、骨髄芽球より更に若い造血幹細胞の異常によってあらゆる血球ががん化しながら増加するのが特徴です。発症した当初は数年単位で症状が目立たず進行していきますが、少しずつ全身の症状が出始めて最終的には急性白血病と似たような症状が表れます。
慢性リンパ性白血病は上記の中でもリンパ球が増える疾患で日本では珍しい疾患です。正常なリンパ球が少しずつ減少していくため、一部の感染症にかかりやすくなります。
成人T細胞白血病はウイルス感染によって起きる白血病です。HTLV-1というウイルスがT細胞という白血球に感染し、ここからがん化した細胞が増えていきます。
骨髄異形成症候群は血液の成分である白血球、赤血球、血小板といった血球の形や機能に異常がある白血病です。形や機能が正常ではないため、うまく成熟できずすぐに壊れてしまうことも少なくありません。
その結果、貧血や出血、感染しやすいといった症状が出ることがあります。
2. 白血病の症状
白血病の症状にはどのようなものがあるのでしょうか。実は白血病を発症しても必ず症状が表れるとは限りません。ここでは白血病の主な症状やそれぞれの白血病での特徴的な症状について説明します。
●主な症状
体のだるさや発熱、あざ、鼻血などが代表的な自覚症状です。
また、血球の成分の1つである赤血球が減少するため貧血、動悸、だるさといった症状が多くみられます。
さらに、正常な白血球が減少するとさまざまな感染症にかかりやすくなるため発熱しやすくなります。白血病細胞が臓器まで入り込んだ場合には腹部の腫れや痛み、腰痛、関節痛が表れることもあります。
また、正常な血小板が少なくなると正常に血を止める機能が低下し、出血しやすくなり、鼻血や歯茎からの出血、あざという症状が認められる場合もあります。
●初めは無症状の場合も
慢性白血病の初期は無症状であることが多く、健康診断や検診で見つかる場合がほとんどです。
慢性白血病は慢性期・移行期・急性期の3段階に分けられますが、慢性白血病の85%は慢性期で発見されています。血液検査で白血球の数値が高くなるのが特徴です。慢性期(3〜5年)はほとんど症状が見られず、生命の危険はありません。慢性期が終わると移行期に移ります。
移行期(〜半年)には貧血や発熱、痛みなどの全身症状を自覚するようになり、移行期が終わると急性期に入ります。
急性期は急性白血病と同じ症状(貧血・発熱・出血)が表れ、生命に危険が及びます。
白血病と診断されたらすぐに治療を開始して、急性期に移行しないようにすることが大切です。
3. 白血病の発症原因
白血病では血液の中にがん細胞が増えることで正常な血球を作れなくなり、さまざまな症状が表れます。
●骨髄系幹細胞またはリンパ系幹細胞の遺伝子異変
骨の内部の骨髄には、全ての血球を作る造血幹細胞があります。この造血性幹細胞は、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分けることができます。
骨髄系幹細胞から赤血球や白血球(顆粒球、単珠)、血小板が作られ、リンパ系幹細胞からはリンパ球が作られます。
増殖分化した細胞は一定の寿命が来ると死滅しますが、人間の体内から血液がなくなることはありません。なぜなら造血幹細胞は人が生きている限り血球を作り続けているからです。
しかし、造血幹細胞が遺伝子異変を起こすと正常な細胞が作られなくなり、白血病を発症します。また、分化していく段階のどの血球ががん化するかによって白血病の病名が決まります。
例えば血液細胞になる途中の骨髄芽球ががん化して増殖し続けた場合、急性骨髄性白血病となります。
●遺伝子異変を起こす原因は不明
遺伝子異常を引き起こす原因はほとんどの場合不明です。その一方で原因が分かっている白血病もあります。
慢性骨髄性白血病は、フィラデルフィアという異常な染色体が原因とされています。
正常な人間には46本の染色体がありますが、この中の一部の染色体が組み換えを起した結果生じるのがフィラデルフィア染色体です。しかし、フィラデルフィア染色体が作られる原因は解明されていません。
●他のがん治療後に発症する場合も
他のがん治療のための抗がん剤治療や、放射線治療を受けた後にも白血病を発症することがあります。
これは抗がん剤を使ったり、放射線を浴びたりすることで血球の細胞に遺伝子変異が起こって白血病を起こすことが原因と考えられています。
4. 白血病を疑うサイン
白血病を発症すると正常な血球が減少するため息切れ・動悸・倦怠感・あざ・出血班・鼻血・貧血・発熱などの症状が出現します。
また異常ながん細胞が各臓器に入り込むことで臓器やリンパの腫れ・腰痛・嘔吐といった症状も表れます。
ただし慢性白血病の場合は初期症状がほとんど出ないケースが多いため注意が必要です。
