1. 短時間で効率よく体を動かせる「究極の全身運動」
ラジオ体操第1の所要時間は、わずか3分10数秒。しかし、正しいやり方で行えば、運動習慣のある人でも心拍数が上がり、うっすらと汗ばむほどです。しかも、ラジオ体操は有酸素運動と筋トレ、柔軟運動を同時に行えるように構成されており、普段あまり使われていない筋肉や関節もまんべんなく動かすことができます。
つまり、子どものころに何気なくやっていたこの体操は、短時間で効率よく全身を動かすことのできる「究極の全身運動」だったのです。
「ラジオ体操は、必ず左右均等に同じ動きを行うので、長期間継続することでバランスのとれたゆがみのない体づくりにつながります。プロポーションが整うのはもちろん、さまざまな不調の改善にもなりますよ」と話すのは、エクササイズ指導も行う整形外科医の中村格子先生です。ただし、十分な効果を得るためには、ポイントを押さえて、正しい方法で行うことが重要なのだとか。ならば! さっそく、中村先生に正しいラジオ体操のやり方を伝授してもらうことにしましょう。
2. ラジオ体操第1の正しいやり方とポイントはこれ!
ラジオ体操第1を構成する運動は、全部で13種類。「その順番や動きの1つひとつに意味があり、それぞれの運動のポイントを意識することで、より健康効果を高めることができます」と中村先生は言います。懐かしい記憶をたどりながら、家族や友人と一緒に取り組んでみるのも楽しいかもしれません。まずは、背伸びの運動からスタートです!
3. 背伸びの運動
①息を吸いながら、腕を前から真上に向かって振り上げ、背中とおなかを伸ばす。
②息を吐きながら、腕を横からゆっくりと下ろす。①〜②を2回くり返す。
4. 腕を振って脚を曲げ伸ばす運動
①体の前で腕を交差させ、かかとをそろえて上げる。
②腕を横に振りながら、ひざを左右に開く。
③ひざを伸ばして腕を肩の高さまで上げ、腕を戻しながら一瞬かかとを下ろす。①〜③を繰り返す。
5. 腕を回す運動
①腕を胸の前で交差させる。
②腕を外側に向かって回し、次に内側に向かって回す。これを4回繰り返す。
6. 胸を反らす運動
①肩幅程度に左脚を横に出しながら、腕を肩の高さまで振り上げる。
②腕を振り下ろし、胸の前で交差させる。
③腕を斜め上に振り上げて手のひらを返し、胸をしっかり反らしたら、②の姿勢に戻る。①~③を4回繰り返す。
7. 体を横に曲げる運動
脚を肩幅に開いたまま、右腕を真横から勢いよく振り上げ、上半身を左に2回曲げる。反対側も同様に行い、これを2 回くり返す。
8. 体を前後に曲げる運動
①はずみをつけながら、体を前に3 回曲げる。
②一度体を起こしてから、両手を腰にあて、体をゆっくり後ろに反らせる。体を起こして、もう一度①~②を繰り返す。
9. 体をねじる運動
①腕の力を抜いて、上体を左→右→左→右の順にねじる。
②両腕を左斜め上に大きく2回振り上げたら、一度上体を正面に戻す。左右逆にして①~②を繰り返す。
10. 腕を上下に伸ばす運動
左脚を横に出して腕を曲げて指先で肩に触れ、両腕を真上に伸ばしてかかとを上げる。かかとを下ろしながら指先で肩に触れ、腕を下ろして左脚を閉じる。左右逆にして同様に行い、これを2回繰り返す。
11. 体を斜め下に曲げ胸を反らす運動
①肩幅より広めに左脚を横に出し、弾みをつけて上体を左下に2回曲げる。
②上体を起こして正面に戻し、腕を斜め下に大きく開いて胸を反らせる。反対側も同様に行い、2回繰り返す。
12. 体を回す運動
①両腕を右肩の高さに上げ、そこから円を描くように両腕を左方向へ振りながら、腰を中心に上体を大きく回す。
②1周半回して、腕が左肩の高さまできたら、逆方向に回す。これを2回繰り返す。
13. 両脚で跳ぶ運動
①両脚をそろえて、4回跳ぶ。
②脚を開いて跳びながら腕を真横に開き、腕を下ろしながら足を閉じて跳ぶ。この「開く→閉じる」を2回行う。①~②を2回繰り返す。
14. 腕を振って脚を曲げ伸ばす運動(4と同じ動き)
①体の前で腕を交差させ、かかとをそろえて上げる。
②腕を横に振りながら、ひざを左右に開く。
③ひざを伸ばして腕を肩の高さまで上げ、腕を戻しながら一瞬かかとを下ろす。①〜③を繰り返す。
15. 深呼吸
指先を伸ばし、深呼吸を4回繰り返す。
ラジオ対応に取り組むときは、伸ばすところはしっかり伸ばす、力を入れるところは入れる、力を抜くところはきちんと脱力するなど、メリハリをつけて行うことが大事です。また、「どの筋肉を使っているか」を意識しながら行うと、効果が実感しやすいですよ。
16. ラジオ体操で得られる「大人がうれしい効果」とは?