また、急性白血病の場合は病状が急激に進行するため、これらの症状に気付いたら医療機関に相談しましょう。
5. 白血病の治療法
白血病の主な治療方法は薬物療法と造血幹細胞移植の2種類です。病状や症状、他の持病や生活背景などによって治療方法を決めます。
●基本は薬物療法
白血病の基本的な治療は薬物療法です。
薬物療法には、細胞を直接的に殺す抗がん剤と特定の細胞を選んで殺す分子標的薬があります。
投与する際は白血病のタイプや年齢、症状や他の合併症とともに患者さんの希望も踏まえて決めていきます。
急性白血病の初期治療としては、寛解導入療法と呼ばれる多剤併用化学療法が一般的です。
多剤併用化学療法では、強力な抗がん剤を使って骨髄の白血病細胞と正常な細胞の両方を壊します。
正常な細胞は白血病細胞より再増殖のスピードが速いため、結果的に白血病細胞が死滅し、正常な細胞だけを増殖させることができます。
寛解導入療法は強力な抗がん剤を使用するので副作用が出ますが、急性白血病が寛解するためメリットは大きいと考えられ、一般的に行われている治療法です。
寛解の基準ですが、骨髄内にある白血病細胞が5%以下になれば完全寛解と診断されます。ただしこれは白血病細胞が完全に消滅したわけではなく、正常な骨髄細胞の5%以下で存在している状態です。
もう1つの薬剤である分子標的薬を使うのは、CD20などの特殊なタンパク質がある白血病の場合です。このタンパク質をターゲットとした薬物ががん細胞の表面に結合することで殺細胞効果が表れます。抗体を持っているかどうかは細胞検査で確認可能です。
たとえば慢性骨髄性白血病ではイマチニブという分子標的薬で圧倒的な治療効果が出ています。
イマチニブはフィラデルフィア染色体によって作られる酵素の働きを阻害し、がん細胞の産生を食い止める薬です。
初期治療時に投薬した人の長期生存率は90%以上あり、血球を作り出す造血幹細胞を移植する同種造血幹移植より良い成績をあげています。
●造血幹細胞移植も有力
この治療法ではまず、抗がん剤や放射線治療で白血病細胞を正常な骨髄細胞ごと根絶します。
そのあとでドナーと呼ばれる方から採取した正常な造血幹細胞を静脈から投与し、造血機能を復元させます。
移植に用いる造血幹細胞は骨髄や末梢血、臍帯血由来の3つです。造血幹細胞移植には、患者さんの造血幹細胞を利用する自家造血幹細胞移植と、ドナーから正常な造血幹細胞を投与する同種造血幹細胞移植があります。
白血病の治療においては同種造血幹細胞移植が一般的です。その場合のドナーは血縁者・非血縁者であっても白血球の血液型が一致している必要があります。
該当するドナーがいない場合は、骨髄バンクや臍帯血バンクから提供を受けることになります。
6. 白血病治療後の注意点
白血病の治療中・治療後はふだんの生活より注意しながら過ごすことをおすすめします。具体的には、次の2点に気をつけてください。
●疲れたらすぐに横になれるようにしておく
治療後しばらくの間は、疲れたら無理をしないですぐ横になるようにしてください。体力回復のための運動としては、家の周りの散歩など軽い運動にとどめておくようにしましょう。
急な発熱、息切れ、しつこい咳などの症状があれば、すぐに担当医に相談するのがおすすめです。
●治療中は感染予防を徹底する
白血病を発症している時は健康な人に害のない弱い細菌やカビ、ウイルスなどでも感染症にかかりやすい状態です。
外来で薬物治療を受けている間は免疫機能が非常に弱まっていますので、感染症も起こりやすくなります。注意しましょう。
寒い日には上着を1枚多く羽織るなどして体を冷やさないようにしてください。
とげが刺さったり、虫に刺されたりしたら消毒液を塗って感染を予防することが大切です。
日常生活ではマスクをつけ、手洗いやうがいを徹底して感染症を防いでください。
また免疫力アップのために適度な運動、質の良い睡眠、バランスの良い食事を心がけましょう。
7. 体に異常を感じたら早めの検査を
もし体に少しでも異常を感じたら主治医に相談し、血液検査や骨髄検査など必要な検査をしましょう。
慢性骨髄性白血病は初期にあまり自覚症状がなく、ほとんどのケースが血液検査で判明します。集団健診の血液検査でも病気の兆候が確認できることも多くあります。
症状や血液検査などで白血病の疑いがある場合、針を刺して骨髄の血球をチェックする骨髄検査を行うこともあります。
白血病は早い段階で発見できないと命に関わる場合もあります。早期発見、早期治療の重要性を心に留めておいてください。
また、治療が終わった場合でも再発のリスクがあるため、定期的な通院や検査が必要です。
定期的に健康診断を受けること、そして少しでも気になる症状があればすぐに医療機関を受診しましょう。