ラジオ体操のよさは、効率よく体を動かせることだけではありません。ラジオ体操には、忙しい毎日を送る大人だからこそのメリットもたくさんあるんです。以下に、「大人がうれしい効果」を3つ紹介しましょう。
①プロポーションがよくなる
左右均等な動きをするため、体のゆがみが自然にとれて姿勢がよくなります。継続して行うことで筋肉がつき、全身が引き締まってくるので、美脚やヒップアップ、二の腕のたるみ解消などの効果も期待できるでしょう。
②質のよい眠りが得られる
体に負担の少ないリズミカルな運動をすることで、心のバランスを保つホルモン「セロトニン」の分泌が促されます。その結果、睡眠の質が上がり、疲労回復や精神の安定につながります。
③体調改善に役立つ
肩甲骨を大きく動かしたり、体幹の筋肉を刺激したりする運動が多く盛り込まれているため、肩こりや腰痛の改善に役立ちます。また、上体を回したり、ねじったりすることで内臓の働きが活性化し、便秘解消の効果も期待できます。
17. いつやる? 音楽は必要? ラジオ体操にまつわる豆知識
最後に、ラジオ体操に関する豆知識をQ&A形式で紹介しましょう。覚えておくと、ラジオ体操の時間がさらに充実しますよ。
Q. いつやるのが効果的?
「ラジオ体操を行うと全身に血液が巡り、体や脳を目覚めさせる効果があるので、朝に行うのが最もおすすめです。夜は、寝つきを悪くさせないよう、就寝1~2時間前までに行うようにしましょう」と中村先生。ちなみに、仕事の合間に行うと気分がリフレッシュして、集中力もアップするそうです。
Q. 呼吸は意識したほうがいい?
なじみのある体操とはいえ、最初は体を動かすだけで大変なはず。慣れないうちは自然な呼吸で、正しい動きで行うことに集中しましょう。「慣れてきたら、伸びたり、胸を開いたりするときは『吸う』、力をゆるめるときや、胸を閉じるときは『吐く』ことを意識すると、運動効果がさらにアップします」(中村先生)。
Q.音楽は絶対に必要?
ラジオ体操の音楽は動きに合わせて構成されていて、音を聞くことで次の動きがわかるように作曲されています。ペースにもきちんと配慮されているので、慣れるまではきちんと音楽をかけて、それに合わせて行いましょう。
ラジオ体操の音源は、番組を録音したり、市販のCDや音楽配信サービスを利用したりすることで入手できます。ただし、録音した音源の使用は、個人利用のみに限られるのでご注意を!
18. まとめ
今回は、ラジオ体操第1について紹介しましたが、ラジオ体操には第2もあります。ところで、この2つにどういう違いがあるか知っていますか? 実は、ラジオ体操第1は老若男女を対象に、姿勢の改善や疲労回復、美容にも効果があるように工夫されたもの。対するラジオ体操第2は、主に職場で働いている人を対象に考案されたプログラムで、より高度な動きで「疲れにくい体づくり」を目指しているのだとか。いわれてみれば、第2のほうがちょっとだけハードですよね。
本記事でラジオ体操第1に慣れ親しむことができたら、次はぜひ第2にもチャレンジしてみてください。久々にやってみると、あの「独特の動き」がくせになるかもしれませんよ。
監修:中村格子先生
中村格子(なかむら・かくこ ※写真下)
Dr.KAKUKOスポーツクリニック院長。整形外科医、医学博士。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツドクター、2級ラジオ体操指導士。「健康であることは美しい」をモットーにトップアスリートを支える傍ら、スポーツと医療の架け橋としてより多くの人の健康で美しい人生をサポートするべく自身のクリニックや、メディアなどで活動。著書に『DVD付き もっとスゴイ!大人のラジオ体操 決定版』(講談社)などがある。